宏観異常現象とは?
宏観異常現象(こうかんいじょうげんしょう)とは、特殊な機器を用いなくとも誰でも観察できるいろいろな地震の前兆現象のことです。民間伝承やことわざに含まれるものや、科学的な根拠が乏しい眉唾(まゆつば)ものまで含めると、おおよそ以下のようなものが代表として挙げられます。「犬が異常に吠えた」・「犬が急に落ち着きを失った」などもそのうちの1つです。
宏観異常現象の種類
- 地電流「地電流」(ちでんりゅう)とは地中に流れている微弱な電流のことです。この電流は地磁気変化や地殻の変化に伴って変動することから、電位差を宏観異常現象の一種ととらえる考え方もあります。
- 地震雲「地震雲」(じしんぐも)とは地震の前に現れるとされる特異な雲のことです。従来の気象状況により充分発生のメカニズムを証明できる点、および報告された具体事例を解析すると、そのほとんどが飛行機雲、巻き雲、高積雲などありふれた雲であるなどの点から否定的な意見が多いものの、大きな地震が起こるたびに必ず報告例があります。
- 海面の発光「海面の発光」とは、海底で地震が起きるとメタンハイドレートが海面上に浮上し、青白く発光し、海が光って見えるという現象のことです。「メタンハイドレート」とはメタンを中心にして周囲を水分子が囲んだ形になっている化合物を指します。
- 空の発光「空の発光」とは、震源方向にある地平線の上空に黄色~白の閃光が数十秒間見られるというものです。揺れの数十秒前の目撃例が多く、三河地震、兵庫県南部地震、新潟県中越地震などでも多くの証言が寄せられました。原因としては「プラズマ放電現象」説や「地殻変動により地中で発生した電気の放電」説などがあります。
- 通信機器の変調「通信機器の変調」例としては、テレビ画面にシマが入ったり画像が映らない、あるいはノイズが入る、携帯電話やPHSの雑音が増えたり通信速度が遅くなる、レーダーや無線機に異常な虚像が写ったり電波の受信不良が起こる、などが挙げられます。
- 動物の異常行動「動物の異常行動」とは、動物たちが普段は見せないような奇妙な行動を見せることです。犬が異常に吠えて大事にしているおもちゃを壊したり、猫が突然姿を消したり、鳥たちがせわしなく空を飛びまわるなどが代表例です。民間伝承にまでなっているものを含めると、「ナマズが騒ぐ」、「日中にカラスの大移動する」などもあります。
地震感知して逃げ出す犬
動物の異常行動・具体例
宏観異常現象の中でも、動物の異常行動は世界中で観察される極めて普遍的(ふへんてき)なものです。古い記録では、紀元前373年・ギリシアのヘリスを地震が襲った際は、ネズミ、イタチ、ヘビ、ムカデなどの動物たちが、地震が到来する数日前に巣を放棄し、安全な場所へ移動したと歴史家のディオドロス・シクルスが記しています。以下では、主に20世紀に入ってから報告された動物の異常行動の具体例を列挙します。
日本における動物の異常行動
地球の表面を覆う厚さ10~100kmの硬い「プレート」と呼ばれる超巨大な岩盤が集中する日本では、地震の発生する確率がどうしても高くなり、たびたび大地震を引き起こします。そしてそのたびごとに動物の異常行動に関する報告が数多く寄せられます。
阪神淡路大震災
社団法人日本愛玩動物協会によると、阪神淡路大震災が発生する前、犬と猫に関して以下のような異常行動が見られたという報告があります。
また別の情報源では、震源域の明石海峡において、地震直前にマダイが不漁となる一方、淡路島南部では地震数日前から例年の30倍にあたる約7トンという異常な水揚げがあったとも報告されています。
東日本大震災
2011年7月2日の読売新聞の記事では、東日本大震災に先駆けて以下のような動物の異常行動があったと報告されています。
東日本大震災前の異常行動例
震災当日の午前1時50分頃、宮城県石巻市湊地区で30年以上暮らす阿部幸子さん(66)が玄関のドアを開けた瞬間、普段の3倍近い数である50匹程度のカラスがギャーギャーと泣き叫んでいるのを目撃。また同地区に暮らす佐藤よし子さん(60)は、3月11日午前10時から正午頃にかけて、上空で激しく争うような数十羽のトンビのけたたましい声を聞く。さらに震災1週間前の3月4日、茨城県鹿嶋市の海岸で、打ち上げられた小型クジラ54頭が発見される。ちなみに東日本大震災における犬や猫の異常行動に関して麻布大学獣医学部の太田光明教授は
