詳細
熱中症とは体内にたまった熱をうまく外に逃がすことができず、体温が異常に高くなってしまった状態のこと。犬においては深部体温で41℃超が1つの目安とされています。熱中症は体温の上昇に伴う細胞の直接的なダメージのみならず、炎症反応の活性化に伴う凝血機能不全(DIC)を全身に引き起こし、人においても犬においても死亡率を50%近くにまで高めることがあります。
Yaron Bruchim et al., Journal of Veterinary Emergency and Critical Care 00(0) 2017, pp1-10, doi: 10.1111/vec.12590
- DIC
- DIC(播種性血管内凝固症候群)とは、血液の凝固能力が抗凝固能力を上回り、微小血管内で数多くの目詰まりを起こして臓器不全や出血傾向を引き起こした状態のこと。熱中症にかかった54頭の犬を対象とした調査では、50%でDICの疑いありと診断されている。
血液凝固能の検査項目
- PT血液を凝固させる血小板の数。
✓参照値=150~500×10000/μL - aPTT活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は血液凝固能検査のひとつで、被検者の静脈血から血漿成分を取り出し、接触因子活性化物質を添加することで凝固時間を測定するというもの。
✓参照値=11~17秒 - ATAアンチトロンビン活性(ATA)は血液凝固・線溶検査の一つ。
✓参照値=87~140% - tPCAプロテインC活性(tPCA)は凝固調節因子であるプロテインCがどの程度機能しているかを示す指標。
✓参照値=12.6~31.3% - フィブリノーゲンフィブリノーゲンは肝臓で産生される糖タンパクの一種で、重要な止血成分。
✓参照値=150~300mg/dL - D-ダイマーD-ダイマーはフィブリンがプラスミンによって分解される際の生成物で、血栓症の判定に用いられる。
✓参照値=250μg/mL未満
熱中症による死亡率関連因子
- 受診直後の分析値とは関連していない
- 受診から12時間後におけるPTの延長
- 受診から24時間におけるPTの平均時間延長
- 受診から12、24時間後におけるaPTTの延長
- 受診から24時間におけるaPTTの平均時間延長
- 受診から12時間後におけるtPCAの低下
- 受診から24時間後におけるフィブリノーゲンの低下
- 受診から24時間以内に見られる凝固不全の項目数増
熱中症患犬の予見因子
- フィブリノーゲン濃度24時間時点における値が172mg/dL未満のとき…
✓特異度=80%
✓感度=75% - aPTT24時間時点における時間が37.5秒超のとき…
✓特異度=76%
✓感度=70%
Yaron Bruchim et al., Journal of Veterinary Emergency and Critical Care 00(0) 2017, pp1-10, doi: 10.1111/vec.12590
解説
今回の調査では運動性の熱中症が73%(22頭)、環境性の熱中症が27%(8頭)という内訳でした。「運動性の熱中症」の方は、犬が運動に夢中になってオーバーヒートしないよう、飼い主が注意深く監視することで十分に予防が可能だと思われます。また「環境性の熱中症」の方も、「日中の散歩を避ける」とか「炎天下での屋外放置を避ける」といった配慮によって予防できそうです。
その他「オス犬」(27/30頭)、「短頭種」(11/30頭)、「レトリバー」(6/30頭)の占める割合がやや高かったことから、こうした要素は「運動量が多すぎる」もしくは「体温調節が苦手」のどちらかの危険因子を含んでいるものと推測されます。飼い主は少し注意したほうが良いかもしれません。 病院を受診した直後における血液分析値は、その犬がどのような経過をたどるかを忠実に反映してくれないことが明らかになりました。犬が熱中症にかかってしまった場合、できれば24時間は血液の状態をモニタリングしておくことが望まれます。特に急性のDICによる突然死には注意が必要です。
その他「オス犬」(27/30頭)、「短頭種」(11/30頭)、「レトリバー」(6/30頭)の占める割合がやや高かったことから、こうした要素は「運動量が多すぎる」もしくは「体温調節が苦手」のどちらかの危険因子を含んでいるものと推測されます。飼い主は少し注意したほうが良いかもしれません。 病院を受診した直後における血液分析値は、その犬がどのような経過をたどるかを忠実に反映してくれないことが明らかになりました。犬が熱中症にかかってしまった場合、できれば24時間は血液の状態をモニタリングしておくことが望まれます。特に急性のDICによる突然死には注意が必要です。