ブラベクト®錠とは?
「ブラベクト®錠」とはフルララネル(fluralaner)を有効成分とする犬向けのノミ・マダニ駆除製品。日本国内ではチュアブル(経口投与)タイプが動物医薬品として認可されています。
フルララネルの効果
ブラベクト®錠の有効成分であるフルララネルは、日産化学工業株式会社が発明したイソキサゾリン系化合物の一種。節足動物のγ-アミノ酪酸(GABA)作動性塩素イオンチャンネルに作用し、塩素イオンの神経細胞流入を阻害することで過剰な興奮を引き起こし、ノミやマダニを死亡させます。また同時に、節足動物のグルタミン酸作動性塩素イオンチャンネルにも作用し、ダブルの殺虫効果を示すとされています。
フルララネルの安全性
フルララネルは哺乳動物の神経細胞とも結合しますが、節足動物と比較した場合の親和性は1万分の1以下であるため、比較的安全性が高い成分とみなされています。ひとたび消化管から吸収されると組織全体に素早く行き渡り、濃度が高い順に並べると脂肪、肝臓、腎臓、筋肉などに蓄積します。また微量ながら被毛や皮膚にも広がります。
ラットを対象とした毒性試験によって確かめられている安全性は以下です。「NOEL」とは毒性試験期間中に試験物質を与え続けても、動物に何の影響も認められない最大の投与量、「NOAEL」は毒性試験期間中に試験物質を与え続けても、動物に有害な影響がみられない最大の投与量という意味で、単位は体重1kg当たりで示しています。
ラットを対象とした毒性試験によって確かめられている安全性は以下です。「NOEL」とは毒性試験期間中に試験物質を与え続けても、動物に何の影響も認められない最大の投与量、「NOAEL」は毒性試験期間中に試験物質を与え続けても、動物に有害な影響がみられない最大の投与量という意味で、単位は体重1kg当たりで示しています。
フルララネルの安全性・ラット
- 経口半数致死量→2g超
- 急性摂取のNOAEL→1g超
- 慢性摂取のNOAEL→1日50mg
フルララネルの安全性・犬
- 子犬生後8~9週齢のビーグルの子犬32頭を対象とし、基準の1(56mg/kg)、3(168mg/kg)、5(280mg/kg)倍量を56日の間隔を開けて3回投与した。その結果、重大な副作用は見られなかった(:Walther, 2014)。
- 成犬と生殖能力2~6歳のビーグルの成犬40頭を対象とし、基準の3倍量(168mg/kg)を8週間の間隔を開けて3回投与した。その結果、重大な副作用は見られず、また生殖能力にも支障をきたさなかった。ただし子犬に対する催奇形性(四肢変形・心肥大・口蓋裂)が若干確認された。
- MDR1遺伝子変異個体MDR1遺伝子(多剤耐性遺伝子)に変異を持ったコリーに3倍量を投与した。その結果、下痢、嘔吐、食欲不振、流涎といった副作用が1.6%見られたが、全て軽度で一時的なものだった(:Walther, 2014)。
- イベルメクチンとの併用10頭のビーグル犬を対象とし、イベルメクチンだけ(0.3mg/kg)、およびイベルメクチンとフルララネル(56mg/kg)を同時に摂取させ薬物動態を比較した。その結果、どちらの摂取方法でも最高血中濃度、最高血中濃度到達時間、血中濃度-時間曲線下面積(AUC)、半減期は同じだった(:Walther, 2015)。
フルララネルの毒性・危険性
ブラベクト®錠の有効成分であるフルララネルは新たに発見された成分であり、犬向けの商品が出回り始めたのはヨーロッパが2014年4月(EMA認可)、アメリカが2014年6月(FDA認可)、そして日本が2015年6月(農林水産省認可)とつい最近のことです。ですから市場に出回ってから初めて、メーカーすら想像していなかった思わぬ副作用が生じてしまう危険性があります。
ラット、犬、犬の肝ミクロソームを用いて体内における代謝をシミュレーションしたところ、フルララネルの90%以上が変化を受けなかったといいます。この事実から大部分は便中にそのままの形で排出されるものと推測されています。しかし逆の見方をすれば10%は代謝されるということです。実際、欧州薬品局(EMA)の製品情報ファクトシートでは、軽度で一時的な消化管の不調(下痢・嘔吐・食欲不振・流涎)が1.6%の割合で見られたと記載されています。またブラベクトが原因と考えられるコーイケルホンディエ(メス | 7ヶ月齢 | 9kg)の中毒症例もドイツで報告されています。
