詳細
調査を行ったのは、アメリカ・アリゾナ州立大学の調査チーム。最低4ヶ月間飼い主と生活をともにしている「ラレイン」(2.5歳/去勢済みのオス)、「ニンジャ」(3歳/避妊済みのメス)、「イージス」(3.3歳/避妊済みメス)という3頭の犬を対象とし、飼い主の存在が犬にとってどのような意味を持っているのかを検証しました。
調査チームはまず、犬たちを3.3×3.6mの部屋に導き入れ、任意の行動をとったら部屋から出て飼い主と触れ合えるという関連性を学習させました。ここでいう「任意の行動」とは「ドアから25cm地点の床に取り付けられた大きなボタンを前足や鼻先で押す」(ラレインとイージス)と「スプリングのドアストップを前足で弾く」(ニンジャ)というものです。次に犬たちを異なる5つの状況に入れ、一体どの程度の頻度で自発的に「任意の行動」を取り、部屋から出て行こうとするかを観察しました。設定された5つの状況と観察結果は以下です。
調査チームはまず、犬たちを3.3×3.6mの部屋に導き入れ、任意の行動をとったら部屋から出て飼い主と触れ合えるという関連性を学習させました。ここでいう「任意の行動」とは「ドアから25cm地点の床に取り付けられた大きなボタンを前足や鼻先で押す」(ラレインとイージス)と「スプリングのドアストップを前足で弾く」(ニンジャ)というものです。次に犬たちを異なる5つの状況に入れ、一体どの程度の頻度で自発的に「任意の行動」を取り、部屋から出て行こうとするかを観察しました。設定された5つの状況と観察結果は以下です。
飼い主の存在と犬の反応
- 孤独犬だけが室内にいる状況。この時に観察された「任意の行動」の回数を基準値とする。
- 飼い主の存在+注目飼い主と犬が一緒に室内におり、飼い主がしきりに犬のことをかまってあげる状況→「任意の行動」を見せる回数が顕著に減少した。
- 飼い主の存在のみ飼い主と犬が一緒に室内にいるが、飼い主は机に向かって犬の存在を無視している状況→「任意の行動」を見せる回数が顕著に減少した。
- ベッド使い慣れた寝具が部屋の真ん中に置かれている状況→反応に関しては個体差が大きく、あるものは完全に安心しきって「任意の行動」を見せる回数が顕著に減少したのに対し、他のものは基準値と同程度の回数を見せた。
- おもちゃ犬が好きな5つのおもちゃが室内に置かれている状況→基準値に比べて「任意の行動」を見せる回数は減ったが、飼い主がそばにいるときと比べると減り具合は微小だった。
解説
飼い主の存在が犬にとっての報酬や安心毛布(security blanket)になってくれるかどうかは、日頃の接し方によって決まってくると考えられます。例えば、日常的に犬をほめたりなでたりしている場合、飼い主の存在は犬にとって「良いことが起こる合図」となり、二次的強化子になってくれるでしょう。一方、しつけと称して犬を怒鳴りつけたり叩いたりしている場合、飼い主の存在は犬にとって「嫌なことが起こる合図」となり、二次的嫌悪子になってしまいます。
飼い主が犬にとっての報酬になること自体は望ましいことですが、「自分の存在が犬にとって報酬になる」という意識をしっかり持っておかないと、犬の問題行動を偶発的に助長してしまうことがありますので要注意です。例えば、部屋の中で粗相をした犬を発見したとき、「大声を出しながら駆け寄る」などです。この行動は犬からすると「飼い主さんが近くに来てくれた!かまってくれた!」と解釈されてしまいます。結果として、粗相の頻度がひどくなるかもしれません。
犬との共同生活で重要となるのは、「自分の存在を犬にとっての報酬にしておくこと」および「報酬として自分の存在を利用するときはタイミングに気をつけること」という点です。詳しくは以下のページでもまとめてありますのでご参照ください。

犬との共同生活で重要となるのは、「自分の存在を犬にとっての報酬にしておくこと」および「報酬として自分の存在を利用するときはタイミングに気をつけること」という点です。詳しくは以下のページでもまとめてありますのでご参照ください。