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緑内障を発症した犬における失明までのタイムリミットは3日

 緑内障を発症した犬を対象とした調査により失明に陥るまでのタイムリミットが3日であることが確認されました(2017.4.3/日本)。

詳細

 報告を行ったのは東京都にあるトライアングル動物眼科診療室。2006年1月から2007年12月までの2年間、飼い主が緑内障でよく見られる症状に気付いてから、飼い犬を一次診療施設や、より専門性の高い二次診療施設に連れてくるまでの日数を割り出し、症状の進行具合とどのような関係があるかを検証しました。
緑内障
 緑内障とは、眼圧の上昇によって網膜の神経節細胞が徐々に変性し、最終的には一時的~永続的な視覚喪失に至る眼科系疾患。発症してから失明に至るまでの期間はせいぜい2~3日と考えられており、ひとたび視力を失ってしまうと、それを回復させる治療法はないとされている。犬の緑内障
 緑内障と診断された犬症例158頭194眼を対象としてデータを統計的に精査したところ、以下のような事実が判明したといいます。なお「0日目」とは、飼い主が犬の症状に気付いた日のことです。 犬の緑内障の症状に気付いてから診療施設を訪れるまでの日数 来院日数と犬の視覚維持率の関係  飼い主が症状に気付いてから診療施設を訪れるまでの日数に関し、3日以内の合計が100頭(72.5%)、4日目が38頭(27.5%)という内訳になりました。また視力が保たれているかどうかを示す視覚維持率に関しては、3日以内の平均が55.0%、4日目が8.9%という結果になりました。
 こうしたデータから調査チームは、「多くの飼い主は緑内障による異常を早期に認識し、視覚が維持された状態で動物診療施設に来院している可能性がある」こと、および「緑内障を発症した眼の視力が保たれる期間はせいぜい3日である」ことを確認しました。また、一次診療において緑内障の疑いがあると判断された場合には、最低でも48時間以内に眼圧測定を再度行うこと、および眼圧測定ができない診療施設においては、速やかに眼科診療専門施設へ症例を回すことなどを推奨しています。
犬緑内障症例における動物診療施設への来院までの日数と視覚維持の検討
日獣会誌 63,281~285(2010)

解説

 当調査では、比較的多くの飼い主が症状が現れてから3日以内に病院を受診しているという可能性が示されました。しかしここで注意すべきは、調査対象となっているのが全て「実際に病院を受診した人」であるという点です。データの中では「症状が出ているにもかかわらず動物病院を受診しなかった人」が黙殺されていますので、もし調査対象を広げて上記したような人を含めると、72.5%という3日以内の受診率は下がってしまうでしょう。
 視覚維持率に関し、3日以内の平均が55.0%であるのに対し、4日目が8.9%に急落することが判明しました。このデータは、過去になされた「40mmHg以上の眼圧が48時間持続すると、不可逆的な視神経障害と視覚喪失に陥る」という報告を追認するものです。緑内障の初期症状としては以下のようなものがありますので、飼い主は日常的に犬の様子を観察し、何らかの変化が見られた場合は速やかに眼圧検査対応の動物病院を受診することをおすすめします。
緑内障の初期症状
  • 結膜の充血
  • 軽度の角膜混濁
  • 瞳孔散大
  • 軽度の眼圧上昇
  • 眼を閉じたままになる
  • 眼を擦る
  • 涙が増える
  • 目やにが増える
  • まぶたのけいれん
  • 元気がなくなる
犬の緑内障