こうした副作用事例は、肝臓などで代謝を受けた10%のフルララネルおよびその代謝産物によってもたらされたのかもしれませんし、賦形剤(添加剤)として用いられているトウモロコシデンプン、パモ酸二ナトリウム水和物、大豆油などによって引き起こされたのかもしれません。
なおフルララネルは血漿蛋白との結合力が強いため、同じ性質を有した薬剤と競合し、それぞれの効果が弱まってしまう可能性があります。具体的にはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、ループ利尿剤、炭酸脱水酵素阻害薬、ACE阻害剤の一部、抗凝固剤などです。事前の投与実験で競合作用は確認されていないものの、理論上は起こりえます。
ラット、犬、犬の肝ミクロソームを用いて体内における代謝をシミュレーションしたところ、フルララネルの90%以上が変化を受けなかったといいます。この事実から大部分は便中にそのままの形で排出されるものと推測されています。しかし逆の見方をすれば10%は代謝されるということです。実際、欧州薬品局(EMA)の製品情報ファクトシートでは、軽度で一時的な消化管の不調(下痢・嘔吐・食欲不振・流涎)が1.6%の割合で見られたと記載されています。またブラベクトが原因と考えられるコーイケルホンディエ(メス | 7ヶ月齢 | 9kg)の中毒症例もドイツで報告されています。
こうした副作用事例は、肝臓などで代謝を受けた10%のフルララネルおよびその代謝産物によってもたらされたのかもしれませんし、賦形剤(添加剤)として用いられているトウモロコシデンプン、パモ酸二ナトリウム水和物、大豆油などによって引き起こされたのかもしれません。
なおフルララネルは血漿蛋白との結合力が強いため、同じ性質を有した薬剤と競合し、それぞれの効果が弱まってしまう可能性があります。具体的にはNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)、ループ利尿剤、炭酸脱水酵素阻害薬、ACE阻害剤の一部、抗凝固剤などです。事前の投与実験で競合作用は確認されていないものの、理論上は起こりえます。
アメリカでの副作用事例
北米やヨーロッパにおいて、死亡を含む重大な副作用が生じたという逸話的な報告が散見されます。以下は一例です。
- Pet Helpers, Incアメリカ・ウェストバージニア州フェアモントにある動物保護施設「Pet Helpers, Inc」は2015年6月11日、「ブラベクト®錠」を投与した後、 死亡してしまった「ダンカン」と言う名の4歳の保護犬についての記事をFacebook上に投稿した。内容によると、動物病院で処方された「ブラベクト®錠」を与えたところ、ダンカンは24時間たたずして死亡、もう1頭の犬も体調不良に陥ったという(:Pet Helpers, Inc)
- Does Bravecto Kill Dogs?2015年8月に誕生したFacebook上の公開グループ「Does Bravecto Kill Dogs?」では、「ブラベクト®錠」が原因と思われる副作用に関する情報を交換している。2016年6月時点で12,000人を超える人々が参加しており、日々新たな症例が報告されている (:Facebook)
- Change.orgオンラインで署名活動をする「Change.org」内には「市場からブラベクトを即時回収するよう求める署名」と題されたページが作成された。当ページによると、ヨーロッパの「EMA」に寄せられた副作用の件数は2016年1月時点で4,945件に上り、そのうち299件は死亡例だという。さらに、副作用を報告していない潜在的な飼い主の数まで含めると、その数は膨大なものになると推計されている(:Change.org)
日本での副作用事例
日本国内の動物医薬品データベースでは死亡例を含めた数多くの副作用事例がずらりと並んでいます。しかし製品との因果関係があやふやだったり、使用法を遵守しないいわゆる「オフラベル」の使い方が原因になった可能性もあるため、本当に副作用や死の引き金になったのかどうかはよくわかっていません。一例を挙げると「用量を守らなかった」「8週齢未満や2kg未満の子犬に使った」「使用期限の切れた古い商品や保存状態の悪い商品を使った」などです。
