詳細
調査を行ったのは北海道立衛生研究所のチーム。2013年9月から2017年4月の期間、札幌市内にある動物保護施設に収容された犬156頭(126頭は屋外捕獲 | 30頭は飼育放棄)を対象とし、条虫の一種である「エキノコックス」(Echinococcus multilocularis)の感染率調査を行いました。その結果、合計3頭(1.9%)で陽性反応が出たと言います。うち2頭は屋外を放浪していた迷子犬や野良犬でしたが、残りの1頭は飼い主によって飼育放棄されたペット犬でした。
こうした結果から調査チームは、たとえ短時間でも屋外を放浪していた犬はネズミなどの中間宿主を摂食することによりエキノコックスに感染している危険性があると指摘しています。また家庭犬であっても都市部であっても例外ではないとも。犬の保護施設においては気の緩みから予防措置がおろそかになっていることが多々あるため、北海道のような流行エリアにおいては駆虫薬の一種である「プラジカンテル」の投与を保護施設内で標準化する必要があると指摘しています。 Echinococcus multilocularis Surveillance Using Copro-DNA and Egg Examination of Shelter Dogs from an Endemic Area in Hokkaido, Japan
Takao Irie et al., VECTOR-BORNE AND ZOONOTIC DISEASES, DOI: 10.1089/vbz.2017.2245
こうした結果から調査チームは、たとえ短時間でも屋外を放浪していた犬はネズミなどの中間宿主を摂食することによりエキノコックスに感染している危険性があると指摘しています。また家庭犬であっても都市部であっても例外ではないとも。犬の保護施設においては気の緩みから予防措置がおろそかになっていることが多々あるため、北海道のような流行エリアにおいては駆虫薬の一種である「プラジカンテル」の投与を保護施設内で標準化する必要があると指摘しています。 Echinococcus multilocularis Surveillance Using Copro-DNA and Egg Examination of Shelter Dogs from an Endemic Area in Hokkaido, Japan
Takao Irie et al., VECTOR-BORNE AND ZOONOTIC DISEASES, DOI: 10.1089/vbz.2017.2245
解説
エキノコックスはテニア科エキノコックス属に属する寄生虫の総称。キタキツネ、タヌキ、イヌといったイヌ科動物を終宿主とし、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ネズミといった多様な哺乳動物を中間宿主として生活環を形成します。基本情報は以下です。
国立感染症研究所
エキノコックス症
- 原因条虫の一種である「エキノコックス」およびその虫卵。
- 症状犬においてはほとんど無症状。人間に感染した場合は10~20年という極めて長い潜伏期間をおいた後で発症する。多包性エキノコックス症では約98%が肝臓に病巣を形成し、肝臓腫大、右上部の腹痛、黄疸、腹水といった肝症状のほか、咳、血痰、胸痛、発熱といった肺症状を引き起こす。
- 感染経路キツネ、イヌなどの終宿主には虫卵を含んだ中間宿主を経口摂取することで感染する。人間などの中間宿主には、成虫に感染しているキツネ、イヌなどの糞便を何らかのはずみで口に入れることに感染してしまうと考えられている。
- 治療第一選択肢は病巣部の外科的切除。何らかの理由で手術ができない場合はアルベンダゾールによる化学療法。
- 予防犬においてはプラジカンテル(praziquantel)の投与。人間においては虫卵を保有している可能性がある動物との接触を避けること。手洗いの励行。