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家庭でできる地震対策~家の中の安全対策から緊急時の正しい行動まで

 国家レベルで様々な防災対策が練られているものの、実際のところ地震を始めとする自然災害はいつやってくるかわかりません。事前に様々な用意していないと、いざというときパニックに陥り、時間を浪費するばかりか時には命を危険にさらすことにもなります。飼い主もペットも速やかに行動できるよう、家庭内でできる対策はぜひともしておきたいところです。

地震に備えて用意しておくもの

 地震が起こってから「さぁどうしようか?!」という状態ではまったく間に合いません。普段から災害時に必要なものをリストアップし、「非常持ち出し袋」という形で一ヶ所にまとめておくことが防災のポイントです。また、日ごろからペットと一緒に避難することを想定し、さまざまな下準備を整えておくことも大事です。

飼い主用の非常持ち出し袋

 まずは災害時に重要・必要となるアイテムを一ヶ所にまとめた非常持ち出し袋を用意しましょう。両手が使えるようにリュックサック型のものが理想です。避難時にあると便利な持ち出し品の一例を以下に列挙しますが、避難時に支障のない重さは成人男性で15キロ、女性では10キロほどといわれていますので、全ての持ち出し品がなるべくこの重量内におさまるよう工夫します。なお、災害で避難する際は「ペット同行避難」が原則ですので、犬や猫を飼っているペット飼育者は、自分用の持ち出し袋に加えて「ペット」を連れ出すことも必要となります。
災害時の非常持ち出し袋・一覧リスト
  • ペット用の必需品ペットを避難所へ連れて行ったときに必要となる様々な道具のことで、詳細は後述します。
  • 携帯ラジオ地震で停電になり、テレビが視聴できなくなっても、電池式の携帯ラジオならいつでもどこでも聞くことができ、なおかつ場所をとりません。
  • 飲み水3日分飲み水は、1人1日3リットル程度必要と言われています。3日分ですと9リットルとなり、これだけで10kg弱の重さになります。
  • 非常食3日分非常食は保存期間が長く、火を通さないで食べられるものが理想です。缶切りなしで開けられる缶詰や乾パン、レトルト食品などがよいでしょう。
  • 懐中電灯停電時、手元や足元を照らすのに役立ちます。予備の電池を用意しておくとなお安心です。
  • ローソクとマッチやライター懐中電灯が使えなくなったときなどの予備として持っておきます。
  • 衣類、毛布などの防寒具特に冬場の避難生活では必需品となります。
  • 貴重品現金・身分証明書・預貯金通帳・印鑑・権利書・各種カード・保険証など。
  • 医療セット常備薬・三角巾・包帯・ガーゼ・脱脂綿・ばんそうこう・はさみ・ピンセット・消毒薬・整腸剤・持病のある方はその病気のための薬など。
  • 10円玉災害の混乱で携帯電話が通じないようなときでも、公衆電話は災害時に優先的につながるようになっています。さらに、停電しているときはテレホンカードが使えないことも考えられますので、10円玉を用意しておくのがもっとも無難でしょう。
  • ビニールシート
  • ヘルメットと防災ずきん
  • ロープ
  • 筆記具
  • タオル
  • ビニール袋や容器
避難時に備え、非常持ち出し袋を用意しておくと便利です。 ペットの防災グッズ

