詳細
調査を行ったのは、サンパウロ州立パウリスタ大学(UNESP)を中心としたチーム。2014年6月から2015年9月の期間、インターネット、医学文献データベース、サンパウロ市内にある2つの大きな書店からペット用手作りフードのレシピに関する情報を収集し、中に含まれている栄養成分が「家畜動物のための食品産業ヨーロッパ連合」(FEDIAF)の定める犬と猫のためのペットフード栄養ガイドラインに沿っているかどうかを検証しました。
その結果、犬向けレシピ80種類、猫向けレシピ24種類、犬猫兼用レシピ2種類が見つかり、以下のような事実が明らかになったといいます。
以下は、犬向けに作られたレシピ82種類のうち、ある特定の栄養成分が基準値を下回っていた割合です。
Journal of Nutritional Science Volume6(2017), Vivian Pedrinelli et al., DOI: https://doi.org/10.1017/jns.2017.31
その結果、犬向けレシピ80種類、猫向けレシピ24種類、犬猫兼用レシピ2種類が見つかり、以下のような事実が明らかになったといいます。
手作りフードレシピの欠点
- 素材や使用量に関する明確な指示がない=48%
- ビタミンとミネラルサプリメント関する指示がない=53.7%
- 中毒を起こしかねない成分を指示=10.2%
- 具体的な給餌方法に関する指示がない=71.3%
以下は、犬向けに作られたレシピ82種類のうち、ある特定の栄養成分が基準値を下回っていた割合です。
犬用レシピの栄養不適率
- 鉄=68.3%
- 亜鉛=75.6%
- 銅=85.4%
- カルシウム=73.2%
- コリン=85.4%
- ビタミンB1=39%
- ビタミンB2=65.8%
- ビタミンB12=61%
- ビタミンE=82.9%
犬用レシピの栄養欠落率
- ビタミンA=12%
- ビタミンB12=22.2%
- ビタミンD=4.4%
- ビタミンE=33.6%
- カルシウム=19.7%
- 銅=35%
- 亜鉛=36%
Journal of Nutritional Science Volume6(2017), Vivian Pedrinelli et al., DOI: https://doi.org/10.1017/jns.2017.31
解説
飼い主が市販のペットフードから手作りフードにシフトする理由としては、「フードラベルを理解できない」、「保存料や着色料への懸念」、「素材への不信」、「ペットとの絆を強めるため自分で作りたいという願望」などが考えられます。しかし、栄養学に関する十分な勉強と毎日調理を続けるという確固たる覚悟がなければ、自己満足は得られるものの犬や猫の健康を害する危険性が高くなってしまうだけのようです。
今回の調査はブラジル国内で行われたものであるため、調査結果をそのまま日本に持ち込むことはできません。しかし市販されているペット用レシピ本の多くが、犬に対する長期的な影響を検証した上で発売されているわけではないという事実から考えると、用心するに越した事は無いでしょう。レシピのうち10%では、ニンニクやタマネギなどペットにとって毒になりうる成分を指示していたといいますので、飼い主の側にも「ちょっとおかしいぞ」と判断できる程度の基礎知識が求められます。
ブラジルのデータを参考にすると、犬では特に以下に示すような栄養成分で不足が起こりやすいと考えられます。例えばビタミンEを例にとると、「市販のレシピを参考にすると82.9%の確率で摂取不足が起こり、その摂取量は基準値を33.6%下回る」となります。
ブラジルのデータを参考にすると、犬では特に以下に示すような栄養成分で不足が起こりやすいと考えられます。例えばビタミンEを例にとると、「市販のレシピを参考にすると82.9%の確率で摂取不足が起こり、その摂取量は基準値を33.6%下回る」となります。
犬で不足しがちな栄養素
- ビタミンE=82.9% | 33.6%
- 亜鉛=75.6% | 36%
- カルシウム=73.2% | 19.7%
- ビタミンB12=61% | 22.2%