詳細
調査を行ったのは、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学の心理学部教授で、数多くの著作でも知られるスタンレー・コレン氏。「Doggy De-Stress Day」に参加していた同氏は、小柄な女性がやってきて、氏が同伴していた子犬を抱きしめる現場に遭遇しました。「Doggy De-Stress Day」とは、中間テストや期末テストの期間中、セラピードックや行儀の良い犬をキャンパスに連れてきて生徒たちのストレスの解消を目指すイベントのことです。子犬が見せたちょっとした不安のサインを読み取ったコレン氏は、「無理に抱きしめると犬のストレスになりますよ」と女性をたしなめます。すると発達心理学を専攻しているというその女性は「母親が子供を抱っこするとオキシトシンレベルが上がる」いう事例を引き合いに出し、自分の行動は決して間違っていないと反論してきたといいます。
この出来事をきっかけとしてコレン氏は、「抱きしめる」という行為と犬の不安との関係を自ら調査しようと思い立ちました。やり方は非常に簡易的で、インターネット上に溢れている飼い主と犬の写真のうち、「飼い主が犬を抱きしめている」という条件を満たすものを選抜し、犬が「カーミングシグナル」と呼ばれる不安の兆候を見せているかどうかを確認するというものです。ランダムで250枚の写真を調べたところ、以下のような内訳になったとのこと。
「幸せそうな表情を浮かべている人間に抱かれた犬は、おしなべて不幸そうな顔をしている」という事実を突き止めたコレン氏は、無理に犬を抱きしめようとするのは得策ではないと警告しています。また、いつでもどこでも犬を抱きしめてキスすることを推奨する「Smooch Your Pooch」という子供向けの本に対し、AVSAB(アメリカ動物行動学獣医協会)が「この本を買わないように」という緊急のお達しを出したのは慧眼であるとも。
The Data Says "Don't Hug the Dog!"
解説
コレン氏が当調査で「カーミングシグナル」として着目した項目は以下です。
一方、体に対する圧力が、逆に犬の不安解消に役立つと主張している人もいます。「動物感覚」(日本放送出版協会)などの著作で有名なテンプル・グランディン女史がその代表です。彼女は「Anxiety Wrap®」(→公式)というベスト型の商品を自ら開発し、雷や留守番といった状況において使用すれば犬の不安を軽減できると主張しています。
ひょっとすると、「抱きしめる」という行動には二面性があるのかもしれません。つまり、他の動物に拘束されると不安が生じるけれども、非生物や完全に安心しきった相手に拘束されると逆に安心を抱くということです。自ら抱っこをせがむ小型犬は、上記「二面性」という観点から考えるとうまく説明できます。
いずれにしても、抱きしめられることに慣れていない犬を無理矢理抱っこすることは、咬傷事故に繋がる危険性をはらんでいますので気をつけた方がよさそうです。2015年にチェコ共和国で行われた調査では、「犬の上にかがみ込む」、「犬の口元に顔を近づける」、「犬の目を近くからじっと見つめる」が咬傷事故の危険因子とされていますので、特に子供と犬が接しているときは事前の十分な教育が必要になると思われます。
カーミングシグナル
- 顔をそらす
- 瞼を半分閉じる
- クジラの目(目尻や目頭に白目部分が見える)
- 耳が垂れ下がる
- 唇を舐める
- あくびをする
- 前足を上げる
一方、体に対する圧力が、逆に犬の不安解消に役立つと主張している人もいます。「動物感覚」(日本放送出版協会)などの著作で有名なテンプル・グランディン女史がその代表です。彼女は「Anxiety Wrap®」(→公式)というベスト型の商品を自ら開発し、雷や留守番といった状況において使用すれば犬の不安を軽減できると主張しています。
ひょっとすると、「抱きしめる」という行動には二面性があるのかもしれません。つまり、他の動物に拘束されると不安が生じるけれども、非生物や完全に安心しきった相手に拘束されると逆に安心を抱くということです。自ら抱っこをせがむ小型犬は、上記「二面性」という観点から考えるとうまく説明できます。
いずれにしても、抱きしめられることに慣れていない犬を無理矢理抱っこすることは、咬傷事故に繋がる危険性をはらんでいますので気をつけた方がよさそうです。2015年にチェコ共和国で行われた調査では、「犬の上にかがみ込む」、「犬の口元に顔を近づける」、「犬の目を近くからじっと見つめる」が咬傷事故の危険因子とされていますので、特に子供と犬が接しているときは事前の十分な教育が必要になると思われます。