製薬会社の公式な見解によると、2014年4月に海外で発売が開始されてから集積された副作用事例を、販売数ベースで見た総投与数と比較した場合、有害事象の発生率は0.01~0.001%と推計されるとしています。また社内データによると、日本国内における副作用の発生率は約0.1%であり、分類上は「まれ」に属するとも。容量と用法さえ守れば安全に使用できると強調しています。
その一方、フルララネルを含むイソオキサゾリン系の成分は、アメリカやヨーロッパで行われた副作用事例の統計調査を通じ、哺乳動物(犬・猫・人間)に対して想定以上の毒性を発揮する危険性が指摘されています。詳しくは以下のページで解説してありますのでご参照ください。
製薬会社の公式な見解によると、2014年4月に海外で発売が開始されてから集積された副作用事例を、販売数ベースで見た総投与数と比較した場合、有害事象の発生率は0.01~0.001%と推計されるとしています。また社内データによると、日本国内における副作用の発生率は約0.1%であり、分類上は「まれ」に属するとも。容量と用法さえ守れば安全に使用できると強調しています。
その一方、フルララネルを含むイソオキサゾリン系の成分は、アメリカやヨーロッパで行われた副作用事例の統計調査を通じ、哺乳動物(犬・猫・人間)に対して想定以上の毒性を発揮する危険性が指摘されています。詳しくは以下のページで解説してありますのでご参照ください。
ブラベクト®錠
ブラベクト®錠はフルララネルを有効成分とする犬向けチュアブル(経口投与式)のノミダニ駆除剤。1回の投与でおよそ3ヶ月間(12週間)、ノミとダニに対する駆除効果が持続するとされています。ノミやダニに対して95%の致死効果を発揮するのに必要な最低血中濃度はそれぞれ20ng/mLと90ng/mLで、体重1kg当たり25mgを投与すれば上記した濃度に至るとされています。投与からおよそ24時間で血中濃度が最大値(3,948 ng/ml)
に達した後、3ヶ月かけて緩やかに下降します。【公式】ブラベクト®錠
ブラベクト®錠の使い方
- いつから使える?使用条件は8週齢以降および体重2kg以上とされています。
- 使用頻度は?ノミダニに対する効果が3ヶ月であることから3ヶ月に一度の使用が望ましいとされています。逆に12週間未満の頻度で反復投与しないよう指示されています。
- 使用期間は?ノミやダニは通年性で生息していますので1年中(4回)使用することが望ましいとされています。
- 料金は?動物病院、犬の体の大きさ(体重)、体重に連動したタブレットのサイズ、使用頻度によって合計費用は変動しますが、病院で処方される1粒の料金はSサイズ(0.82g)なら4,300円、XLサイズ(7.33g)なら5,350円程度です。なお要指示薬には指定されていないものの、基本的には獣医師による診察と処方が理想とされます。
- 与え方は? 犬に直接食べさせます。フレーバーとして加水分解したブタの肝臓や醸造酵母が用いられており、食いつきはよいとのこと。なお食事とともに摂取した方が生体内における利用効率が高まることが確認されていますが、空腹時に摂取しても効果が減じるわけではないため、与えるタイミングに指示は設けられていません(:Walther, 2014)。 【動画】ブラベクトCM(30秒編)
- 使用量は?体重1kg当たりのフルララネルの最低効果量は25mgで、体重ごとに以下のような使用基準が設けられています。なお犬の体重が40kgを超えるような場合、一番大きいLサイズに加えて小さいサイズのタブレットを給餌します。
✓2~4.5kg未満→112.5mg錠(XS)
✓4.5~10kg未満→250mg錠(S)
✓10~20kg未満→500mg錠(M)
