詳細
調査を行ったのは、イタリアのボローニャ大学獣医科学部のチーム。2015年2月から3月の期間、何らかの理由により四肢の一部(肘・膝関節以遠)もしくは全部(肩・股関節以遠)を切断した犬の飼い主に対して69項目からなるオンラインアンケート調査を行い、手術の前後において痛みに関連した犬の行動がどのように変化したのかを検証しました。参加条件は、手術から最低3ヶ月が経過しているという点です。合計107人の飼い主から回答が寄せられ、以下のような事実が明らかになったといいます。
Menchetti M. Gandini G. et al., Journal of Veterinary Behavior (2017), doi: 10.1016/j.jveb.2017.09.010
患犬の基本ステータス
- 純血種=56%(60頭)
- ミックス犬=44%(47頭)
- 平均年齢=7.6歳(中央値8歳)
- オス犬=56%
- メス犬=44%
- 25kg以上=60%
- 10~25kg=28%
- 10kg未満=12%
切断手術を行った時の年齢
- 1歳以下=21%
- 1~5歳=31%
- 6~10歳=39%
- 11~15歳=9%
手術の理由
- 悪性腫瘍=54%
- 外傷=40%
- 奇形=3%
- 感染=3%
手術前の痛み
- 手術の1ヶ月以上前=53%(36/68)
- 手術の24時間~4週間前=47%(32/68)
手術後の痛み
- 24時間~4週間=79%(51/64)
- 1~3ヶ月間=9%(6/64)
- 3~6ヶ月=5%(3/64)
- 手術直後や6ヶ月以降=7%(4/64)
その他特記事項
- 手術の1ヶ月以上前から痛みの兆候を示していた犬では手術後の痛みの頻度が高かった
- 手術後の環境的もしくは身体的なストレスが痛みの発現と関連していた=78%(46/59)
- 手術前の投薬治療は手術後の痛みの発生とは無関係だった
- 手術1週間前の痛みはゆっくり増減を繰り返すが45%(29/65)、慢性的が40%(26/65)
- 手術1ヶ月後の痛みは突発的かつ一時的が53%(20/38)、慢性痛を報告する人はいなかった
Menchetti M. Gandini G. et al., Journal of Veterinary Behavior (2017), doi: 10.1016/j.jveb.2017.09.010
解説
四肢を切断した患者では、「ファントム・コンプレックス」(Phantom Complex)と呼ばれる症状が頻繁に報告されています。具体的には以下のような複合症状です。
ファントム・コンプレックス
- 幻肢感覚ないはずの部位から発せられる感覚全般のこと。
- 断肢痛切断後に残された部位に感じる痛み。
- 幻肢痛切断してなくなったはずの部位から発せられる痛み。
神経因性疼痛の特徴
- 感覚欠損領域内に認められても、そこに限定されない疼痛
- 組織損傷のない継続した疼痛
- ヒリヒリ感、脈動感、うづき、チクチク感
- 発作性疼痛または自然痛
- 感覚不全
- 異痛症
- 痛覚過敏