詳細
調査を行ったのは、ハンガリー・エトヴェシュ・ロラーンド大学のチーム。調査目的を知らされていない成人40人(男性14人 | 平均26.1歳)を対象とし、犬のうなり声を聞いたとき、その声が発せられた状況を正しく推測できるかどうかを検証しました。犬のうなり声のバリエーションは以下です。
Farago, N. Takacs, A. Miklosi, P. Pongracz, R. Soc. open sci. 2017, 4 170134; DOI: 10.1098/rsos.170134. Published 17 May 2017
犬のうなり声と文脈
- 食料の確保他の犬からエサやおやつを守っている状況におけるうなり声
- 脅威との接触見知らぬ人間がじっと見つめて近づいてくる状況におけるうなり声
- 遊びの最中飼い主との綱引き遊びをしている状況におけるうなり声
犬のうなり声と文脈の推測
- うなり声を聞いただけで背後にある文脈を偶然以上の確率で正解できる
- 「食料の確保」と「遊びの最中」は高い確率で区別できる
- 「食料の確保」と「脅威との接触」は混同されることが多い
- 男性より女性の正答率が高い
- 犬の飼育歴がある人の正答率が高い
「食料の確保」への回答

- (正)食料の確保=57.0%
- (誤)脅威との接触=30.1%
- (誤)遊びの最中=12.9%
「脅威との接触」への回答

- (誤)食料の確保=38.0%
- (正)脅威との接触=50.0%
- (誤)遊びの最中=12.0%
「遊びの最中」への回答

- (誤)食料の確保=9.5%
- (誤)脅威との接触=7.3%
- (正)遊びの最中=83.2%
Farago, N. Takacs, A. Miklosi, P. Pongracz, R. Soc. open sci. 2017, 4 170134; DOI: 10.1098/rsos.170134. Published 17 May 2017

解説
犬のうなり声を音声学的に解析したところ、構成成分と評価との間に、以下のような傾向が見られたと言います。
うなり声の音声学的解析
- 基本周波数基本周波数とは、いくつかの振動数からなる複数の音のうちもっとも低い周波数のこと。基本周波数が高い場合、恐怖心が強いと評価された。
- 声のピッチピッチとは声を構成している周波数の頂点から頂点までの距離のこと(ピッチが高い=声が高い)。高いピッチはネガティブ(恐怖・攻撃・絶望)に評価される傾向があった。
- 声の長さ声が長く続くとネガティブ(恐怖・攻撃・絶望)に評価される傾向があった。
- 声のインターバル声と声の間のインターバルが長いと攻撃性が低く評価され、短いと攻撃性が高く評価される傾向があった。
- フォルマント分散
- フォルマントとは発声に関わる解剖学的な構造物によって作り出される、その動物に特徴的な周波数のこと。フォルマント分散とは、連続するフォルマント周期間に見られる差異の平均のことで、この値が低いと体が大きいことを意味し、高いと体が小さいことを意味する。
当調査においては、「脅威との接触」でフォルマント分散が低く、「食料の確保」ではフォルマント分散が高かった。