不可解なことに阪神ほどの報告数はありませんでした。東北地方では当時、規模の大きな地震が頻発していましたから、動物が揺れに慣れてしまったのではないでしょうか。それに、飼育方法が都市部と違うという面も関係している可能性がありますとの見解を示しています。
中国における動物の異常行動
動物たちの行動を地震予知に利用できると考える中国では、地震に先駆けて現れる異常行動に関する記録が豊富に残っています。 EARTHQUAKE PREDICTION IN CHINA(※英文)
中国における地震時の動物異常行動
- 1920年・海原大地震(M8.5)群れを成して逃げていくオオカミ、異常に吠え立てる犬、慌しく空を飛び交うツバメが観察された。
- 1966年・河北省地震(M6.8)地震が来る前に震源地付近の犬が一匹残らず村から逃げ出した。
- 1969年・渤海地震(M7.4)カモメ、サメなどの異常行動が見られ、また地震到来の2時間前、天津人民動物公園においてパンダ、シカ、ヤク、トラ、ドジョウなどの異常行動が見られ、それを元にいち早く避難勧告を出すことができた。
- 1975年・海城地震(M7.2)1974年、12月中旬に、訳もなく冬眠から目覚めたヘビたちが路上に現れ、そのまま凍ってしまい、それらをエサにしようとネズミたちが大量発生した。年が明けた75年2月に入ると、ウシ、ウマ、イヌ、ブタなどより大きな動物においても異常行動が観察され、4日、マグニチュード7.2の海城地震が発生した。
- 1976年・唐山地震(M7.3)震源地近くの農場においてウマやロバがエサに見向きもせず、何かに取り憑かれたかのようにジャンプやキックを繰り返し、ついには柵を乗り越えて逃げ出してしまった。
地震時に観察された動物の異常行動まとめ
- ヤギが檻から逃げ出す
- 犬や猫が自分の子をくわえて外に逃げ出す
- ブタが奇妙な鳴き声を発する
- ニワトリが夜中に小屋を抜け出す
- 魚たちが訳もなく周遊する
- 鳥たちが巣を明け渡す
- 動物園の動物たちが檻に入ることを拒絶する
- ヘビ、トカゲが地下のすみかを放棄する
- 昆虫たちが海岸付近で巨大な塊をなす
- 家畜たちが高台へと移動する
アメリカにおける動物の異常行動
2011年8月23日午後1時51分(日本時間24日午前2時51分)、アメリカ東部バージニア州を震源とするマグニチュード5.8の地震が発生し、首都ワシントンD.C.中心部などが強い揺れに見舞われました。この地震に際して、ワシントンD.C.にあるスミソニアン国立動物公園(Smithsonian’s National Zoological Park)では動物たちの異常行動が観察されています。
アメリカで観察された動物の異常行動まとめ
- 5~10秒前、オランウータン、ローランドゴリラがエサも食べずに猿山の頂上にいち早く避難した
- アカエリマキキツネザルは15分前に奇妙な叫び声を上げた
- ジャイアントハネジネズミが午後のおやつを放棄して巣穴に引きこもった
- ゾウが地面を踏み鳴らした
- フラミンゴが一ヶ所に集まった
その他の国における動物の異常行動
以下では世界中で観察されている動物の異常行動に関する報告の一部をご紹介します。
台湾中部地震
宏観異常に関する報告を集めているNPO法人大気イオン地震予測研究会e-PISCOのデータによると、1999年9月21日に発生した台湾中部地震でも動物たちの異常行動が観察されています。
台湾中部地震の動物異常行動
- 震源地の近くに住んでいる友人の犬は突然いなくなり、地震の後で戻って来た
- 普段寝てばかりの犬が、地震の前はみんな起きて狼のように鳴いていた
- 犬が屋根の上に登って、吠えていた
- ツバメが運動場にたくさん集まった
- 前日の夜、鶏が激しく鳴いた
- 地震の前日12時ごろ飼っている鴨が集まって鳴いていた
イタリアのラクイラ地震
2009年4月、イタリアのラクイラ(L’Aquila)を襲った地震が発生する3日前、繁殖場に群がっていたヒキガエルが集団でいなくなり、地震後1日たったころに戻ってきたという記録があります。この件に関する報告を行ったレイチェル・グラントさんは「ヒキガエルは地震前に発生する何らかの気体や粒子を感知しているのではないか」と推論しています。 BBC Nature News(※英文)
