犬の胸骨異常保有率
調査を行ったのはオランダにあるユトレヒト大学獣医学部のチーム。犬における胸骨異常の保有率を調べるため、大学付属のクリニックを受診した患犬を対象とした大規模なスクリーニングを行いました。
調査対象
調査対象となったのは2019年1月から2021年1月までの期間にクリニックを受診し、胸部エックス線画像がデータベースに保管された合計777頭の犬たち。「胸骨に関連した症状で受診していない」ことが条件とされました。
犬たちの平均年齢は7.3歳、品種はバラバラで短頭種が114頭含まれていました。また去勢オス188頭、未去勢オス212頭、避妊メス252頭、未避妊メス125頭という内訳でした。
犬たちの平均年齢は7.3歳、品種はバラバラで短頭種が114頭含まれていました。また去勢オス188頭、未去勢オス212頭、避妊メス252頭、未避妊メス125頭という内訳でした。
調査結果
胸骨を構成している骨(胸骨片)の正常数を「8」としてスクリーニングしたところ、何らかの異常が24%(189頭)という高い割合で見つかったといいます。具体的な内訳は以下です。「真空現象」はエックス線像で骨間にガス含有像が認められる状態、「漏斗胸」は胸骨が体腔内にめり込んだ状態、「鳩胸」は逆に外側に突き出た状態を指します。
Dirk H. N. van den Broek, Siemone C. Vester, Mauricio Tobon Restrepo, Stefanie Veraa, Animals 2023, 13(7), 1233, DOI:10.3390/ani13071233
X線で見た胸骨異常
- 退行性変性・圧潰=13
・真空現象=13
・硬化症=9
・偏位=5 - 数の異常・胸骨片が9個=16
・胸骨片が7個以下=46 - 形状異常・漏斗胸=6
・鳩胸=18 - 外傷性病変・偏位=5
・圧潰=8
・骨折=2 - 病的変性・骨溶解=1
・骨折=1
Dirk H. N. van den Broek, Siemone C. Vester, Mauricio Tobon Restrepo, Stefanie Veraa, Animals 2023, 13(7), 1233, DOI:10.3390/ani13071233
注意すべき胸骨の異常は?
当調査ではおよそ4頭に1頭という高い割合で胸骨の異常が認められました。犬たちは「胸骨に関連した症状を示していない」ことを条件に選別されていましたので、少なくとも飼い主が認識できるレベルの大きな悪影響が即座に出ることはないのかもしれません。とは言え、心配な項目もいくつかあります。
先天異常
生まれつき持っている先天的な異常には数の異常、漏斗胸、鳩胸があります。
胸骨片の多少が健康被害を引き起こす可能性はちょっと考えづらいですが、漏斗胸や鳩胸といった胸郭全体の変形を伴う異常の場合は、肋骨の上下動に影響が出ますので呼吸機能への悪影響が懸念されます。
例えば運動や散歩を嫌がる、運動は好きだけれどもすぐバテるなどの徴候が見られる場合は、肋骨の形状異常を鑑別診断リストに加えておいた方が良いかもしれません。関節炎と誤診されて不要な投薬を指示される事態を防ぐことができるでしょう。
胸骨片の多少が健康被害を引き起こす可能性はちょっと考えづらいですが、漏斗胸や鳩胸といった胸郭全体の変形を伴う異常の場合は、肋骨の上下動に影響が出ますので呼吸機能への悪影響が懸念されます。
例えば運動や散歩を嫌がる、運動は好きだけれどもすぐバテるなどの徴候が見られる場合は、肋骨の形状異常を鑑別診断リストに加えておいた方が良いかもしれません。関節炎と誤診されて不要な投薬を指示される事態を防ぐことができるでしょう。
後天異常
生後に発生する後天的な異常には退行性変性、外傷性病変、病的変性があります。
退行性変性(骨新生・骨棘 etc)や病的変性(圧潰 etc)は通常、長い時間をかけて徐々に進行するものですので、飼い主が異常に気づくのは容易ではありません。
一方、外傷性病変は「ある日突然」という形で急に症状が出ますので、比較的気づきやすいと思われます。例えば「急に胸元を触られるのを嫌がるようになった」とか「急に伏せができなくなった」とか「急にハーネスを拒絶するようになった」などです。
当調査では偏位(脱臼・亜脱臼)にしても骨折にしても、飼い主が気づかないうちに治癒していたケースが多かったようです。胸の中央には胸骨という複数の片からなる骨があり、関節と同じように脱臼や骨折をするという認識があれば、病的な行動の変化にも気づきやすくなるでしょう。
退行性変性(骨新生・骨棘 etc)や病的変性(圧潰 etc)は通常、長い時間をかけて徐々に進行するものですので、飼い主が異常に気づくのは容易ではありません。
一方、外傷性病変は「ある日突然」という形で急に症状が出ますので、比較的気づきやすいと思われます。例えば「急に胸元を触られるのを嫌がるようになった」とか「急に伏せができなくなった」とか「急にハーネスを拒絶するようになった」などです。
当調査では偏位(脱臼・亜脱臼)にしても骨折にしても、飼い主が気づかないうちに治癒していたケースが多かったようです。胸の中央には胸骨という複数の片からなる骨があり、関節と同じように脱臼や骨折をするという認識があれば、病的な行動の変化にも気づきやすくなるでしょう。