詳細
調査を行ったのは、イタリア・バリ大学獣医学部のチーム。メス16頭とオス9頭からなる25頭の犬(平均年齢5.3歳)を対象とし、おやつを入れた特殊なコンパートメント(15×8列=120区画)のうち、右側と左側のどちらが優先的に選ばれるかを調べました。具体的には、中央より右側のおやつがたくさん食べられたときは「右の視野が優先」、逆に中央より左側のおやつがたくさん食べられたときは「左の視野が優先」といった感じです。
その後、「コング®」と呼ばれる犬用のおもちゃを実験室に放置し、犬が一体どちらが前足でおもちゃを抑えようとするかを観察しました。具体的には、60分間の試験中、右の前足が先に50回用いられた場合は「右利き」、逆に左の前足が先に50回用いられた場合は「左利き」といった感じです。
空間処理の優位性と利き手との関係を統計的に調べたところ、以下のような事実が浮き彫りになったといいます。
Marcello Siniscalchi, et al. 2016
利き手と空間認識の関係
- 左利きの犬は左の視野を優先的に処理する
- 右利きの犬は右の視野を優先的に処理する
- 両利きの犬は視野の処理に優先順位がない
Marcello Siniscalchi, et al. 2016
解説
「右の視野」と「右目で見た視野」は同じ意味ではありません。視野のうち右半分の視覚情報は網膜と視神経を通じて左半球へ入ります。ですから、左半球で処理されるのは「右目から入ってきた右半分の視覚情報+左目から入ってきた右半分の視覚情報」なのです。
左脳が優位な状態にあると視野の右側が優先的に処理されるようになり、逆に右脳が優位な状態にあると視野の左側が優先的に処理されるようになります。もし今回の調査で指摘されたように、利き手と視覚的情報処理の優位性が連動しているのだとすると、右利きの犬は右側の視野を、そして左利きの犬は左側の視野を優先的に処理すると推測されます。 この知識は、犬に対してハンドシグナルを出す時などに役立つかもしれません。例えば「コングテスト」などで犬の利き手をあらかじめ知っておけば、シグナルを右手で出して犬の左視野に情報を送るのがよいのか、それとも左手で出して犬の右視野に情報を送るのがよいのかを決める際のヒントになるでしょう。