詳細
犬の血液型は多くの種類があることで知られており、現在、国際的には「DEA1・3・4・5・6・7・8」という7つの型が認められています(※DEA=イヌ赤血球抗原)。また現時点ではシステムの中に含まれていないものの、2007年、ダルメシアンの輸血症例から偶然発見された「Dal」と呼ばれる赤血球上の抗原もまた、血液型の一種なのではないかと考えられてきました。
今回の調査を行ったのは、カナダ・モントリオール大学やアメリカ・ペンシルベニア大学などから成る共同チーム。未だに未知の部分が多い「Dal」に関し、犬全体における保有率や遺伝性、および輸血に際しての拒絶反応との関わり方を調査しました。
対象となったのは、アメリカとカナダで飼育されている多種多様な犬種、および血液バンクのサンプル血液合計1,130。赤血球表面における「Dal」抗原の保有率を調査したところ、以下のような結果になったといいます。
初回の輸血で急激な反応は起こりませんが、初回輸血で血清中に抗体ができた後、再び「Dal」陽性の血液を輸血してしまうと、急速に抗原抗体反応が起こり、赤血球が破壊されて溶血性貧血に陥ってしまうのです。
こうした事実から調査チームは、複数回の輸血を受ける機会がある犬においては、事前に「Dal」の有無を確認するのが無難であると推奨しています。また犬全体における極めて高い保有率から考え、もはや「Dal」を血液型の一種としてみなしてよいのではないかとも。 Prevalence and Mode of Inheritance of the Dal Blood Group in Dogs in North America.
Goulet, S., Giger, U., Arsenault, J., Abrams-Ogg, A., Euler, C.C. and Blais, M.-C. (2017), J Vet Intern Med. doi:10.1111/jvim.14693

対象となったのは、アメリカとカナダで飼育されている多種多様な犬種、および血液バンクのサンプル血液合計1,130。赤血球表面における「Dal」抗原の保有率を調査したところ、以下のような結果になったといいます。
Dal抗原陽性率

- ダルメシアン=88.3%
- ドーベルマン=57.6%
- シーズー=42.9%
- ビションフリーゼ=83.3%
- ラサアプソ=66.7%
- ミックス種=97.5%
- ジャーマンシェパード=100%
- ゴールデンレトリバー=100%
- グレイハウンド=100%
- ラブラドールレトリバー=100%
- その他=100%
初回の輸血で急激な反応は起こりませんが、初回輸血で血清中に抗体ができた後、再び「Dal」陽性の血液を輸血してしまうと、急速に抗原抗体反応が起こり、赤血球が破壊されて溶血性貧血に陥ってしまうのです。
こうした事実から調査チームは、複数回の輸血を受ける機会がある犬においては、事前に「Dal」の有無を確認するのが無難であると推奨しています。また犬全体における極めて高い保有率から考え、もはや「Dal」を血液型の一種としてみなしてよいのではないかとも。 Prevalence and Mode of Inheritance of the Dal Blood Group in Dogs in North America.
Goulet, S., Giger, U., Arsenault, J., Abrams-Ogg, A., Euler, C.C. and Blais, M.-C. (2017), J Vet Intern Med. doi:10.1111/jvim.14693

解説
「Dal」が臨床上重要となるのは、犬が複数回の輸血を受ける場合です。例えば重度の貧血を示すシーズーが、ラブラドールレトリバーから輸血を受けるという状況を考えてみましょう。シーズーは「Dal」陰性、ラブラドールレトリバーは「Dal」陽性とします。
初回輸血に際しては通常、事前に交差反応試験を行って双方の血液が拒絶反応を示さないことを確認します。今回の調査では、「Dal」抗原を異物とみなす「Dal」抗体が血清中に自然発生しないことが確認されていますので、シーズーの血液中にも抗体は存在しません。ですから例え交差反応試験行っても、拒絶反応は起こらないと推測されます。
しかし2度目の輸血の際、「前回大丈夫だったから今回も大丈夫だろう」といった安易な判断で交差反応試験をスキップし、前回使用したのと同じ血液を使ってしまったらどうなるでしょう?初回輸血後、シーズーの血液中には抗Dal抗体が作られてしまっています。つまり体内に「Dal」抗原を含む赤血球が侵入してきたら、それを異物とみなして攻撃対象としてしまうのです。その結果、急速に抗原抗体反応が起こり、赤血球が崩壊して溶血現象が起こってしまうでしょう。
上記したのは一例ですが、初回の輸血では問題なかったにもかかわらず2度目の輸血でなぜか拒絶反応が起こってしまったような場合は、「Dal」が原因になっているのかもしれません。輸血ごとに交差反応試験を行っていれば、こうした事態を避けられると考えられます。 ダルメシアンとドーベルマンを除く犬種から構成される供血犬228頭における「Dal」陽性率は合計227頭の99.6%でした。こうした高い保有率の背景にあるのは、「Dal」が常染色体優性遺伝で子孫に受け継がれるという事実だと思われます。今回の調査はアメリカとカナダに暮らしている犬を対象としたものでしたが、おそらく日本においても多くの犬がこの型を潜在的に保有しているものと推測されます。輸血の失敗を防ぐための今後の課題は、「DEA1」を調べるときと同じように、簡易検査キットによって「Dal」の有無をすぐに確認できるようにすることでしょう。
初回輸血に際しては通常、事前に交差反応試験を行って双方の血液が拒絶反応を示さないことを確認します。今回の調査では、「Dal」抗原を異物とみなす「Dal」抗体が血清中に自然発生しないことが確認されていますので、シーズーの血液中にも抗体は存在しません。ですから例え交差反応試験行っても、拒絶反応は起こらないと推測されます。
しかし2度目の輸血の際、「前回大丈夫だったから今回も大丈夫だろう」といった安易な判断で交差反応試験をスキップし、前回使用したのと同じ血液を使ってしまったらどうなるでしょう?初回輸血後、シーズーの血液中には抗Dal抗体が作られてしまっています。つまり体内に「Dal」抗原を含む赤血球が侵入してきたら、それを異物とみなして攻撃対象としてしまうのです。その結果、急速に抗原抗体反応が起こり、赤血球が崩壊して溶血現象が起こってしまうでしょう。
上記したのは一例ですが、初回の輸血では問題なかったにもかかわらず2度目の輸血でなぜか拒絶反応が起こってしまったような場合は、「Dal」が原因になっているのかもしれません。輸血ごとに交差反応試験を行っていれば、こうした事態を避けられると考えられます。 ダルメシアンとドーベルマンを除く犬種から構成される供血犬228頭における「Dal」陽性率は合計227頭の99.6%でした。こうした高い保有率の背景にあるのは、「Dal」が常染色体優性遺伝で子孫に受け継がれるという事実だと思われます。今回の調査はアメリカとカナダに暮らしている犬を対象としたものでしたが、おそらく日本においても多くの犬がこの型を潜在的に保有しているものと推測されます。輸血の失敗を防ぐための今後の課題は、「DEA1」を調べるときと同じように、簡易検査キットによって「Dal」の有無をすぐに確認できるようにすることでしょう。