ミニチュアシュナウザーの疫学調査
調査を行ったのは英国王立獣医大学のチーム。「VetCompass」と呼ばれる疫学調査プログラムに参加している英国内の一次診療施設に協力を仰ぎ、ミニチュアシュナウザーに多く発症する疾患が何であるかを検証しました。
調査対象となったのは2013年(2013年1月1日~12月31日)の期間中、304の診療施設を受診したミニチュアシュナウザー合計3,857頭のデータ。そのうちオス犬は50.2%、メス犬は49.2%です。医療データから疾患名を抜き出して有病率(調査の時点で患っていたケース+調査中に発覚したケース)を調べていったところ、以下のような結果になったといいます。
Miniature Schnauzers under primary veterinary care in the UK in 2013: demography, mortality and disorders
O’Neill et al. Canine Genetics and Epidemiology 2019, doi.org/10.1186/s40575-019-0069-0
O’Neill et al. Canine Genetics and Epidemiology 2019, doi.org/10.1186/s40575-019-0069-0
ミニチュアシュナウザーに多い病気
データ解析のためランダムで抽出された1,972頭の医療記録を調べた所、68.2%(1,345頭)はオスメスともに平均1つの疾患を抱えていたといいます。
ミニチュアシュナウザーに多い病気【疾患大分類編】
- 歯科疾患=19.2%
- 腸疾患=13.7%
- 皮膚疾患=12.7%
- 耳・聴覚疾患=10.0%
ミニチュアシュナウザーに多い病気【個別疾患編】
- 歯周病=17.4%
- 肥満=8.3%
- 肛門嚢嵌頓=5.8%
- 嘔吐=5.1%
- 外耳炎=5.0%
ミニチュアシュナウザーに多い病気【オス | メス】
オス犬とメス犬の有病率を比較した所、いくつかの疾患において統計的な性差が認められました。具体的には、メス犬で多いのが下記グラフ中赤い枠でくくった「歯周病」「肥満」「心雑音」、オス犬で多いのが青い枠でくくった「下痢」「爪の外傷」です。
- 歯周病♀=15.4% | 19.6%
- 肥満♀=6.4% | 10.2%
- 肛門嚢嵌頓=6.4% | 5.2%
- 嘔吐=5.4% | 4.8%
- 外耳炎=4.9% | 5.2%
- 耳疾患=5.5% | 4.4%
- 心雑音♀=2.9% | 5.5%
- 下痢♂=4.6% | 2.3%
- 皮膚腫瘍=3.7% | 2.8%
- 問題行動=2.6% | 2.7%
- 結膜炎=2.2% | 2.3%
- 消化管炎=2.5% | 1.5%
- 足皮膚炎=1.8% | 2.1%
- 爪の伸び過ぎ=2.0% | 1.7%
- かゆみ=1.6% | 2.1%
- ダニ=1.7% | 1.8%
- 皮膚疾患=1.5% | 2.0%
- 脂肪腫=1.8% | 1.6%
- 臍ヘルニア=1.1% | 2.0%
- アトピー性皮膚炎=1.8% | 1.3%
- 膿皮症=1.7% | 1.0%
- 爪の外傷♂=1.9% | 0.6%
- 被毛不健全=1.6% | 0.9%
- 荷重不全=1.6% | 1.0%
- 乳歯遺残=1.5% | 1.0%
ミニチュアシュナウザーに多い死亡原因
調査期間中、86頭の犬で死亡が確認されました。死亡時の平均年齢はオスもメスもピッタリ11.6歳だったといいます。死亡原因が判明した75頭を調べた所、以下のような項目が浮上してきました。
ミニチュアシュナウザーに多い死亡原因
- がん=14.7%
- 虚脱=13.3%
- 腫瘍=10.7%
- 脳疾患=10.7%
日本のミニチュアシュナウザーは?
アニコム損保が公開している「📖家庭どうぶつ白書」の2018年度版では、ミニチュアシュナウザーに多い疾患が報告されています。こちらの元データはペット保険に加入している犬(オス7,402+メス7,102)からの医療費請求明細です。オス犬は青、メス犬は赤い棒グラフで示してあります。
イギリスの元データが「一次診療施設を受診した犬」だったのに対し、日本の元データは「保険に加入している犬」ですので単純な比較はできません。例えば保険に加入している犬の飼い主は健康に対する意識が高く、日常的に犬の身体チェックをしているので異変に気づきやすいということはあるでしょう。こうした意識レベルの差が、疾患有病率の差として現れることは十分考えられることです。
保険請求の約30%を占める「皮膚疾患」の細かい内容まではわかりませんが、およそ3頭に1頭が皮膚に異常を抱えているというのはかなりの数字です。
日本のミニチュアシュナウザーに多い病気
- 循環器=5.2% | 5.6%
- 呼吸器=2.7% | 3.0%
- 消化器=25.4% | 24.1%
- 肝胆膵=9.3% | 10.8%
- 泌尿器=9.6% | 15.5%
- 生殖器=1.9% | 3.2%
- 神経=4.2% | 3.2%
- 眼=8.3% | 8.6%
- 耳=15.3% | 16.2%
- 歯・口腔=5.7% | 5.6%
- 筋骨格=8.0% | 6.7%
- 皮膚=30.5% | 29.0%
- 血液・免疫=1.5% | 1.7%
- 内分泌=3.6% | 3.1%
- 全身性=11.5% | 12.1%
- 腫瘍=9.0% | 8.9%
イギリスの元データが「一次診療施設を受診した犬」だったのに対し、日本の元データは「保険に加入している犬」ですので単純な比較はできません。例えば保険に加入している犬の飼い主は健康に対する意識が高く、日常的に犬の身体チェックをしているので異変に気づきやすいということはあるでしょう。こうした意識レベルの差が、疾患有病率の差として現れることは十分考えられることです。
保険請求の約30%を占める「皮膚疾患」の細かい内容まではわかりませんが、およそ3頭に1頭が皮膚に異常を抱えているというのはかなりの数字です。