✓20~40kg未満→1,000mg錠(L) - 使用上の注意は?使用する際の注意点は「用法(8週齢以降+2kg以上)や用量(25mg/kg)を厳守すること」「獣医師指導のもとで与えること」「犬以外の動物(猫やウサギ)には使用しないこと」「使用期限が過ぎたものを使わない」などです。滴下式ではありませんので、給餌前後における入浴やシャンプーの制限はありません。なお添付文書には下痢、嘔吐、食欲不振、流涎(よだれ)、けいれん、嗜眠(ぐったりして動かない)、肝酵素(ALT・AST)値の上昇といった副作用が生じる可能性が記載されています。
ブラベクト®錠の効果
以下でいくつかの調査結果をご紹介しますが、注意すべきはスポット(滴下投与)タイプではなくチュアブルタイプなので、ノミやダニの体内に十分な量のフルララネルを取り込ませるためには犬の血を吸ってもらう必要があるという点です。公式の添付文書に「寄生虫が媒介する疾病の伝播を阻止できるかについての検討は行っていない」とされているのは、成分が効き始める前の吸血自体は予防できないからです。
ネコノミへの即効性
ネコノミへの効果持続期間
「MSD Animal Health」の調査チームは48頭のビーグルをランダムで2つのグループに分け、一方にだけフルララネル(25mg/kg)を経口投与し、殺虫効果がいったいどのくらい持続するのかを検証しました。
犬たちを未吸血のネコノミ80匹に暴露した後、さまざまなタイミングで体表生存数をカウントして駆除率を算出したところ、4時間後に80.5%に達した後、8→12→24時間後のチェックでは99.4%以上をキープしたといいます。また投与から4→8→12週間後のタイミングでネコノミに再暴露し、同様の手法で駆除率を算出したところ、ほぼすべてのチェックポイントにおいて90%を超える駆除率が確認されたとのこと。例外は、投与初日の4時間後にチェックした時の80.5%、および初回投与から12週間後のタイミングで再暴露してから4時間後にチェックした時の33.5%だけでした(:Taenzler, 2014)。
犬たちを未吸血のネコノミ80匹に暴露した後、さまざまなタイミングで体表生存数をカウントして駆除率を算出したところ、4時間後に80.5%に達した後、8→12→24時間後のチェックでは99.4%以上をキープしたといいます。また投与から4→8→12週間後のタイミングでネコノミに再暴露し、同様の手法で駆除率を算出したところ、ほぼすべてのチェックポイントにおいて90%を超える駆除率が確認されたとのこと。例外は、投与初日の4時間後にチェックした時の80.5%、および初回投与から12週間後のタイミングで再暴露してから4時間後にチェックした時の33.5%だけでした(:Taenzler, 2014)。
ネコノミ虫卵の駆除効果
カンザス州立大学の調査チームは12頭の犬たちをランダムで2つのグループに分け、一方にだけフルララネル(25mg/kg)を経口投与し、試験開始2日前および試験開始から28→56→84→91→98→105→112→120日後のタイミングで未吸血のネコノミ200匹に繰り返し暴露しました。
暴露から48時間待った上で両グループの体表生存数と孵化可能な虫卵の数をカウントしたところ、フルララネル投与群においてはすべてのチェックポイントにおいてネコノミは1匹も確認されなかったといいます(駆除率100%)。また虫卵は2つだけ回収されましたが、結局孵化できなかったため、虫卵駆除率も実質100%と算定されました。調査チームは、1回の経口投与により成虫及び虫卵駆除率が4ヶ月(122日間)持続すると結論づけています(:Dryden, 2015)。
暴露から48時間待った上で両グループの体表生存数と孵化可能な虫卵の数をカウントしたところ、フルララネル投与群においてはすべてのチェックポイントにおいてネコノミは1匹も確認されなかったといいます(駆除率100%)。また虫卵は2つだけ回収されましたが、結局孵化できなかったため、虫卵駆除率も実質100%と算定されました。調査チームは、1回の経口投与により成虫及び虫卵駆除率が4ヶ月(122日間)持続すると結論づけています(:Dryden, 2015)。
マダニへの即効性と持続期間
「MSD Animal Health」の調査チームは48頭の犬たちをランダムで2つのグループに分け、60匹のマダニ(メス50+オス10)に暴露した上で一方にだけフルララネル(25mg/kg)を経口投与し、殺虫効果の即効性や持続時間を検証しました。