その他
英国の生物化学者ルパート・シェルドレイク氏は著書「世界を変える七つの実験」の中で、以下に挙げる地震に際し、犬を始めとする動物たちが地震到来の前に一斉に移動を開始したと指摘しています。
動物の異常行動が観察された地震
- 1960年モロッコ・アガディール港の地震
- 1963年ユーゴスラビアのスコピエ市地震
- 1966年・ロシアのタシケント地震
- 1997年・イタリアのアッシージ地震
動物の異常行動に関する研究
地震の前に広く観察される動物の異常行動という現象は、いわゆるアンカリングという認知バイアスの一種である、という見方も一方にはあります。すなわち、動物の異常行動というものは地震がないときにも観察されうるきわめてありふれたものであるが、「地震」という非常に印象的な出来事などが生じると、後からその異常行動が地震と結び付けられて特別な意味を付与されてしまう、というものです。そうした反論を尻目に、動物の異常行動を地震予知の手がかりとして何とか利用しようと研究している人たちが各国にいます。
日本における動物の異常行動研究
以下は地震大国・日本において動物の異常行動を地震予知に関連付けて研究している人たちです。地震の恐怖を身近に感じながら暮らしていますので、どんなささいな可能性でもとことんまで追求し、防災に役立てようという研究者たちの気概を感じます。
日本の地震研究家たち
- 弘原海清氏大阪市立大学の弘原海清(わだつみきよし)名誉教授は大阪市立大学阪神大震災学術調査団の団長として、宏観異常現象の収集に取り組み、地震危険予知プロジェクトPISCOを立ち上げた、宏観異常現象研究の先駆け的存在です。
- 矢田直之氏大気イオン地震予測研究会e-PISCOの理事を上記・弘原海氏から引継ぎいだ神奈川工科大学工学部の矢田直之准教授は、研究室のネコの首に人間用の歩数計を取り付け、異常行動と地震発生の相関関係を研究しています。
- 池谷元伺氏大阪大学の池谷元伺名誉教授は、地震の前に地中でパルス電磁波が発生し、それを動物が感知して異常行動を起こすとしています。
- 太田光明氏
麻布大学獣医学部の太田光明教授は、人工的に再現した電磁波をイヌやネコにあて、その反応を見る実験を続けている研究者です。教授によると、地震前に見られる動物の異常行動は、地震直前に生じる電磁波を感じとるという「電磁波説」と、水蒸気やちりなどが地上に出た電磁波によって「帯電エアロゾル」になったものを感知しているという「帯電エアロゾル説」があり、どちらの説も証拠となる記録があり、理論的にありうるとみています。
現在教授は、動物の異常行動と地震予知の関連性にデータによる裏づけを与えようと尽力していますが、その一環として「地震感知遺伝子」の解明に着手しています。これは、阪神淡路大震災の直前に異常行動を起こしたペット300頭近くの血液サンプルを採取し、その血液の遺伝子の中に地震予知に関係すると考えられる配列を発見するという作業です。将来的には盲導犬のように「地震予知犬」を育てたいと、夢を語っています。
ナマズと地震に関する研究
- 畑井新喜司博士1923年の関東地震後、青森県の東北大学付属浅虫臨海実験所で畑井新喜司博士がナマズと地震の研究を開始し、水槽に飼育されたナマズに対しガラスをノックしたときの反応の敏感さを観察しました。また同博士らは研究所内に音響と振動を遮断した研究室を設け、毎日3回ナマズの入った水槽を指で軽くたたいた時のナマズの反応を調査しました。
- 浅野教授宮城県立看護大学の浅野教授は、ナマズが水中の微弱な電位差を感じる能力があり、その感覚の鋭さは人間やコイなどが感じる能力の100万倍に近い0.05μV/cm付近で、特に1Hz~30Hz程度の低周波に敏感であることを解明しました。
- 東海大学地震予知研究センター東海大学地震予知研究センターでは地震とナマズの関係を調査しており、既存資料の整理と実証的な研究方法に関して検討を進めています。
中国における動物の異常行動研究
中国は1960年代後半から、動物の異常行動を地震予知の有力な手がかりと考えるようになっています。
