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「ピットブル」というミスラベルにより無関係な犬が憂き目に

 外見だけから犬種を判断する機会が多いアメリカの保護施設職員のミスジャッジにより、全く無関係な犬に「ピットブル」というラベルが貼られ、譲渡率が下がっている可能性が指摘されました(2016.3.7/アメリカ)。

詳細

 報告を行ったのは、フロリダ大学の獣医学チーム。チームはまず4つの保護施設から4人ずつを選抜し、各施設において30頭の犬を「ピットブル」と「ピットブル以外」とに、見た目だけを判断基準に選り分けてもらいました。なおここで言う「ピットブル」とは、アメリカンスタッフォードシャーテリアスタッフォードシャーブルテリアのことです。 一般的に「ピットブルタイプ」という言葉でくくられるアメリカンスタッフォードシャーテリアとスタッフォードシャーブルテリア  その結果、同じ動物保護施設に所属する4人が、同じ犬に対して同じ評価を下した確率は、76%~83%だったと言います。次に研究チームは、各施設でサンプルとして選ばれた合計120頭の犬から血液サンプルを採取し、実際にピットブル2犬種のDNAを保有しているかどうかを確認しました。その結果、ピットブルタイプの犬は25頭で、全体の21%でした。このデータと職員の正答率を比較したところ、ピットブルをピットブルと判定できる「感度」は33%~75%、ピットブルでない犬をピットブルではないと判定できる「特異度」は52%~100%という具合に、かなりの個人差が見られたと言います。
 こうしたデータから研究チームは、外見だけから犬種を判断する方法には、たとえ行うのが専門家であっても信頼性がないとの結論に至りました。 Inconsistent identification of pit bull-type dogs by shelter staff DNA studies reveal that shelter workers often mislabel dogs as 'pit bulls' アメリカでは保護施設の職員によってかなりの数の犬が「ピットブル」とミスラベルされている

解説

 保護施設に収容された犬に対し、安易に「ピットブル」というラベルを貼り付けてしまうことには大きな問題があります。1つは「ピットブル=凶暴犬種」という固定観念に引きずられ、里親候補者が尻込みしてしまうという点です。実際には人懐っこくて優しい犬であるにもかかわらず、「ピットブル」というラベルによってその美徳が相殺され、交流して性格を確かめる前に他の犬の方へ目が向いてしまう可能性は否定できません。もう一つは、各地方に設けられている「犬種特別法」(Breed Specific Law)により、そもそも里子として施設に置いておけなくなる危険性があるという点です。「犬種特別法」とは、ある特定犬種にだけ適用されるルールのことで、「外出する時は口輪をつけなければいけない」といった軽いものから、「そもそも飼育してはいけない」といった厳しいものまであります。こうした厳しい「犬種特別法」が存在している地域において「ピットブル」というラベルを貼られてしまうと、その時点で殺処分の可能性が高まってしまいます。
 今回の調査では、ピットブルでない犬をピットブルではないと判定できる確率が52%~100%程度であることが明らかになりました。このことは裏を返せば、ピットブルでない犬をピットブルであると誤認識する確率が、場合によっては50%近くに達するということでもあります。このようにミスラベルされた犬たちは、いわれのない濡れ衣を着せられ、譲渡率が下がってしまったり、最悪のケースでは殺処分という憂き目にあってしまうでしょう。
 研究のメインオーサーであるJulie Levy氏によると、咬傷事故を防ぐために重要なのは、気休め的な「犬種特別法」や信頼性のない施設職員によるラベリングではないとのこと。必要なのは、「保護者がしっかりと子供を見守る」、「犬のボディランゲージを理解する」、「見知らぬ犬のテリトリーに入らない」、「犬に不妊手術を行う」、「子犬の社会化期をしっかりと遅らせる」という基本的な事項を順守することだといいます。 大型犬は凶暴である? Breed-Specific Legislation(ASPCA) Breed-Specific Legislation in the United States DNA and Survey Results: What Kind of Dog is That?