ペット同行避難のための準備

 犬や猫を始めとするペットを飼っている人にとって、ペット同行避難、すなわちペットと自分が一緒に避難することは災害時における基本行動です。これには、自宅に置いてきたペットを連れ戻しに被災地へ戻り、二次災害にあう住人をなくす、という目的があります。いざというときに備え、飼い主は以下のような下準備を整えておくと安心です。
普段からの適正飼育
 被災動物へ公的機関から何らかの救護活動がなされるまでには、およそ3日ほどかかると考えられます。それまで避難所においてペットを飼育する必要がありますが、被災後の3日間を乗り切るために必要最小限の道具やアイテムはおおむね以下です。「ペット用の必需品」として飼い主の非常持ち出し袋の中に合わせて詰め込んでおきましょう。
被災後3日間をのりきるアイテム
  • 首輪と鑑札・迷子札
  • 水とペットフード3日分
  • 食器
  • 狂犬病予防注射済み票
  • ワクチン接種証明書
  • リード(犬)やハーネス(猫)
  • キャリーやクレート
  • タオル・バスタオル
  • ペットの写真=行方不明時の手がかりになる
  • 救急用品=包帯・滅菌ガーゼ・吸水性パッド・動物用抗生物質軟膏
  • 排泄用品=ペットシーツ・猫砂・新聞紙・消臭スプレー・密閉性ゴミ箱や袋
 なお、普段から犬や猫をすばやくキャリーやクレートに入れる練習をしておくことも重要です。小型犬や猫などが暴れるようだったら、手早く毛布や洗濯ネットでくるみ、すばやくキャリーやクレートに放り込みます。このときペットが窒息したり熱中症にならないよう、気をつけてください。パニック状態に陥り、飼い主に噛み付いたり引っかいたりしてきたときのために、厚手の手袋を用意しておくと安心でしょう。 犬に必要なペットグッズ

地震保険への加入

 地震で住宅が壊れたり地震による火災で住宅が焼失した場合、火災保険だけでは補償されません。地震保険と火災保険に同時加入している場合は、地震火災、および地震に付随する津波被害に対して保険が下ります。保険料は、建物の耐震性や県別に定めた地域危険度によって変動します。

地震に対する住居の安全対策

 地震の揺れで家具が転倒すると、その下敷きになる、避難路がふさがれる、破損したガラスや散乱物でケガをする等の二次被害が想定されます。そこで万が一の災害に備え、日頃からできる住居の安全防災対策を考えておきましょう。

危険な家具への対策

 阪神・淡路大震災による死者6,308人のうち、家屋や家具の倒壊を死因とする割合は89%にも及んだといいます。家具が転倒しやすくなる条件は、おおむね以下の3つです。
家具転倒の3要因
  • 家具の奥行きが浅く、背が高い
  • 上層階にある
  • 絨毯やカーペットなど、接地面が床よりも柔らかい
 住んでいる階を変えることは簡単ではありませんが、今すぐにでもできる安全対策はいくつかあります。
家具の転倒防止策
  • 家具を安全金具等で壁や天井に固定する
  • 家具を壁に対して後ろもたれ気味に設置する
  • 戸棚の下に重い物を、上に軽い物を収納する
  • 家具の上にテレビ等の重い物やガラス製品等は置かない
  • 滑り止めシート、振動吸収材を活用する
ペットの防災グッズ

寝室の安全対策

 眠っている間は無防備ですので、寝室にはなるべくタンスなど重量のある家具を置かない方が無難です。また、戸棚や窓のガラス部分には、ガラス飛散防止の透明フィルムを貼るほか、戸棚の中の物が飛び出さないように扉や引き出しを止め金具で固定すると安全です。地震後、万が一ガラスが床に散乱した場合などに備え、普段から厚手のスリッパなどを寝室にも用意しておくと怪我をしないで済みます。
寝室における安全対策のポイント
  • 倒れると危険なものを置かない
  • ガラスには飛散防止フィルムを貼る
  • 扉や引き出しは留め具で固定
  • 厚手のスリッパや手袋で怪我を防止
ペットの防災グッズ

家と塀の点検

 建物やブロック塀の補強が不十分だと、大地震の際に倒壊し、被害が大きくなります。地震の揺れで倒れたブロック塀の下敷きになり、命を落としてしまう外飼いの犬も、過去の災害時には数多くいました。建物の柱や土台、屋根瓦などを点検し、老朽化しているものは補強しておきましょう。また、ブロック塀や石塀などは、基準どおりの鉄筋が入っているのか、転倒防止の控壁(補強)を設けているのかなど、施工上の欠陥も含めて事前によく点検しておきます。特に昭和56年(1981年)以前に建てられた建物は、古い耐震基準で建てられているため、倒壊する危険度が高くなります。地方自治体によっては耐震診断を無料サービスや、診断費用の補助を設けているところもありますので、自分が所属する地方公共団体に問い合わせてみましょう。
家や塀の点検ポイント
  • 塀の倒壊は外飼い犬にとって命取り
  • 老朽化した柱、土台、屋根瓦などは交換や補強
  • 欠陥工事がないかどうかチェック
  • 昭和56年以前の建築物は特に要注意!
  • 耐震診断は自治体による補助があることも

