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新型コロナの感染率は人とペット犬で連動する

 米国内で新型コロナ感染者と同居しているペット犬猫の血清陽性率を長期的に調べたところ、感染率のピークが連動していることが明らかになりました。

人とペットの新型コロナ陽性率

 調査を行ったのはVCAアニマルホスピタルを中心としたチーム。2021年9月23日~2022年5月11日の期間、ダイレクトメールやSNSアカウントを通じてVCA所属の医療関係者にコンタクトを取り、「犬もしくは猫を少なくとも1頭飼育していること」「世帯内に少なくとも新型コロナ陽性反応者が1人いること」を条件として、同居しているペットの血清陽性率を調査しました。

調査対象

 調査対象となったのは全米44州およびワシントンDCにある合計681世帯から集められた犬747頭、猫253頭の血液サンプル。血液採取に当たっては、同居人の症状が回復してから少なくとも2週間が経過した時点で全血サンプルが採取されました。また血清はELISAを用いたSARS-CoV-2特異的抗体(対スパイクタンパク/対ヌクレオカプシド)検査を通して陽性率が調査されました。

調査結果

 犬たちの基本属性はメス370+オス377(89%が不妊手術済み)、年齢中央値6歳(5ヶ月齢~18歳)。血清陽性率は33%で抗体の種類別に見たときの陽性率は以下です。
IgG陽性率=30%
  • 抗スパイク抗体=27%
  • 抗ヌクレオカプシド抗体=11%
 抗体が確認されるまでの待機期間は感染者との接触から16~828日と幅があり、抗スパイク抗体177日>カプシド72日という統計格差が認められました。
IgM陽性率=9%
  • 抗スパイク=6%
  • 抗ヌクレオカプシド=7%
 抗体が確認されるまでの待機期間は感染者との接触から17~812日と幅があり、待機期間と抗体の種類に相関は認められませんでした。
外出状況
  • 屋外アクセス=81%
  • リード散歩=50%
  • 制限区画=46%
  • 受診=10%
  • ドッグラン=5%
  • グルーマー・ホテル=2%
人との接触
  • 膝乗り=90%
  • 顔や手を舐める=85%
  • 感染者のキスを受ける=72%
  • 添い寝=71%
 感染者との同室時間が1日12時間以上が65%と過半数を占め、同室時間が2時間以下の場合血清陽性率のオッズ比が76%低下する(=OR0.74)という関連性が認められました。世帯内陽性患者数と陽性率に相関は認められませんでしたが、年齢が1歳上がるごとに血清陽性率のオッズが5%増加する(=OR1.05)ことが判明しました。
The Transmission of SARS-CoV-2 from COVID-19-Diagnosed People to Their Pet Dogs and Cats in a Multi-Year Surveillance Project
Anne K. Kimmerlein, Talon S. McKee , Philip J. Bergman et al., Viruses 2024, DOI:10.3390/v16071157

人とペットの感染率連動現象

 新型コロナ患者と犬猫が接触したと考えられる2020年1月1日~2022年3月10日の期間、月間ベースでみた人の感染者数と犬猫の血清陽性率との間には統計的に有意なレベルの関連性が認められました。最たる例は感染者推移のピークで、「2020~2021年の冬」「2021年の秋」「2021~2022年の冬」という明白な多峰性パターンを示しました。 新型コロナの月間患者数と犬猫の血清陽性率対比グラフ  先行調査では、新型コロナ陽性患者と同居している犬の陽性率が11~40%と報告されています。今回の調査結果も「33%」とちょうど中間域に落ち着きました。犬たちはいったいどこでウイルスをもらってしまったのでしょうか?
 犬の屋外アクセス率が最大81%に対し猫のそれは13%と大きな差があります。にもかかわらず血清陽性率に関しては犬33%:猫27%とかなり近い値です。この事実から、コロナウイルスの感染経路が屋外ではなく屋内、つまり飼い主との接触にある可能性が強く示唆されます。 ペット犬の頬にキスをする男性  人との接触パターンを具体的に見てみると、膝乗り(90%)、顔や手を舐める(85%)、感染者のキスを受ける(72%)、添い寝する(71%)などいわゆる「濃厚接触者」に相当する密なボディコンタクトが認められました。人に対しては気を使うけれども、相手がペットになると感染予防の意識が薄らいでしまうのかもしれません。
感染の有無と症状との間に明白な関連性は認められませんでした。しかし感染中に体外に排出された体液(唾液・便)が人に対する病巣になってしまう可能性を否定できません。微熱など少しでも感染の徴候が見られたら、最悪を想定してペットとの密な接触は控えたほうが良いでしょう。