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犬の恐怖心と攻撃性を高めている遺伝子が判明

 犬の行動特性とDNA情報を照合したところ、「恐怖心」と「攻撃性」を高めていると思われる遺伝子候補が明らかになりました(2016.9.20/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのは、アメリカにある「Nationwide Children's Hospital」を中心とした分子遺伝学チーム。「C-BARQ」と呼ばれるアンケート調査を通じて明確化された犬の行動特性と、様々な犬種に属する数百頭の犬を対象とした2つの全ゲノム関連解析で得られた膨大な遺伝データを基に、行動と遺伝との間に何らかの関連性があるかどうかを検証しました。その結果、以下のような可能性が浮かび上がってきたと言います。
行動と遺伝の関連
  • 第10と15染色体第10染色体上「HMGA2」と第15染色体上「IGF1」内の遺伝子座は、「小さい体」という身体的な特徴に関与していると同時に、分離不安、接触感受性、飼い主に対する攻撃性、犬同士の対立といった行動特性とも関与している
  • 第18とX染色体第18染色体上「GNAT3」と「CD36」の間にある遺伝子座、及びX染色体上「IGSF1」の近くにある遺伝子座は、接触感受性、非社会的恐怖、見知らぬ犬への恐怖や攻撃、見知らぬ人への恐怖や攻撃といった行動特性に関与している
 「GNAT3」遺伝子は脳内の扁桃体、「CD36」遺伝子は扁桃体と視床下部、そして「IGSF1」遺伝子は下垂体や視床下部で多く発現するという特徴を持っています。扁桃体は「情動反応の処理や記憶」、下垂体や視床下部は「HPA軸を通じたストレス反応」に深く関与している部位です。こうした事実に着目した研究チームは、 「恐怖」や「攻撃性」の度合いに影響を及ぼすと考えられる4つの遺伝子座は、人間が犬を家畜化する過程で選択繁殖の基準にしてきた公算が大きいとの推論を述べています。また今回得られた知見は、人医学の分野における不安障害のメカニズムを、遺伝的に解明する際のヒントになってくれるだろうとも。 Genetic mapping of canine fear and aggression
Isain Zapata, James A.Serpell, et al. 2016