家族との連絡方法

 災害時の連絡方法を家族間で統一しておきましょう。大地震の時は交通機関がとまり、電話もかかりにくくなることが想定されます。あらかじめ集合場所を決めたり、遠く離れた親戚や知人の家を連絡先にしておいたりするルールを作っておきましょう。小学生や園児が家族にいる場合は、それぞれの学校や幼稚園にどんな方法をとるのか確認して、お子さんにも話しておきましょう。

NHKの安否情報放送

 大規模災害が発生した場合には、NHK教育テレビ・FM放送などで「個人の安否」や「避難所ごとの避難者の氏名や住所」などを知らせる安否情報放送を行います。安否情報放送を実施する時には、テレビ・ラジオの放送を通じて、受け付け電話番号と、問い合わせ対応の電話番号・インターネットアドレス等が告知されますので、メモしておきます。

災害伝言ダイヤル

 災害時には被災地への電話が集中してつながりにくくなるため、NTTでは災害用伝言ダイヤルを用意しています。被災地にいる人が専用番号「171」に電話し、音声の案内に従って自宅などの電話番号を入力すると、一定時間メッセージを録音できます。録音されたメッセージが保存されている48時間以内に、別の人が「171」に電話し、同じ電話番号などを入力するとメッセージを聞くことができるという仕組みです。「災害用伝言ダイヤル」はNTTが災害時に限って運用します。 NTT東日本・災害用伝言ダイヤル(171)

地震が来たときの正しい行動

 以下では普段住んでいる住居内で地震が来たときの正しい行動の仕方、および住居外で遭遇した場合について列挙していきます。事前にシミュレーションしておくと、いざというときパニックを起こさないで済みます。

住居内で地震に遭遇したときの行動

 まずは普段暮らしている住居内で地震が発生したときの行動です。事前に避難訓練等を通じてシミュレーションしておくのが理想です。

地震が来た直後

 グラッときたらまずは身の安全を確保することを優先します。ペットを抱いて机やテーブルなど、耐久性のある家具の下にすばやくもぐりこみましょう。地震の揺れは通常1分程度で沈静化しますので、揺れが収まったタイミングでガスの元栓を締め、電気器具のプラグを抜き、ガス器具やストーブなどを素早く消します。揺れが大きい時に火を消しに行くと、コンロの上のやかん等が滑り出して大変危険ですので、揺れが収まるまで我慢するようにします。
地震時のガスと電気  都市ガスやLPガスには、震度5弱以上の揺れを感知すると自動的にガスの供給を遮断する装置が取り付けてあります。この装置が働いたあと、再びガスを使う時は、説明書に従って装置を操作します。
 また、停電中であってもブレーカーのスイッチは切るようにします。これは、停電が復旧して電気が流れると、断線していた箇所から漏電したり、使用途中だった電気器具の過熱が原因で火災になるおそれがあるためです。

もしも火事が発生したら

 もし出火したら消火器等で初期消火に努めると同時に、「火事だ!」などと大声で近所に声を掛け、消防車を呼んでもらいます。ただし、炎が天井に到達したらすばやく初期消火をあきらめ逃げるようにします。炎そのものよりも煙と一酸化炭素のほうが怖いので、逃げるときは濡らしたハンカチを口と鼻に当てるなどして、這(は)うようにして地面に近い場所を移動します。これは一酸化炭素が空気よりも軽いためです。

出入口の確保

 地震が大きい場合、建物自体がゆがむことで室内ドアや玄関のドアも連動してゆがみ、開きにくくなることがあります。また倒れた家具などで出口がふさがれたりすることもあるでしょう。割れたガラス片などで足の裏を切ってしまうことを予防するためスリッパや靴を履いて足を防護し、大きな揺れが収まったタイミングで出入り口を確保します。

