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犬の食事は何回に分けるのが理想?~1日1回食が健康と認知機能の維持に関与か

 犬の食事は1日何回に分けるのが理想なのでしょうか?1万頭を超える犬たちを対象とした大規模な調査により、「1日1回」が健康と認知機能の維持に関与している可能性が示されました。

犬の食事回数と健康の関係

 調査を行ったのはアリゾナ大学を中心としたチーム。「Dog Aging Project(DAP)」のデータを元にし、1日の食事回数が犬の身体的健康と認知機能に及ぼす影響を分析しました。
Dog Aging Project
Dog Aging Project(DAP)は犬の加齢と健康との関係性を長期的かつ前向きにモニタリングするプログラム。参加している飼い主は年に1度の頻度でペット犬の基本属性(住空間・食習慣・運動習慣・健康状態など)を報告する。当調査における除外条件は未手術の犬(全体の5%未満)および食事内容がはっきりしない犬とされた。
 当調査では2019年12月~2020年12月までの期間、オンライン調査に回答した飼い主のデータが解析に回され、食事回数は以下のような内訳となりました。
1日の食事回数
  • 1回=8.2%(860)
  • 2回=74.3%(7,779)
  • 3回以上=7.5%(789)
  • 自由摂食=10.0%(1,046)

HLES

 「Health and Life Experience Survey(HLES)」は犬と飼い主の属性、犬の行動、食事、投薬歴、健康状態に関する調査。犬の対象年齢は1~18歳とされ、最終的にDAPから24,238頭分のデータが解析に回されました。
 健康面に関し、先天的な原因を除外した不調の出現頻度を調べたところ、すべての分野で1日1回食の犬におけるリスクの低下が見られたといいます。9分野中5分野(*あり)は統計的に有意なレベル、残りの4分野(*なし)は低下傾向(※統計的に有意ではない)というものでした。以下の数字は「オッズ比」(OR)で、標準の起こりやすさを「1」としたときどの程度起こりやすいかを相対的に示したものです。数字が1よりも小さければリスクが小さいことを意味しています。
1日1回食と疾患リスク
  • 肝臓・膵臓=0.41*
  • 消化管=0.65*
  • 腎臓・泌尿=0.71*
  • 整形外科=0.78*
  • 歯科・口腔=0.84*
  • 心臓=0.86
  • がん=0.90
  • 神経=0.90
  • 皮膚=0.94

CSLB

 「Canine Social and Learned Behavior Survey(CSLB)」は犬の認知症の徴候を16(症状軽い)~80(症状重い)までの間で点数化することで認知機能を客観化する調査。犬の対象年齢は6~18歳とされ、最終的にDAPから10,474頭分のデータが解析に回されました。
 CSLBスコアに関し、1日1回食の犬たちは2回以上の犬たちに比べ、平均して0.62ポイント統計的に有意なレベルで低いことが明らかになりました。これは年齢、性別、体重、犬種、認知活動、身体活動、オメガ脂肪酸サプリといった因子による偶発的な影響を度外視しても変わらなかったとも。 食事回数と犬の認知機能の経時変化グラフ Once-daily feeding is associated with better health in companion dogs: results from the Dog Aging Project
GeroScience 2022, Emily E. Bray, Zihan Zheng et al., PMCID: PMC9213604, DOI:10.1007/s11357-022-00575-7

犬は1日1回食がベスト?

 マウスを対象とした実験では時間制限食により寿命が11%延びたとか、カロリー制限と断続的絶食が認知機能(記憶・空間認識)の維持や増進につながるとの報告があります。またラボで管理されているラブラドールレトリバーを対象とした長期調査では、カロリー制限が寿命延長と健康維持に寄与する可能性が示されています出典資料:Lawler, 2008)
 一方、人間を対象とした調査では時間制限やカロリー制限による体組成や心血管系リスクの改善は軽微だったとか、グルコースの恒常性維持に関しては時間制限が逆に悪影響を及ぼすといった報告があります。また断食が高齢者の記憶に対してポジティブな影響を及ぼすという調査がある一方、認知機能への影響はなかったとする調査も混在しており、プラスなのかマイナスなのかがはっきりしません。
 「Dog Aging Project(DAP)」のデータを元にした今回の調査によりチームは、条件付きではあるものの「1日1回食」が犬の健康と認知機能の維持に関係している可能性が高いとの結論に至りました。条件には以下のような項目が含まれており、安直な一般化は早計であるとの但し書きが添えられています。
解釈上の注意
  • 食事内容が不明
  • 摂取カロリー数(食事・おやつ)が不明
  • 示されたのは関連性であり因果関係ではない
  • 関連因子が食事回数なのか摂取カロリーなのかが不明
  • 犬の食習慣が一定期間全く不変であることを前提としている
  • 健康状態に合わせて食事回数を途中で変えた可能性あり