詳細
調査を行ったのは、スコットランド・グラスゴー大学獣医生命科学部のチーム。2014年10月から2015年6月の期間、スコットランド国内にある保護施設に収容された38頭の犬を対象とし、「ソフトロック」、「モータウン」、「ポップ」、「レゲエ」、「クラシック」という5つの音楽ジャンルが持つリラックス効果を比較検討しました。1日1ジャンルの音楽を6時間聞かせた上で、5日間に渡る犬のストレスレベルを「心拍変異度」(時間による心拍の周期的な変動のことで、リラックス状態で増加する)、「尿中コルチゾール」(ストレスホルモンの一種)、「行動」という3つの指標で定量化したところ、以下のような傾向が浮かび上がってきたと言います。
A. Bowman et al. doi.org/10.1016/j.physbeh.2017.01.024, Physiology and Behavior Volume 171(2017)
音楽ジャンルと癒やし効果
- ジャンルにかかわらず、音楽がかかっているとき犬のストレスレベルは減少する
- ジャンル間の違いはそれほど大きくない
- 行動と心拍変異度を指標とした場合、ソフトロックとレゲエのリラックス効果が最も高い
- リラックス効果は5日間の音響テスト期間中継続して見られた
A. Bowman et al. doi.org/10.1016/j.physbeh.2017.01.024, Physiology and Behavior Volume 171(2017)
解説
過去に犬を対象として行われた短期的な調査では、クラシック音楽を聞かせているときに無駄吠えが減り、寝ている時間が増えたとされています。一方、クラシック音楽が持つ長期的な効果に関しては、7日目になると薄れてしまったという調査結果もあります。犬の飽きを防ぎ、なおかつリラックス効果を継続させるためには、今回の調査結果が示唆しているように、クラシック音楽にこだわるのではなく異なるジャンルの音楽をランダムで次々と聞かせた方が良いのかもしれません。ただし、ヘビメタに代表される激しい音楽は、犬のストレスレベルを上昇させることが確認されていますので、この系統だけは避けたほうがよいでしょう。
犬向けの音楽?
動物の保護施設は犬へのストレスが大きく、さまざまな異常行動を引き起こすことがあります。呼吸が荒くなる、体を震わせる、身をかがめる、前足を上げるといったものならまだましですが、吠え続ける、食糞、過度のグルーミング、自傷行為、常同行動といった問題行動にまで発展すると、譲渡の確率が下がると同時に再放棄の確率まで高まってしまいます。もし音楽をかけ続けることで犬のストレスが幾分か軽減し、結果として譲渡率の上昇や飼育放棄率の低下につながるのならば、環境エンリッチメントの一環として取り入れる価値は大いにあると思われます。