非常持ち出し袋とペットを手元へ

 出入り口を確保したら、あらかじめ用意しておいた非常持ち出し袋とペットを手元に確保します。建物が倒壊する危険性がある場合や、地方自治体からの避難放送やエリアメール(携帯電話に送られてくる避難指示のメール)があった場合などは、速やかにペットを連れて屋外に避難しましょう。

住居以外で地震に遭遇したときの行動

 以下では住居以外で地震に遭遇した際の基本的な行動規範を列挙していきます。ペットとの同行避難とは直接関係ありませんが、知っていて損になる情報ではありませんのでご一読ください。

市街地で地震に遭遇したとき

 市街地では、地震で壊れた看板や窓ガラスの破片、屋根瓦、エアコンの室外機、ガーデニング用の植木鉢などが落ちてくる危険がありますので、頭をカバンなどで守り、すみやかに建物から離れるようにします。また、倒れ掛かってくる危険があるブロック塀や自動販売機、および感電の危険がある断線して垂れ下がった電線からも離れましょう。遮蔽物のないなるべく広い公園などに速やかに避難するのが正解です。

エレベーターで地震に遭遇したとき

 エレベーター内で地震に遭遇した場合は、非常ボタンと各階のボタンを全部押し、最初に止まった階ですみやかに降り、あとは階段で避難します。
 エレベーターが階と階の間で停止してしまった場合は、無理に脱出しようとするのではなく、備え付けのインターフォンで担当者に連絡を取り、適宜指示に従うようにします。また地震の揺れがおさまっても、エレベーターはなるべく使わない方が賢明です。これは地震の影響による故障や余震によって再びエレベーターが止まってしまい、中に閉じ込められる危険性があるからです。

車の中で地震に遭遇したとき

 車の中で地震に遭遇したときは、地震の揺れでハンドルを取られたり、道路にできたヒビにタイヤを取られないようにするため、車を道路の左側に止め、交差点や道路の中央側を緊急車両のために空けるようにします。また車から避難する時はエンジンを切り、ドアは施錠せず、車のキーもつけたままにしておきます。

高速道路で地震に遭遇したとき

 高速道路で車を運転中に地震に遭遇した場合は、ハザードランプを点灯させて前後の車に注意を喚起(かんき)しつつ、道路左側の路肩に車を停止させます。道路の中央は緊急車両用にあけておき、高速道路の左脇に一定間隔で設けられている避難口や非常電話を確認し、揺れが収まるのを待ちます。万が一事故や火災、道路の異常を見つけたら非常電話で道路管理者に通報しましょう。身に危険を感じた場合は非常口から地上に脱出します。

公共の乗り物内で地震に遭遇したとき

 強い揺れを感知すると電車や地下鉄は緊急停車します。座席に座っている場合には、低い姿勢をとって頭部をカバンなどで保護し、立っている場合には手すりやつり革をしっかり握って転倒しないように気をつけましょう。電車でも地下鉄でも、停車後は乗務員の指示に従うようにします。特に地下鉄によっては高圧電線が線路脇に設置されているので、勝手に線路に飛び降りるのは大変危険です。

帰宅困難に備える

 住居以外で地震に遭遇した場合、交通機関がストップして、勤め先や学校などの外出先から自宅まで徒歩で帰ることを余儀なくされます。この状態を帰宅困難(きたくこんなん)と表現しますが、帰宅困難に備えて自宅までの地図を出先に備えておくと無難です。また、災害時には情報提供などを行う帰宅困難者支援施設として、学校や公共施設、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなどが指定されるケースが増えてきていますので、これらの施設も併せて確認しておきましょう。地震被害によって道路や橋が寸断されている恐れもありますので、自宅までのルートは複数考えておくと安心です。また災害時は携帯電話の回線がパンクしていることもありますので、移動時の情報収集源としてポケットラジオや携帯テレビを常備しておくのもよいでしょう。
 以下は、帰宅困難な状況に備えて用意しておくべき必要事項です。
帰宅困難時の必要事項
  • 帰宅困難者支援施設の確認
  • 自宅までの地図と帰宅ルート
  • ポケットラジオや携帯テレビ
  • 歩きやすい靴
  • チョコやキャラメルなど簡易食料、飲料水
  • 夜間の懐中電灯
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