詳細
2013年、片頭痛が原因と思われる発作に見舞われたコッカースパニエル(5歳/メス)の症例がイギリスで報告されました。
改善のヒントが示されたのは、2度目に受診した時です。この時の犬は発作の真っ最中で、まるで痛みを感じているかのようにひっきりなしに吠え続け、光や音に対する過敏症が見られたと言います。頭を低くしていること以外異常は見られず、神経障害性疼痛か頭痛の可能性が考慮されました。
まず「神経障害性疼痛」の可能性を検討するため、解熱鎮痛薬が4週間投与されましたが、改善は見られませんでした。次に「片頭痛」の可能性を検討するため、片頭痛やてんかんに用いられる「トピラマート」を投与した所、ようやく症状が顕著に改善したそうです。投薬を開始してからは発作の持続時間が1~3時間に短縮され、執拗な無駄吠えや光や音に対する過敏症もなくなり、散歩への欲求と食欲も回復したとのこと。ただしトピラマートの投与が遅れた時は症状の回復も遅れ、6~7時間持続したそうです。
その後、発作が生じたときにだけ投薬するという治療計画に変更して18ヶ月間様子を見たところ、発作の頻度は月に2回から2~3ヶ月に1回にまで顕著に減少しました。投薬治療前は安楽死すら考えられていましたが、投薬後の生活の質は飼い主にとって十分許容できるものに改善したと言います。 症例報告を行った調査チームは、さまざまな検査にもかかわらず症状の原因がわからず、抗てんかん薬や鎮痛薬が効かないような場合は、「片頭痛」の可能性を考慮してみるようアドバイスしています。犬の片頭痛に関する診断基準が存在しないため、診察する際は暫定的に人間用のガイドラインを転用するのが手っ取り早いとも。 Migraine-like Episodic Pain Behavior in a Dog: Can Dogs Suffer from Migraines?
Plessas, I.N., Volk, H.A. and Kenny, P.J. (2013), J Vet Intern Med, 27: 1034?1040. doi:10.1111/jvim.12167
生後6ヶ月齢から頭を低くして急に吠え始め、飲食を拒絶するという奇妙な行動を見せるようになった。また発作の2時間前には、何かを怖がるかのように急におとなしくなり、家具の下に隠れて人との接触を避けるようになった。その後、この犬はイギリス王立獣医大学の小動物診療部を受診し、生化学検査、行動検査、MRI、エックス線撮影、脳脊髄液検査、腹部の超音波診察といった精密検査を受けましたが、結果はすべて「異常なし」だったと言います。また、実験的に抗てんかん薬(フェノバルビタール)を投与してみたものの、症状の改善が見られなかったため、てんかん発作の可能性は低いと見なされました。
発作の症状は「よだれをたらす」、「口をパクパク開閉する」、「何かを飲み込むしぐさをする」、「嘔吐する」などで、決して意識を失うことはなく、反応性は保たれたままだった。症状は時間の経過とともに徐々に悪化し、2~4時間だった持続時間はいつしか3日間に延び、年に1~2回だった発作回数は月に1~2回にまで増えた。
発作がおさまった後は決まって1~2日間おとなしくなり、まるで何事もなかったかのように回復した。獣医師の診察を受けたものの明確な診断を下すことはできず、オピオイド(鎮痛薬)、ジアゼパム、アセプロマジン、NSAIDsは全て無効だった。
改善のヒントが示されたのは、2度目に受診した時です。この時の犬は発作の真っ最中で、まるで痛みを感じているかのようにひっきりなしに吠え続け、光や音に対する過敏症が見られたと言います。頭を低くしていること以外異常は見られず、神経障害性疼痛か頭痛の可能性が考慮されました。
まず「神経障害性疼痛」の可能性を検討するため、解熱鎮痛薬が4週間投与されましたが、改善は見られませんでした。次に「片頭痛」の可能性を検討するため、片頭痛やてんかんに用いられる「トピラマート」を投与した所、ようやく症状が顕著に改善したそうです。投薬を開始してからは発作の持続時間が1~3時間に短縮され、執拗な無駄吠えや光や音に対する過敏症もなくなり、散歩への欲求と食欲も回復したとのこと。ただしトピラマートの投与が遅れた時は症状の回復も遅れ、6~7時間持続したそうです。
その後、発作が生じたときにだけ投薬するという治療計画に変更して18ヶ月間様子を見たところ、発作の頻度は月に2回から2~3ヶ月に1回にまで顕著に減少しました。投薬治療前は安楽死すら考えられていましたが、投薬後の生活の質は飼い主にとって十分許容できるものに改善したと言います。 症例報告を行った調査チームは、さまざまな検査にもかかわらず症状の原因がわからず、抗てんかん薬や鎮痛薬が効かないような場合は、「片頭痛」の可能性を考慮してみるようアドバイスしています。犬の片頭痛に関する診断基準が存在しないため、診察する際は暫定的に人間用のガイドラインを転用するのが手っ取り早いとも。 Migraine-like Episodic Pain Behavior in a Dog: Can Dogs Suffer from Migraines?
Plessas, I.N., Volk, H.A. and Kenny, P.J. (2013), J Vet Intern Med, 27: 1034?1040. doi:10.1111/jvim.12167
解説
1988年に「国際頭痛学会」が提唱したガイドラインによると、「前兆のない片頭痛」の診断基準は以下のようになっています。
日本頭痛学会
片頭痛の診断基準
- AB~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある
- B未治療もしくは治療が無効の場合、頭痛が4~72 時間持続する
- C頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
●片側性
●拍動性(痛みにリズムがある)
●中等度~重度の頭痛
●日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける - D頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
●悪心または嘔吐(あるいはその両方)
●光過敏および音過敏 - Eその他の疾患によらない