詳細
調査を行ったのはニューヨークにあるコーネル大学のチーム。トンプキンス郡SPCAとコートランド郡SPCAに収容されたオス犬たち(中央値で3.0歳 | 体重26.3kg | 体高54.0 cm/去勢と未去勢混合)を対象とし、オス犬でよく見られる足上げ放尿(RLU)と体の大きさとの関係性が検証されました。散歩中にオス犬が見せた自発的なRLUを録画し、後ろ足の角度やおしっこの放物線を計測したところ、以下のような関係性が浮かび上がってきたと言います。
B. McGuire, B. Olsen, K. E. Bemis & D. Orantes, Journal of Zoology, doi:10.1111/jzo.12603
体の大きさとRLUの関係性
- 体重が重いほど、おしっこの位置が高くなる
- 足の角度が大きいほど、おしっこの位置が高くなる
- 犬の体高が高いほど、おしっこの位置が高くなる
- 犬の体重が軽いほど、足の角度が大きくなる
- 犬の体高が低いほど、足の角度が大きくなる
B. McGuire, B. Olsen, K. E. Bemis & D. Orantes, Journal of Zoology, doi:10.1111/jzo.12603
解説
外界に自分の匂いを残すセントマーキング(scent marking)は哺乳動物でよく見られる習性です。犬においても「未成熟なオス犬よりも成熟したオス犬」「成熟したメス犬よりも成熟したオス犬」の方が足上げ放尿(RLU)をしやすいと報告されていますので、性的ステータスを伝達するために行われるものと推測されています。
では高い場所におしっこを残すことにどのような意味があるのでしょうか?ヒントとしてはコビトマングースにおける報告があります。オスのコビトマングースはスカンクのように逆立ちをした状態で会陰部の匂いを対象物に残す習性があり、オスであれメスであれ、低い場所より高い場所にある匂いの方を長い時間クンクン調べる傾向があるとのこと(→出典)。
おそらく高い場所にある匂いは、メスからすると「体が大きくて強そうな殿方。是非お付き合いしたいわ」という誘因剤になるのでしょう。一方、オスからすると「体が大きくて強そうなライバルがいるようだ。近づかないようにしよう」という警告になると考えられます。つまり、オスが高い場所に自分の匂いを残すということには、異性を惹きつけると同時に同性を遠ざけるという意味合いがあるのです。 犬の体が小さいほど足を高く上げておしっこ高い場所に残そうとするのは何故なのでしょうか?先のコビトマングースの例をとると、体重が軽いオスほど極端に逆立ちをしてなるべく高い場所に自分の匂いを残そうとするそうです。そして研究者は「自分の体を実際より大きく見せようとするはったり行動」であると解釈しています。もし体が小さな犬の中にも同じ動機があるのだとすると、少々不誠実な感じがしますね。 小型犬に相手をだまそうとする思惑があるのかどうかはわかりませんが、チワワがキャンキャン吠えやすいのも、足を高く上げておしっこをなるべく高い場所に残そうとするのも、ひょっとすると恐怖心の裏返しなのかもしれません。
小型犬と大型犬を比べたとき、小型犬に特有の特質がいくつか観察されています。例えば「小型犬の方が屋外でおしっこを引っ掛ける回数が多い」(McGuire & Bemis, 2017)、「他の犬のうなり声やラブラドールレトリバーに近づこうとしない」(Leaver & Reimchen, 2008)、「足を高く上げておしっこをする」(当調査)などです。こうした特質から見えてくるのが「小型犬は臆病で直接的な交流をあまり好まず、おしっこの匂いを通した間接的な交流の方を好む」という可能性です。体が小さくて力が弱いため、相手と直接対峙する状況を本能的に避けているものと考えられています。
犬の体が小さいほど足を高く上げておしっこを高い場所に残そうとする傾向。考えられる理由をまとめると以下のようになるでしょう。
おそらく高い場所にある匂いは、メスからすると「体が大きくて強そうな殿方。是非お付き合いしたいわ」という誘因剤になるのでしょう。一方、オスからすると「体が大きくて強そうなライバルがいるようだ。近づかないようにしよう」という警告になると考えられます。つまり、オスが高い場所に自分の匂いを残すということには、異性を惹きつけると同時に同性を遠ざけるという意味合いがあるのです。 犬の体が小さいほど足を高く上げておしっこ高い場所に残そうとするのは何故なのでしょうか?先のコビトマングースの例をとると、体重が軽いオスほど極端に逆立ちをしてなるべく高い場所に自分の匂いを残そうとするそうです。そして研究者は「自分の体を実際より大きく見せようとするはったり行動」であると解釈しています。もし体が小さな犬の中にも同じ動機があるのだとすると、少々不誠実な感じがしますね。 小型犬に相手をだまそうとする思惑があるのかどうかはわかりませんが、チワワがキャンキャン吠えやすいのも、足を高く上げておしっこをなるべく高い場所に残そうとするのも、ひょっとすると恐怖心の裏返しなのかもしれません。
小型犬と大型犬を比べたとき、小型犬に特有の特質がいくつか観察されています。例えば「小型犬の方が屋外でおしっこを引っ掛ける回数が多い」(McGuire & Bemis, 2017)、「他の犬のうなり声やラブラドールレトリバーに近づこうとしない」(Leaver & Reimchen, 2008)、「足を高く上げておしっこをする」(当調査)などです。こうした特質から見えてくるのが「小型犬は臆病で直接的な交流をあまり好まず、おしっこの匂いを通した間接的な交流の方を好む」という可能性です。体が小さくて力が弱いため、相手と直接対峙する状況を本能的に避けているものと考えられています。
犬の体が小さいほど足を高く上げておしっこを高い場所に残そうとする傾向。考えられる理由をまとめると以下のようになるでしょう。
小型犬の足上げ放尿(RLU)
- バランスを取りやすいだけで、別に騙す気は無い
- 他の犬のおしっこに上塗りするため仕方なく
- 自分の体を実際より大きく見せるための空威張り(オス犬に対して)
- 自分の体を実際よりマッチョに見せるためのハッタリ(メス犬に対して)