詳細
調査を行ったのは、ポルトガル・ポルト大学のチーム。犬の悪性リンパ腫と生活環境との関係性を調べるため、リンパ腫を発症した犬23頭から組織サンプルを採取して組織学的、免疫細胞科学的に精密検査すると同時に、犬の飼い主に対して70項目からなるアンケート調査を行いました。その結果、19人から喫煙習慣に関する回答が寄せられ、2005年から2016年の期間、同居人のうち最低一人が喫煙者だった割合が11頭(57.89%)だったといいます。さらにその11頭のうち、喫煙者1人が7頭(63.7%)、喫煙者2人が4頭(36.3%)だったとも。さらに統計的には以下のような関係性が確認されました。「Ki67」とは増殖中の細胞で特異的に見られるタンパク質のことで、インデクスが大きいほどガンの増殖が活発であることを示しています。
Pinello KC, Santos M, Leite-Martins L, Niza-Ribeiro J, de Matos AJ (2017), Veterinary World, 10(11): 1307-1313
喫煙環境と悪性リンパ腫
- 喫煙者と同居していた犬の方が「Ki67インデクス」が大きい
- 喫煙者の数が多い方が「Ki67インデクス」が大きい
- 飼い主が非喫煙者の場合「Ki67+」の細胞が含まれる割合は25%
- 飼い主が喫煙者の場合「Ki67+」の細胞が含まれる割合は64%
Pinello KC, Santos M, Leite-Martins L, Niza-Ribeiro J, de Matos AJ (2017), Veterinary World, 10(11): 1307-1313

解説
犬の悪性リンパ腫の発症には犬種、性別、環境ホルモンへの暴露、バルトネラ感染症、酸化ストレス、除草剤、磁場、大気汚染などが関わっていると考えられています。遺伝的要因に関しては、ゴールデンレトリバーを対象とした調査により、イヌ5番染色体上にある2つの遺伝子座のハプロタイプが発症に関わっている可能性が示されました。また環境要因では、受動喫煙している犬の方が鼻腔にガンを生じやすい(→出典)といった報告があります。
今回の調査でも家の中における喫煙者の存在が発症リスクとして浮上してきました。タバコの煙は喫煙者の近くにいることで間接的に吸い込む「二次喫煙」のほか、タバコの煙がカーペットやカーテンといった家財道具に染み込み、ゆっくりと揮発することで摂取される「三次喫煙」といったルートで非喫煙者に影響を及ぼします。
犬の多くは室内で飼育されていること、および五感の中で嗅覚が最も優れており頻繁に「くんくん」することなどから考え、人間よりも受動喫煙の悪影響を受けやすいものと推測されます。返す返すも、タバコは「百害あって一理なし」ということです。
