詳細
調査を行ったのは、ニューヨークにあるコーネル大学獣医学校が中心となったチーム。2015年4月の時点で「Orthopedic Foundation for Animals」(OFA, 動物整形外科基金)に蓄積されていた犬の股異形成に関するデータを元に、発症リスクの増加と関係のある因子が何であるかを精査しました。主に北アメリカやカナダに暮らしている犬のデータの中から、「生後24ヶ月齢~60ヶ月齢」という条件を満たすものだけを抽出し、総計921,046件の医療記録を調べたところ、股異形成の有病率が全体で15.56%になることが判明したといいます。
- 股異形成の定義
- 股異形成の重症度を「アメリカ獣医学協会」(AVMA)が採用している7段階システムで評価した時、1(優秀)~3(まあまあ良い)までを「異形成なし」、5(軽度異形成)~7(重度異形成)までを「異形成あり」と定義。今回の調査で発症例としてカウントされたのは、グレード5(86,321頭)、グレード6(47,971頭)、グレード7(8,004頭)の合計142,296頭。
性別
- オス=1
- メス=1.05
AKCカテゴリ
- ハウンド=1
- トイ=1.675
- テリア=1.236
- ノンスポーティング=1.348
- スポーティング=1.504
- ワーキング=1.882
- ハーディング=1.535
✓AKC=アメリカンケネルクラブ
FCIカテゴリ
- サイトハウンド=1
- コンパニオン・トイ=2.824
- RFW=3.386
- ポインター=2.184
- セントハウンド=2.096
- スピッツ・原始犬=2.059
- テリア=3.163
- PSM=4.168
- 牧羊・牧畜犬=3.229
✓FCI=国際畜犬連盟
✓PSM=ピンシャー・シュナウザー・モロソイド・スイスマウンテンドッグ・スイスキャトルドッグ
✓RFW=レトリバー・フラッシャー・ウォータードッグ
生まれた季節
- 春(3~5月)=1.14
- 夏(6~8月)=1
- 秋(9~11月)=1.02
- 冬(12~2月)=1.13
居住地の緯度
- 30度未満=2.1
- 30~39度=1.4
- 40~49度 =1.5
- 50度超=1
解説
発症の危険因子には先天的なものと後天的なものがあるようです。
先天的な「性別」や「犬種」(犬種カテゴリ)と発症との関係性は過去に世界各国で調査されてきましたが、結果はまちまちです。こうした不一致が起こる現象の理由としては、サンプル抽出方法や異形成の評価方法が異なっていたからというものが考えられます。
後天的な要因としては「生まれた季節」と「居住地の緯度」があり、股異形成との関わり方としては以下のようなものが想定されています。
先天的な「性別」や「犬種」(犬種カテゴリ)と発症との関係性は過去に世界各国で調査されてきましたが、結果はまちまちです。こうした不一致が起こる現象の理由としては、サンプル抽出方法や異形成の評価方法が異なっていたからというものが考えられます。
後天的な要因としては「生まれた季節」と「居住地の緯度」があり、股異形成との関わり方としては以下のようなものが想定されています。
運動量
今回の調査では、夏(6~8月)に生まれた子犬よりも冬(12~2月)に生まれた子犬の方が13%ほど発症率が高いことが明らかになりました。この理由としては、「運動量が少ない子犬は股関節周辺の筋肉の発達が遅れ、骨格の急速な発達と相まって大腿骨の拘束力が弱まり、股関節の亜脱臼から股異形成につながる」といったものが想定されています。
また緯度が50度超の地域(北)で生まれた子犬よりも、30度未満の地域(南)で生まれた子犬の方が2倍以上発症しやすいことが明らかになりました。この理由としては「緯度が低く温かい地域で生まれた子犬の方が運動量が増え、股関節へのストレスが増えて発症につながる」という真逆のものが想定されています。
過去の調査でもまちまちな結果が出ていますので確定的な事は言えませんが、「運動量」というものが成長期にある子犬の股関節に何らかの影響を及ぼしているという可能性は大いにあります。
また緯度が50度超の地域(北)で生まれた子犬よりも、30度未満の地域(南)で生まれた子犬の方が2倍以上発症しやすいことが明らかになりました。この理由としては「緯度が低く温かい地域で生まれた子犬の方が運動量が増え、股関節へのストレスが増えて発症につながる」という真逆のものが想定されています。
過去の調査でもまちまちな結果が出ていますので確定的な事は言えませんが、「運動量」というものが成長期にある子犬の股関節に何らかの影響を及ぼしているという可能性は大いにあります。
体重
外気温が低くなると体温を維持するため、食事の摂取量が増えます。また同時に、外に出る機会が減るため運動量が減ります。結果として、寒い季節に生まれた子犬は太り気味になり、増えた体重が股関節へのストレスとなって形成不全につながる可能性があります。冬に生まれた子犬の発症率がやや高かったのは、こうしたメカニズムによるものかもしれません。
ビタミンD摂取量
人間の発育性股関節形成不全(DDH)患者を対象とした調査では、ビタミンDレセプターに関連した遺伝子に変異があると、骨の形成が阻害されて寛骨臼の形成不全を起こすとされています。犬の食事内容が季節によって微妙に変化し、冬期におけるビタミンD摂取量が減少していたのだとすると、この時期に生まれた子犬の出症率が微増した理由になるでしょう。