その結果、未治療グループと比較した時の初日のマダニ駆除率に関し、投与から4時間後が89.6%、8時間後が97.9%、12時間後以降が100%だったといいます。また初回投与から4→8→12→24週間後のタイミングでマダニ(メス50匹)に再暴露し、さまざまなタイミングで駆除率を算出したところ、再暴露から8時間後のタイミングにおける駆除率は、投与から4週目が96.8%、8週目が83.5%、12週目が45.8%だったといいます。12時間以降のタイミングにおける駆除率はどのチェックポイントにおいても98.1%以上だったとのこと。
こうした結果から調査チームは、フルララネルは投与から4時間後には早くもマダニに対する駆除効果を示し始め、90%超の効果が12週間持続するとの結論に至りました(:Wengenmayer, 2014)。
その結果、未治療グループと比較した時の初日のマダニ駆除率に関し、投与から4時間後が89.6%、8時間後が97.9%、12時間後以降が100%だったといいます。また初回投与から4→8→12→24週間後のタイミングでマダニ(メス50匹)に再暴露し、さまざまなタイミングで駆除率を算出したところ、再暴露から8時間後のタイミングにおける駆除率は、投与から4週目が96.8%、8週目が83.5%、12週目が45.8%だったといいます。12時間以降のタイミングにおける駆除率はどのチェックポイントにおいても98.1%以上だったとのこと。
こうした結果から調査チームは、フルララネルは投与から4時間後には早くもマダニに対する駆除効果を示し始め、90%超の効果が12週間持続するとの結論に至りました(:Wengenmayer, 2014)。
飼い主の注意点
「ブラベクト®錠」を犬に投与するかどうかを最終的に決めるのは飼い主です。その際、医薬品メーカー、動物病院、飼い主、犬のそれぞれの立場や思惑について考えておくと、判断する際のヒントになってくれるでしょう。
メーカーが主張しているメリットには、それなりの魅力があることは確かです。しかし、安全性に関して過去に行われた試験のサンプル数が小さく、また北米やヨーロッパで逸話的な副作用情報が徐々に蓄積されつつあるという事実も忘れてはなりません。動物病院は、これまで使ってきたノミダニ予防薬から新興の「ブラベクト®錠」に切り替えることを勧めてくるかもしれませんが、獣医師の言葉を鵜呑みにする前に、この薬の流通が始まったのは2014年からで、副作用に未知の部分が残されているという事実だけは思い出した方がよいと思われます。
- 医薬品メーカー日本国内の動物医療におけるノミ・マダニ駆除剤は毎年成長している分野であり、その市場規模は約60億円と推計される。後発で既存品に対抗することは容易では無いが、「3ヶ月に1度でよい」という従来品にはない特徴を持った「ブラベクト®錠」なら、60億円という限られたパイのうちいくらかは占有できるはず。
- 動物病院「3ヶ月に1度でよい」という簡便さにより、飼い主の投薬コンプライアンスを得やすい。1回の処方で3ヶ月分の利益を確保できる。シーズンの初めにまとまった利益が見込め、年間での病院利益に貢献してくれる。
- 飼い主3ヶ月に1度でよいので投薬忘れや投薬遅れが少なくなる。毎月1回投与×3回のトータルコストよりも、1回投与のコストの方が安く上がることがある。
- 犬スポットオン製品に比べたとき「シャンプーの制限がない」「被毛が乾くまで待つ必要がない」「全身への広がりが早い」「皮膚刺激がない」といったメリットを有している。フレーバーが付いていて嗜好性が高く、投薬ストレスがない。
メーカーが主張しているメリットには、それなりの魅力があることは確かです。しかし、安全性に関して過去に行われた試験のサンプル数が小さく、また北米やヨーロッパで逸話的な副作用情報が徐々に蓄積されつつあるという事実も忘れてはなりません。動物病院は、これまで使ってきたノミダニ予防薬から新興の「ブラベクト®錠」に切り替えることを勧めてくるかもしれませんが、獣医師の言葉を鵜呑みにする前に、この薬の流通が始まったのは2014年からで、副作用に未知の部分が残されているという事実だけは思い出した方がよいと思われます。