例えば1976年に唐山市で発生し、65万人以上の死者を出した唐山大地震の後には、生物学者、地質物理学者、化学者、気象学者、生物物理学者などからなる科学チームが編成され、唐山地方、およびそこを取り巻く48の州に点在する400もの共同体を訪問する大規模調査が行われました。その結果、2000例にも及ぶ動物の異常行動に関する証言が集まり、58の動物において異常行動が認められたという事実を突き止めています。
また中国の研究者たちは、ハトを用いた地震予知の実験も行いました。ハトの足を構成している脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)には、およそ100ほどの小さなセンサーがあり、研究中に発生したマグニチュード4.0程度の地震で観測したところ、足のセンサーが正常なハトは地震が発生する前の段階で落ち着きをなくして飛び立ったのに対し、センサーを感じなくしたハトは、まるで何事もなかったのようにその場に立ち尽くしていたそうです。
このように中国では、動物の異常行動を地震予知の手がかりとして利用するための研究開発が進められています。EARTHQUAKE PREDICTION IN CHINA(※英文)
例えば1976年に唐山市で発生し、65万人以上の死者を出した唐山大地震の後には、生物学者、地質物理学者、化学者、気象学者、生物物理学者などからなる科学チームが編成され、唐山地方、およびそこを取り巻く48の州に点在する400もの共同体を訪問する大規模調査が行われました。その結果、2000例にも及ぶ動物の異常行動に関する証言が集まり、58の動物において異常行動が認められたという事実を突き止めています。
また中国の研究者たちは、ハトを用いた地震予知の実験も行いました。ハトの足を構成している脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)には、およそ100ほどの小さなセンサーがあり、研究中に発生したマグニチュード4.0程度の地震で観測したところ、足のセンサーが正常なハトは地震が発生する前の段階で落ち着きをなくして飛び立ったのに対し、センサーを感じなくしたハトは、まるで何事もなかったのようにその場に立ち尽くしていたそうです。
このように中国では、動物の異常行動を地震予知の手がかりとして利用するための研究開発が進められています。EARTHQUAKE PREDICTION IN CHINA(※英文)
アメリカにおける動物の異常行動研究
1975年の中国・海城地震では、動物の異常行動を元にして発せられた緊急避難命令により、海城市に暮らす大部分の人々が奇跡的に被災を免れることができました。この地震予知成功を重要ととらえたアメリカでは、同時期に国内において地震に関する研究報告を行っています。
内容はカリフォルニアの地震多発地域に暮らすボランティア1,200名を募り、動物の異常行動が観察されたら直ちにホットラインで研究所に知らせる、というものでした。この調査は1979~81年に渡って行われましたが、結局研究調査を行ったUnited States Geological Survey(USGS=アメリカ地質調査団)は「動物の異常行動と地震との間には、再現可能な関係性はない」との結論に達しています。同機関に所属する地質物理学者のアンディ・マイケル(Andy Michael)氏は動物は空腹、縄張りの主張、繁殖衝動、外敵に対する反応など様々なものに反応するため、地震のみに対する反応を再現性を持って観察することは困難とし、動物のみを用いた地震予報システムの構築は難しいだろうとしています。
以来、アメリカ国内において動物の異常行動に関する公的な研究はなされていませんが、引退した地質学者であるジム・バークランド(Jim Berkland)氏は、新聞に掲載される迷子犬・迷子猫の数で地震を予測するという極めてユニークな方法で地震予知にアプローチしています。様々な反論はあるものの、この手法を用いて1989年のカリフォルニア大地震を予言したと公言しています。
