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プロバイオティクスは犬の下痢の頻度を下げるかも

 保護施設に収容された犬たちを対象とした調査により、腸内細菌の働きを改善するプロバイオティクスは、下痢の頻度を下げる可能性を有していることが示されました(2017.6.26/イギリス)。

詳細

 調査を行ったのは、イギリスのケンブリッジ大学やブリストル大学などを中心としたチーム。イギリスのゴッドマンチェスターにある動物保護施設に収容された犬を二重盲検ランダム化方式で2つのグループに分割し、一方のグループ(399頭)にはシンバイオテクス、もう一方のグループ(374頭)には偽薬を投与し、下痢の頻度にどのような変化が現れるかを比較検討しました。
シンバイオテクス
 腸内細菌叢の機能を改善する微生物である「プロバイオティクス」と、微生物に栄養を与える「プレバイオティクス」の両方を含んだ健康食品の一種。今回の調査で用いられたのは「Protexin Veterinary」が販売しているもので、プロバイオティクスには「Enterococcus faecium NCIMB 10415 4b1707」(2×109/1カプセル)、プロバイオティクスにはフラクトオリゴ糖とアカシア(46.4mg/1カプセル)が含まれている。
 糞便の状態を「正常」、「硬い」、「柔かい」、「下痢」の4つに分類してカウントしていったところ、犬が収容されてから施設を出るまでの期間、「正常」とみなされた糞便の割合が投与群では88.4%だったのに対し、偽薬群では85.0%だったと言います。その他の状態に関する内訳は以下です。 プロバイオティクスが犬の糞便の硬さに及ぼす影響
 収容されてから4週目までの期間中、1度でも下痢便をした犬の割合を調査したところ、以下のような違いが見られました。 プロバイオティクスが犬の下痢の頻度に及ぼす影響(4週間)
 収容されてから最初の14日間中、1度でも下痢便をした犬の割合と、2日以上連続で下痢便をした犬の割合を調べた所、以下のような違いが見られました。 プロバイオティクスが犬の下痢の頻度に及ぼす影響(2週間)  上記した違いは全て統計的に有意と判断されたことから、調査チームは動物保護施設に収容された犬に対し予防医学的な観点からシンバイオティクスを与える事は、十分に試してみる価値があるとの結論に至りました。ただし、シンバイオテクスには下痢を治す効果はなく、あくまでも予防的な効果しかないこと、および今回の調査結果を「Enterococcus faecium NCIMB 10415 4b1707」以外の系統にまで拡大解釈することはできないことを注意点としてあげています。
Efficacy of a Probiotic-Prebiotic Supplement on Incidence of Diarrhea in a Dog Shelter: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial
Rose, L., Rose, J., Gosling, S. and Holmes, M. (2017), J Vet Intern Med. doi:10.1111/jvim.14666

解説

 ストレスの多い収容動物で頻繁に見られる下痢は、職員の時間と労力を奪うと同時に、掃除費用や診療費などを膨らませる厄介な症状の1つです。動物の体調が回復するまで待たなければならないため、譲渡される機会が遅れたり奪われたりすることもあります。今回の調査で示されたように、シンバイオテクスに下痢の頻度を下げる効果があるのだとしたら、動物の苦痛を緩和すると同時に費用対効果の面でいくらか有利になるかもしれません。
 日本国内においてもプロバイオティクスは流通していますが、その内容は以下に示すようにバラバラです。また。医薬品ではなくあくまでも健康食品であるため、成分にどのような効果があるのかをデータによって実証する義務はありません。
日本のプロバイオティクス
  • フェカリス菌
  • エンテロコッカス・フェシウム
  • ラクリス菌
  • ペディオコッカス菌
  • ビフィズス菌
  • ラクトバチルスアシドフィラス
  • ラクトバチルス・パラカゼイK71株
  • 有胞子乳酸菌
 EU圏内で犬用のプロバイオティクスとしてライセンスを取得しているのは「Enterococcus faecium」だけだといいます(→出典1出典2)。今回の調査のように「効果があった」という報告がある一方、「あまり効果がなかった」という報告も混在しているため、現時点で頭ごなしに信用するのはやや早計でしょう。ただ副作用らしき症状を示した犬は1頭もいなかったという点は安心材料ではあります。