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犬は自閉症児のいる家庭にポジティブな効果をもたらす

 自閉症児を抱えた家庭を対象とした長期調査により、たとえ専門的な訓練を受けていなくても、ペット犬が居るだけで家庭内のストレスが緩和されることが明らかになりました(2016.10.31/イギリス)。

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 調査を行ったのは、アメリカに本拠地を持つ「HABRI」という機関の支援を受けたイギリス・リンカーン大学のチーム。犬と自閉症児がいる22の家庭と、自閉症児だけがいる15の家庭を、2年半にわたって追跡調査したところ、犬がいる家庭の保護者のうち20%では、ストレスレベルが「高い」→「通常」に下がったと言います。また親子の交流不全スコアでも、犬を飼っている家庭においてのみ改善が見られたとのこと。
 こうした結果から調査チームは、保護者のストレスレベルと犬への愛着との間には明確な関連性があるという事実を突き止めました。たとえ特殊な訓練を受けていなくても、家庭内に犬がいるだけで長期的な抗ストレス効果がもたらされるのではないかと期待されています。 The long-term benefits of dog ownership in families with children with autism
 先行して行われた調査では、犬の存在が自閉症児に対して良い影響を及ぼすことが確認されています。リンカーン大学の調査チームは、「リンカーン自閉症-ペット犬インパクトスケール」(LAPDIS)と呼ばれる28項目からなる評価基準を開発し、自閉症児を抱えた家庭を対象とした調査を行いました。その結果、「家族がもつ側面」や「犬がもつ側面」は、自閉症児がもつ「適応性」、「社会的スキル」、「対立マネージメント」という3つの能力に影響を及ぼさないことが明らかになったといいます。それに対し、「子供自身がもつ側面」は犬が子供の能力に及ぼす影響の度合いと関連していることが明らかになったとのこと。また「訓練法が持つ側面」は、自閉症児の「社会的スキル」にだけ影響を及ぼす傾向が見られたそうです。犬の存在自体が自閉症児にプラスの効果を及ぼす  こうしたデータから調査チームは、自閉症児を抱えた家庭に犬を迎え入れたとき、影響の良し悪しを左右するのは「子供自身が持つ個性」と「訓練法」であり、家族や犬が持つ特性はそれほど重要ではないという結論に至りました。つまり、子供の側に犬を受け入れる素地さえできていれば、たとえ犬がセラピードックとしての特殊な訓練を受けていなくても、ある程度は良い影響を与えることができるということです。 What Factors Are Associated with Positive Effects of Dog Ownership in Families with Children with Autism Spectrum Disorder?
Sophie Susannah Hall, Hannah F. Wright, Daniel Simon Mills, et al. 2016