内容はカリフォルニアの地震多発地域に暮らすボランティア1,200名を募り、動物の異常行動が観察されたら直ちにホットラインで研究所に知らせる、というものでした。この調査は1979~81年に渡って行われましたが、結局研究調査を行ったUnited States Geological Survey(USGS=アメリカ地質調査団)は「動物の異常行動と地震との間には、再現可能な関係性はない」との結論に達しています。同機関に所属する地質物理学者のアンディ・マイケル(Andy Michael)氏は動物は空腹、縄張りの主張、繁殖衝動、外敵に対する反応など様々なものに反応するため、地震のみに対する反応を再現性を持って観察することは困難とし、動物のみを用いた地震予報システムの構築は難しいだろうとしています。
以来、アメリカ国内において動物の異常行動に関する公的な研究はなされていませんが、引退した地質学者であるジム・バークランド(Jim Berkland)氏は、新聞に掲載される迷子犬・迷子猫の数で地震を予測するという極めてユニークな方法で地震予知にアプローチしています。様々な反論はあるものの、この手法を用いて1989年のカリフォルニア大地震を予言したと公言しています。
英国における動物の異常行動研究
「あなたの帰宅がわかる犬」(Dogs that Know When Their Owners Are Coming Home)や「世界を変える七つの実験」(Seven Experiments that could change the world)などの著書で有名なルパート・シェルドレイク氏は1994年のカリフォルニア州・ノールリッジ地震や、1999年のトルコ地震などにおいて独自の研究を行っています。シェルドレイク氏はすべての調査において、地震に先駆けて犬が鳴き叫び、猫が身を隠し、鳥たちがせわしなく動き出したとしています。またシェルドレイク氏は世界中から動物の異常行動に関する報告を集積し、必要とあらばその地域に暮らす人々に対して適切な警告を発するようなホットラインの構築を画策しています。
地震予知のメカニズムに迫る
科学的な証明はされていないものの、動物たちが地震の到来を予知している、と思わせるような報告や具体例はたくさんあります。もし本当に動物たちが地震予知能力を持っているのだとすると、一体どのようなメカニズムを通してなのでしょうか?以下ではいくつかの仮説をご紹介します。
電磁波説
麻布大学獣医学部の太田光明教授は、研究室入り口の床下に直径30センチのコイルを設置し、遠隔操作でアンプから20ボルトの電気を流して磁場を発生させ、電磁波に反応したイヌの唾液を採取してストレスホルモンの数値などを調べるという実験を行っています。データから「約300匹のイヌで試した結果、10匹中1匹の割合で反応し、野生に近い状態で飼われているイヌほど電磁波に反応しやすい」こと、そして「古代犬種でオオカミに近いバセンジやシベリアンハスキーが激しく反応した」という事実が明らかになっています。 またイヌやネコでは、「震度5以上の地震の際、直前に鳴く、吠える、暴れるなどの行動が見られること」、そして「震度5以上にしか反応しないこと」を発見しており、大規模な地震であればあるほど、その直前に犬や猫の多くの事例が観察できるはず、としています。
動物と電磁波の関係について研究するために、同教授は1975年に大地震が発生した中国の海城市を訪れ、中国の動物園にいる動物に電磁波を当てて、行動を観測するという実験を行っています。結果、ヘビは行動が活発になり、カメやイグアナは逃げ出したという事実が観察され、地震前に「牛や豚が逃げ出し、ニワトリが鳥のように飛び、ネズミが人を恐れなくなった」という現地の人の証言に科学的な根拠がある可能性を突き止めました。
また大阪大学の池谷元伺名誉教授も、地震に先立つ地殻変動で、地殻に含まれる石英の岩石が破壊され、そこから発生するパルス電磁波が動物たちを異常行動に駆り立てているという「パルス電磁波説」を提唱しています。
動物と電磁波の関係について研究するために、同教授は1975年に大地震が発生した中国の海城市を訪れ、中国の動物園にいる動物に電磁波を当てて、行動を観測するという実験を行っています。結果、ヘビは行動が活発になり、カメやイグアナは逃げ出したという事実が観察され、地震前に「牛や豚が逃げ出し、ニワトリが鳥のように飛び、ネズミが人を恐れなくなった」という現地の人の証言に科学的な根拠がある可能性を突き止めました。
