詳細
調査を行ったのは製薬会社「Merck & Co」の所属機関「Center for Observational and Real-World Evidence」のチーム。2016年4月から6月の期間、アメリカ国内4つの地域(北東部・中部・南部・西部)にある、合計24の動物病院を訪れた犬の飼い主を対象とし、ノミダニ予防に関する意識調査を行いました。また同時に、2015年4月から2016年3月の期間、6つの動物病院で販売された持続性ノミダニ予防薬のデータ(9,370回分/5,290頭)を集計したところ、以下のような事実が明らかになったといいます。
Lavan et al. Parasites & Vectors (2017) 10:284 DOI 10.1186/s13071-017-2217-2
飼い主のノミダニ予防意識
- 12ヶ月間の投与を推奨した動物病院は95.8%(23/24)
- 12ヶ月間という獣医師からのアドバイスを覚えていたのは62%(342/559)
- 12ヶ月間より短いと誤って記憶していた割合は14%(76/559)
- アドバイス自体を覚えていなかった割合は25%(138/559)
- ノミダニ予防が12ヶ月間必要と認識していた割合は73%(350/478)
- 6ヶ月未満で良いと回答した割合は17%(49/478)
- 平均すると飼い主は10.6ヶ月は予防が必要であると回答
- 12ヶ月の予防が必要と回答した割合が最も少なかったのは北東部で54%(46/85)
- 12ヶ月の予防が必要と回答した割合は北東部以外の平均が77%(304/393)
- 持続性ノミダニ薬の平均購入数は2.18回分(26.2週間/6.1ヶ月に相当)
- 4回分を購入した割合は13%
Lavan et al. Parasites & Vectors (2017) 10:284 DOI 10.1186/s13071-017-2217-2
解説
飼い主の73%はノミダニ予防薬が通年必要であると認識していたにもかかわらず、獣医師から与えられた12ヶ月間というアドバイスを覚えていたのはわずか62%でした。この目減り分は単純に、すでに知っている情報が飼い主の耳をすり抜けてしまった結果だと推測されます。
飼い主の主観による予防薬の必要期間は、平均して10.6ヶ月間でした。理想とされる12ヶ月間から1ヶ月半目減りしてしまった理由は、飼い主の中にある「一定の時期には必要なくなる」という思い込み、忘却、経済的な理由などだと考えられます。
ノミダニ薬の必要性に関する意識調査では、北東部において他の地域よりも20%近く低い値が出ました。「CAPC」(Companion Animal Parasite Council)が発表した「ライム病予報図」によると、北東部のリスクが高い(赤い部分)とされていますので、不用心としか言いようがありません(→出典)。
犬の飼い主を対象として行われた過去の調査では、1年のうちノミダニ予防薬を投与している期間は4.0~4.6ヶ月間とされています。今回の調査では、持続性予防薬の購入平均数が2.18回分とされていますので、期間に換算すると26.2週間=6.1ヶ月程度です。人間を対象とした調査では、薬の有効期間が長くなればなるほど処方が守られる確率が高くなるとされていますので、調査チームは「従来のような月に1度の投与よりも3ヶ月に1回の投与の方が、投与率が高まり、結果として予防持続期間が伸びる」としています。
論文全体からどことなく広告記事という印象を受けたため調べて見たところ、リードオーサーは持続性のノミダニ予防薬「ブラベクト®錠」のメーカー関係者でした。ですから客観的なデータ以外の部分は慎重に解釈したほうがよいと思われます。3ヶ月に一度の投与で良いというのは魅力的ですが、市場に出回り始めた直後から副作用の事例がちょくちょくと報告されていますので、盲目的に飛びつく訳にはいきません。詳しくは以下のページをご参照ください。