詳細
「虚血性発作」とは、脳に血液を届ける血管に閉塞が起こり、血流が一時的に遮断される現象のこと。閉塞が長引き、小~大規模の脳細胞が壊死した場合は「脳梗塞」と呼ばれます。デンマーク・コペンハーゲン大学の調査チームは2010~2015年の期間、イギリスやデンマーク国内にある専門性の高い5つの病院を受診した犬を対象に、脳の虚血性発作に関する統計調査を行いました。対象となったのは、13頭のメスと10頭のオスからなる23頭の犬。平均年齢は8歳8ヶ月です。犬種別に発症頻度を調べたところ、以下のような内訳になったといいます。
調査チームは、なぜ吻側小脳動脈にだけ多発するのかはよくわからないものの、動脈の分岐の仕方や犬ごとの解剖学的個性が脳内の血流に変化を及ぼし、虚血発作や梗塞を引き起こしているのではないかと推測しています。またキャバリアで多く報告されている脳のキアリ奇形も恐らく関わっているだろうとのこと。犬の虚血性発作は短期の予後が非常に良いため、急性~亜急性の神経症状で来院した犬の病因がたとえ分からなかったとしても、安易に安楽死を選択してはいけないと警告しています。 Neurological signs in 23 dogs with suspected rostral cerebellar ischaemic stroke
虚血性発作の犬種別頻度
- キャバリアキングチャールズスパニエル=9
- グレイハウンド=2
- ラブラドールレトリバー=2
- バセットハウンド=1
- ケアンテリア=1
- イングリッシュコッカースパニエル=1
- ジャーマンシェパード=1
- ラーチャー=1
- ポインター=1
- シーズー=1
- チベタンテリア=1
- ワインマラナー=1
- 中型雑種=1
調査チームは、なぜ吻側小脳動脈にだけ多発するのかはよくわからないものの、動脈の分岐の仕方や犬ごとの解剖学的個性が脳内の血流に変化を及ぼし、虚血発作や梗塞を引き起こしているのではないかと推測しています。またキャバリアで多く報告されている脳のキアリ奇形も恐らく関わっているだろうとのこと。犬の虚血性発作は短期の予後が非常に良いため、急性~亜急性の神経症状で来院した犬の病因がたとえ分からなかったとしても、安易に安楽死を選択してはいけないと警告しています。 Neurological signs in 23 dogs with suspected rostral cerebellar ischaemic stroke
解説
虚血発作を経験したことがある2,416人を対象とした調査によると、23%の人が過去に「一過性虚血発作」(TIA)の既往歴があったそうです。今回の調査でも22%の犬が過去に発作歴があったといいますので、飼い主が気づかないだけで、犬は頻繁にTIAを経験しているのかもしれません。犬の頭が傾いてふらふら歩いている場合、真っ先に「前庭疾患」が思い浮かびますが、「虚血性発作に伴う小脳疾患」という可能性も頭の片隅に置いておく必要があるでしょう。虚血発作が長引いて梗塞が起こると、症状が永続化してしまうことも考えられますが、発作に対する効果的な予防法がないというのが歯がゆいところです。