また大阪大学の池谷元伺名誉教授も、地震に先立つ地殻変動で、地殻に含まれる石英の岩石が破壊され、そこから発生するパルス電磁波が動物たちを異常行動に駆り立てているという「パルス電磁波説」を提唱しています。
帯電エアロゾル説
大阪市立大学名誉教授の弘原海清(わだつみきよし)氏は、「帯電エアロゾル」による地震とその前兆現象の発生モデルを提唱しています。概要は以下です。
帯電エアロゾルモデル
- 地下岩盤の花崗岩に含まれている石英に一定方向の強い力を加えると「ピエゾ電気」という特殊な電気が発生することが実験で証明されている
- 地震発生前、地下深くで岩盤破壊が始まると、岩盤に極めて強い力が加わり、実験室と同じような強いピエゾ電気が発生すると考えられる
- こうしたメカニズムによって大量に発生した電流が、地中で静電気を帯びた微粒子(帯電エアロゾル)を生み出し、大気中に放出される
帯電エアロゾルで説明可能な宏観異常現象
- 帯電エアロゾルが大気の塵に衝突して、空が発光すること
- 大気中に大量に発生した帯電エアロゾルが青い光を散乱させ、月や太陽が赤くみえること
- 上記理由で、朝焼けや夕焼けが異常に赤くなること
- 帯電エアロゾルが空気中の水蒸気と結びつき、渦巻き状の「地震雲」を形作ること
- 高濃度の帯電エアロゾルが神経伝達物質セトロニンを増して中枢神経を害し、頭痛や嘔吐、神経過敏症などの「セトロニン症候群」を引き起こすこと
- 帯電エアロゾルに伴って発生する大量のプラスイオンが動物の異常行動を生むこと
イオン濃度説
弘原海清教授は、神戸市東灘区の会社のクリーンルームにあったイオン測定器が、阪神大震災の直前に異常な高値を示したことを知り、地震前生じた大地の細かな亀裂が大気中にラドンを放出し、それがイオン濃度を急激に高めるとにらみ、大気中のイオン濃度と地震の関連を調べ始めました。その理論を元にして岐阜県飛騨地方を震源とするM5.5の地震をほぼ的中させたという功績もあります。このように、動物たちは私たちの知らないメカニズムを通じてイオン濃度を感知するとするのがイオン濃度説です。
P波感知説
地震が発生すると、伝わる速度が速くてエネルギーが小さい「P波」がまず到着して小さな縦揺れが発生し、その後速度が遅くてエネルギーが大きいS波が到着し、大きなを持つ横揺れが発生します。動物たちはこの微弱なP波を、人間が感じるよりも早く感知しているのではないかというのがP波感知説です。
2000年、アメリカの地震学情報誌Bulletin of the Seismological Society of America誌に掲載されたKirschvink, Joseph L.氏の報告によると、「微弱なP波を地震到来の直前に感じ取り、人間よりも早く避難行動を見せるのは理にかなっている。なぜなら、全ての脊椎動物は身に降りかかる危険に対して逃走本能をもっているからだ。しかし、地震が来る何日も前や何週間も前にそうした行動を見せるというのはどうだろうか。ひょっとすると、動物たちは地面の傾きや地下水の変異、電磁気的な変化など、私たちも知らない何らかの手がかりを感知し、避難行動をとってているのかもしれない」とし、P波感知説だけでは地震が来る数日前からの異常行動は説明ができないとしています。
2000年、アメリカの地震学情報誌Bulletin of the Seismological Society of America誌に掲載されたKirschvink, Joseph L.氏の報告によると、「微弱なP波を地震到来の直前に感じ取り、人間よりも早く避難行動を見せるのは理にかなっている。なぜなら、全ての脊椎動物は身に降りかかる危険に対して逃走本能をもっているからだ。しかし、地震が来る何日も前や何週間も前にそうした行動を見せるというのはどうだろうか。ひょっとすると、動物たちは地面の傾きや地下水の変異、電磁気的な変化など、私たちも知らない何らかの手がかりを感知し、避難行動をとってているのかもしれない」とし、P波感知説だけでは地震が来る数日前からの異常行動は説明ができないとしています。
動物による地震予知システムは可能?
