詳細
報告を行ったのは、英国「国民医療サービス」の関連団体「NHS Foundation Trust」。ある特定の対象物を病的に怖がる「恐怖症」(フォビア, phobia)は、人口の約5%に当たる人々が抱えていると推計されており、適切な介入を行わなければ20年以上保有し続けることも少なくありません。中でも「犬恐怖症」(サイノフォビア, cynophobia)を患う子供は、「犬がいるから外出できない」とか「家に犬がいるから友達と遊べない」といった状況に陥り、日常生活に支障きたすこともしばしばです。犬恐怖症を克服するための正攻法は、精神科の医師によるセラピーですが、医療施設に足を運ぶと「精神疾患にかかっている」という偏見の目で見られる危険性があるため、ほとんど利用されていないのが現状だといいます。
「NHS Foundation Trust」は「エセックス州ドッグトレーニングセンター」(EDTC)と協働した上で、犬恐怖症を抱えた子供に対する特殊な介入プログラムを開発し、どの程度の効果があるかを検証しました。プログラムの特徴は、医療施設ではなく犬の訓練施設で行われるという点、および人間と犬が1対1で対峙するのではなく、同じ恐怖症を抱えた子供たちによるグループセッション形式で行われるという点です。基本的な手法としては、苦手なものに低レベルから徐々に慣らしていくという認知行動療法的な手法が取られました。具体的なステップ目標は以下です。
こうした結果から調査チームは、国内に散らばっている犬の訓練センターにおいて、ドッグトレーナーが介入しながら犬恐怖症を克服していくというプログラムは大いに有望であるとの結論に至りました。当プログラムの主なメリットは以下です。
犬恐怖症克服プログラム
- まずは「センターに行く」という意志を持つ
- たとえ犬がいなくてもセンターに入るなりパニックを起こして帰ろうとする
- 犬に近寄ろうとはしないけれども、別の部屋から眺めている分には平気
- 犬や他の子供がいる部屋に入る
- 保護者がいない状況でゲームを始める
- 犬と身体的に接触する
- 他の子どもの前、後ろ、間などを犬を連れて散歩する
- リードがない状態に慣れさせる
- 口を開けた状態の犬と交流する
- 犬をセンターの外に連れ出す
こうした結果から調査チームは、国内に散らばっている犬の訓練センターにおいて、ドッグトレーナーが介入しながら犬恐怖症を克服していくというプログラムは大いに有望であるとの結論に至りました。当プログラムの主なメリットは以下です。
- グループセッションにより、他人の行動を真似する社会的学習が促進される
- 仲間からのプレッシャーがあり、モチベーションの維持につながる
- 場所が訓練センターなので「精神疾患を抱えている」という偏見を受けないで済む
- 心理学者が介在しないためコストパフォーマンスが良い