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犬の体におけるダニの寄生場所とリスクファクター(イタリア編)

 千頭を超える犬を対象とした調査により、ダニに寄生されやすい場所や寄生リスクを高める因子が明らかになりました(2018.7.25/イタリア)。

詳細

 調査を行ったのは、イタリア・ナポリ大学のチーム。2016年2月から2017年9月の期間、イタリア国内64の地方にある153の動物病院に協力を仰ぎ、犬の体に寄生しているダニの数や種類を網羅的に調査しました。その結果、合計3,026頭の犬のうち1,383頭(45.7%)で少なくとも1匹のダニ寄生が確認されたといいます。これらの犬から回収された合計2,439匹のダニを14種類に分類したところ、以下のような内訳になったといいます。
犬に寄生するダニの種類(多い順)
  • クリイロコイタマダニ(R. sanguineus)=63.6%
  • マダニ(Ixodes ricinus)=30.6%
  • タカサゴウサギマダニ(Ixodes hexagonus)=5.6%
 寄生のリスクファクターとしては「長毛」「屋外飼育」「居住地が田舎や森林」、寄生場所は頭部(37.4%)、頚部(28.8%)、マズル(15.5%)、背中(15.3%)という内訳でした。ある特定の種類がある特定の部位を好むという傾向はほとんど見られませんでしたが、コイタマダニ属だけは指の間を好むという傾向が見出され、マダニ属の寄生率が0.2%だったのに対しコイタマダニ属の寄生率は10.8%という極めて高い値を示しました。
A national survey of Ixodidae ticks on privately owned dogs in Italy
Maurelli et al. Parasites & Vectors (2018) 11:420, https://doi.org/10.1186/s13071-018-2994-2

解説

 ダニは動物の血液を吸い取ることで悪名高く、蚊、ヒル、オオサシガメ、ナンキンムシ、ノミを凌ぐほどです。血液を吸い取るのみならず様々な病原菌を媒介することでも厄介者扱いされています。近年では「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)を引き起こすSFTSウイルスを保有していることで話題になったことは記憶に新しいでしょう。またヨーロッパ全体では、ダニの媒介によるライム病と診断される患者数が年間で8万5,000人に達するとされています。犬の健康のみならず、飼い主の健康を守るためにもダニの駆除を徹底することは重要です。 犬に寄生するダニで多いのはクリイロコイタマダニとマダニ  犬の体に寄生していてダニの数は1~44匹と幅広く中央値は1匹でした。幼虫58匹(2.4%)、幼体325匹(13.3%)、成虫2,056匹(84.3% | メス1,373+オス683)と成虫が圧倒的多数を占めていましたが、幼虫や幼体は目視で見つけるのが難しいため、見落とされた可能性も否定できません。24頭では複数種の寄生が確認されました。
 季節性に関しては、全体的に見ると4~8月に発見されることが多く、逆に10~2月は少なくなる傾向が確認されました。ただしコイタマダニ属(春から夏にかけてピーク)とマダニ属(明白のピークなし)は通年性だったそうです。通年性の2種類に関しては全体の9割を超えているため、ダニの駆除も通年行うことが望ましいと推奨されています。
 投薬治療が行われた2,180頭(72.0%)を調べたところ、殺ダニ薬の経口投与が最も効果が高く90.1%でダニの駆除が確認されました。一方、ダニよけ首輪は69.18%、スポット薬は53.37%という低い値にとどまっています。コイタマダニ属は指の間に好んで寄生する傾向があることから、首輪やスポット薬よりも全身に対する効果が高い経口薬の方が高い駆除効果を示したのかもしれません。また飼い主の中に殺ダニ効果を持たない薬を投与しているものがいた理由は、市販薬を適当に買ってそのまま投与していたからだと推測されています。 犬の体におけるコイタマダニ属の生息分布図 犬の体におけるマダニ属の生息分布図  過去に行われた他の調査と同様、頭部から頚部にかけてのエリアで最も高い寄生率が確認されました。犬が自分でグルーミングしづらい、被毛が薄い、匂いを発散しやすい、体温が高いなどが原因と考えられています。散歩から帰ったら必ずこのエリアをチェックするようにしましょう。特に長毛種の場合は毛の中にダニが沈み込んで見えにくくなっていますので、ノミ取りコームなどを用いて入念に調べてあげるようにします。また屋外飼育がリスクファクターになっていますので、室内飼育に切り替えてあげれば感染リスクを減らすことができるでしょう。その他の予防法に関しては以下のページもご参照ください。 犬のマダニ症