「電磁波説」、「帯電エアロゾル説」、「イオン濃度説」など、動物の地震予知メカニズムに関してはいろいろな説があるものの、いまだに明確な答えが出ていないのが現状です。一方、そうしたメカニズムはいったん度外視し、とりあえず動物の異常行動を地震の指標として利用しようという動きもあります。例えば2014年に発表された最新の研究では、「犬や猫の異常行動」と「乳牛の搾乳量」という指標を組み合わせれば、効果的な地震予知システムとして利用できるという可能性が示されています。
研究を行ったのは、麻布大学の太田光明教授らのチーム。犬や猫を飼っている家庭に対し、2011年3月11日に発生した東日本大震災の直前、ペットがどういう行動をとったかについてアンケート調査を行いました。その結果、犬では18.6%、猫では16.6%の家庭において異常行動が見られ、さらに観察された異常行動のうち、およそ80%は地震が起こる前の24時間に集中していたといいます。
研究では、犬や猫といった身近な動物のほか、動物のストレスを反映しやすい「乳牛の搾乳量」も併せて調査されました。その結果、静岡、茨城、神奈川の3県のうち、震源地から近い茨城県においてのみ、地震が起こる1週間くらい前に不可解な乱高下が見られたといいます。
上記したような「動物による地震予知システム」は、将来的に大活躍する可能性は秘めているものの、完成するまでにはまだまだ時間がかかりそうです。現時点でペットの飼い主がすべきことは、こうしたシステムの完成を気長に待つことではなく、災害とペットの防災を読んで不測の事態に備えておくことでしょう。
研究を行ったのは、麻布大学の太田光明教授らのチーム。犬や猫を飼っている家庭に対し、2011年3月11日に発生した東日本大震災の直前、ペットがどういう行動をとったかについてアンケート調査を行いました。その結果、犬では18.6%、猫では16.6%の家庭において異常行動が見られ、さらに観察された異常行動のうち、およそ80%は地震が起こる前の24時間に集中していたといいます。
犬と猫の異常行動(2011.3)
犬
そわそわする
飼い主にくっつく
吠える
何かを怖がる
震える
猫
そわそわする
隠れる
飼い主にくっつく
普段と違う場所に行く
何かを怖がる
2011年3月の搾乳量(茨城)
Unusual Animal Behavior Preceding the 2011 Earthquake off the Pacific Coast of Tohoku, Japan
こうしたデータから研究者たちは、「犬や猫が見せる異常行動」と「乳牛の搾乳量」という指標を組み合わせれば、大きな地震の到来を警告してくれる地震予知システムとして利用できる可能性があるとの結論に至りました。上記したような「動物による地震予知システム」は、将来的に大活躍する可能性は秘めているものの、完成するまでにはまだまだ時間がかかりそうです。現時点でペットの飼い主がすべきことは、こうしたシステムの完成を気長に待つことではなく、災害とペットの防災を読んで不測の事態に備えておくことでしょう。