トップ2019年・犬ニュース一覧10月の犬ニュース10月14日

ペットショップで売られている犬は高い割合で病原体を保有している

 ペットショップで売られている犬は一体どの程度の割合で病原体を保有しているのでしょうか?東京都内54施設を対象とした調査により、「健康優良児」という宣伝文句は大してあてにならないことが明らかになりました。

ペットショップにいる犬の病原体保有率

 調査を行ったのは東京都福祉保健局健康安全部環境保健衛生課。2011年6月から2015年10月の期間、東京都内において第一種動物取扱「販売」の登録を行っている、いわゆるペットショップを対象とし、施設内部で保管・飼養されている犬が一体どのくらいの割合で病原体を保有しているのかを検証しました。
 合計54施設の364頭から糞便サンプル355、被毛サンプル361を採取し、犬において頻繁に見られる病原体の保有率を調べたところ以下のような割合になったといいます。
ペットショップにおける病原体保有率・犬編
東京都内のペットショップで保管・飼養されている犬における主要病原体の保有率
  • ジアルジア=32.7%
  • 病原大腸菌=7.0%
  • カンピロバクター=1.4%
  • 皮膚糸状菌=1.1%
  • 回虫卵=0.3%
  • サルモネラ=0.0%
  • Q熱コクシエラ=0.0%
  • クラミジア=0.0%
東京都内のペットショップで飼育されている犬猫における動物由来感染症病原体保有状況調査
日獣会誌72, 495~499(2019)

「健康優良児」は当てにならない

 32.7%(116検体)という異常な高さで検出されたジアルジアは全て「Giardia intestinalis」で、遺伝子型はイヌ科動物に特有のAssemblageC(C型)が44検体、AssemblageD(D型)が72検体という内訳でした。ペットショップで買ったばかりの子犬が自宅で下痢をしたという場合、環境の変化に伴うストレス(ニューオーナーシンドローム)のほか、そもそも病原体を腸管内に保有していたという可能性も否定できません。
 7.0%(25検体)で検出された病原大腸菌に関しては毒素原性大腸菌(ETEC)が16検体、腸管病原性大腸菌(EPEC)が9検体という内訳でした。血清型の判別ができなかったことから、人に対する病原性を明らかにするためにはさらなる調査が必要だとしています。子犬の糞便処理を行うのは飼い主ですので無関係というわけではありません。
 1.1%(4検体)から検出された皮膚糸状菌(Microsporum属)はいわゆる水虫菌(白癬菌)の一種です。種特異性が強く人には感染しないとされていますが当然例外もあります。頭部に犬小胞子菌(Microsporum canis)が感染して発症する頭部白癬は、男女を問わず脱毛が起こりますので人獣共通感染症とみなしたほうが現実的でしょう。
 総じて「健康優良児」と称して販売されている子犬たちは必ずしもそうではないという結果となりました。当調査における感染ルートは不明でしたが、劣悪な環境下で繁殖を繰り返す「パピーミル」→強いストレスがかかり免疫力が低下するオークション会場→しっかりとした健康チェックを行わないペットショップというルートを通じて病原体が蔓延する構図は容易に想像ができます。
繁殖業者からペットショップに至るまで、子犬たちがどのようなルートをたどるかに関してはの「日本のペット産業」をご参照ください。病原体を保有した子犬が売られている理由がわかるはずです。