詳細
調査を行ったのは、イギリス・ハートプリー大学とエクセター大学からなる共同チーム。見知らぬ環境で不安の兆候を示すことが飼い主によって報告されている犬28頭を対象とし、抗ストレス効果があるとして英国内で市販されている「Pet Remedy®」が漂っている部屋と、犬に対して何の効果もない揮発性物質だけが漂っている部屋における行動の変化を観察しました。犬および商品に関する基本情報は以下です。
こうした結果を受け調査チームは、「Pet Remedy®」には少なくとも見知らぬ環境に置かれた犬のストレスを軽減する効果は無いようだとの結論に至りました。 The Effect of Pet Remedy on the Behaviour of the Domestic Dog (Canis familiaris)
Sienna Taylor, Joah Madden, Animals 2016, 6(11), 64; doi:10.3390/ani6110064
調査対象犬
- 平均年齢4.64歳(12ヶ月齢~11歳)
- オス犬13頭(去勢済10頭)
- メス犬15頭(避妊済12頭)
- ミックス犬5頭
- 小型から大型の純血種23頭
- 保護施設出身16頭
- Pet Remedy®
- イギリスの「Unex Designs Ltd.」が発売している商品で、有効成分はユーラシア原産のオミナエシ科カノコソウ属「バレリアン」(valerian)。この成分は、抑制性の神経伝達物質GABAの生成を促したり、分解を阻害することで抗ストレス効果を示すと推測されている。少なくともげっ歯類においてはGABAレセプターとバレレニン酸およびバレニノールとの親和性が確認されている。 Pet Remedy
二重盲検試験
- 偽薬回揮発性物質MMB(3-Methoxy-3-Methyl-1-Butanol)だけがディフューザーによって空気中に放散されている。
- レメディ回抗ストレス効果を有するとされるエッセンシャルオイル(バレリアン・ベチバー・バジル・セージ)を5.37%含んだ液体が、ディフューザーによって空気中に放散されている。
こうした結果を受け調査チームは、「Pet Remedy®」には少なくとも見知らぬ環境に置かれた犬のストレスを軽減する効果は無いようだとの結論に至りました。 The Effect of Pet Remedy on the Behaviour of the Domestic Dog (Canis familiaris)
Sienna Taylor, Joah Madden, Animals 2016, 6(11), 64; doi:10.3390/ani6110064
解説
「レメディ回」において唯一見られた特徴は「ため息をつく回数が減った」というものでした。人間における「ため息」はストレスや不満の現れと解釈されますが、この解釈を犬の世界に持ち込むのはやや早計なようです。ため息の多さをストレスの指標とする見方がある一方(→出典)、深い呼吸の増加をリラックスモードの指標とする見方があるため(→出典)、「ため息が減った→犬のストレスが軽減した」という単純な図式で解釈することには疑問が残ります。そもそも「レメディ回で減少傾向が見られた」というだけで、統計的に有意とまではいかなかったため、ストレスの増減とは無関係とみなした方が妥当なのかもしれません。
今回の調査を支援したのは、「Pet Remedy®」を販売している「Unex Designs Ltd.」自身でした。お金を払ってわざわざ商品の有効性を否定するという結果になってしまいましたが、お金を払って商品の広告記事を書かせたり、御用学者から好意的な意見を引き出そうとする会社よりはいくらか好感が持てます。ちなみに「レメディ」(※Pet Remedy®とは別物)と呼ばれる成分を用いる民間療法「ホメオパシー」に関しては、日本獣医師会が明確に反対の姿勢を示しています。詳しくは以下のページをご参照ください。
今回の調査を支援したのは、「Pet Remedy®」を販売している「Unex Designs Ltd.」自身でした。お金を払ってわざわざ商品の有効性を否定するという結果になってしまいましたが、お金を払って商品の広告記事を書かせたり、御用学者から好意的な意見を引き出そうとする会社よりはいくらか好感が持てます。ちなみに「レメディ」(※Pet Remedy®とは別物)と呼ばれる成分を用いる民間療法「ホメオパシー」に関しては、日本獣医師会が明確に反対の姿勢を示しています。詳しくは以下のページをご参照ください。