トップ2016年・犬ニュース一覧5月の犬ニュース5月13日

家庭内によくある代表的な中毒性食品

 イタリア・ミラノ大学の調査チームは誤食事故に関する過去の報告を総括し、家庭内によくある代表的な中毒性食品をリストアップしました(2016.5.13/イタリア)。

詳細

 人間にとっては安全だけれども、犬や猫が食べてしまうと毒性を発揮する食品はたくさんあります。以下は、主として飼い主の知識不足が原因で発生しやすい中毒事故の原因食品です。過去の症例の中には、危険性を把握していなかったためにテーブルの上に放置していたというもののほか、積極的に犬に食べさせてしまったというひどいものまで含まれています。
ネギ属
  • 原因物質硫黄を含む有機化合物が酸化された「スルホキシド」。ニンニクが含む「アリシン」や、玉ネギが含む「アリルプロピルジスルファイド」など。
  • 含有食品玉ネギ、長ネギ、ニンニク、らっきょう、ニラ、アサツキ、ワケギ、リーキ(セイヨウネギ)、ノビル
  • 危険量猫=5g/kg | 犬=15~30g/kg
  • 症状摂取から1~数日後、嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振、沈うつ、貧血、粘膜蒼白、呼吸促迫、心拍数増大、黄疸尿の変色(赤~茶)
  • 備考酸化的溶血によってメトヘモグロビン血症と赤血球内のハインツ小体形成が起こる。毒性は加熱調理によって減じない。遺伝的に秋田犬柴犬珍島犬のリスクが高い。
エタノール
  • 原因物質エタノール(エチルアルコール)
  • 含有食品アルコール飲料全般、ペンキ、ニス、香水、マウスウオッシュ、温度計の一部、不凍液、消毒液、エチレングリコール中毒に対する治療として静注された医薬品、腐ったリンゴ、スピノサスモモ、パン生地、ピザ生地
  • 危険量血中濃度:子犬=0.6mg/ml | 成犬1~4mg/ml
  • 症状摂取して1時間後、運動失調、倦怠感、沈うつ、低体温、代謝性アシドーシス、昏睡、呼吸不全、生地を誤食した場合は腹部膨満
  • 備考エタノールは血液-脳関門を通過して中枢神経を障害する。生地にアルコールは含まれていないが、イースト菌(Saccharomyces cerevisiae)が、炭水化物を分解してエタノールと二酸化炭素を生成する。
ブドウ
  • 原因物質不明
  • 含有食品サルタナ、スグリ、干しぶどう(レーズン)、フルーツケーキ、ミンスパイ、麦芽パン、スティック状の栄養食品、スコーン、マール(果実の皮と絞りかすから作るブランデー)
  • 危険量2.8mg/kg~
  • 症状24時間以内の嘔吐、下痢、食欲不振、倦怠感、腹痛に続き、乏尿、無尿、多飲、タンパク尿、クレアチニンと尿素の血清濃度上昇
  • 備考腎不全を引き起こすメカニズムは不明。危険量に関しては個体差が大きく、レーズンを1kg平らげても平気だったケースがある一方、体重8.2kgの犬がブドウを4~5粒食べただけ腎不全に陥ったというケースもある。
マカデミアナッツ
  • 原因物質青酸グリコシド
  • 含有食品ケーキ、クッキー、キャンディなど
  • 危険量0.7g/kg~
  • 症状摂取後12時間で後肢の脱力、沈うつ、嘔吐、運動失調、振戦、高体温、腹痛、筋硬直、粘膜蒼白化
  • 備考死亡例はなく、適切な処置を施せば24~48時間で回復。
メチルキサンチン誘導体
  • 原因物質カフェイン、テオブロミン、テオフィリン
  • 含有食品カフェインはコーヒー、紅茶、ガラナ、栄養ドリンクなど。テオブロミンはカカオ(チョコレート)など。テオフィリンは紅茶、喘息薬など。
  • 危険量20mg/kg~
  • 症状頻脈、呼吸促迫、過剰興奮、振戦、痙攣、心室性期外収縮
  • 備考カフェインは直接的に中枢神経系を刺激する。テオブロミンはホスホジエステラーゼを阻害し、サイクリックAMPとカテコールアミンを増加させる。
キシリトール
  • 原因物質キシリトール
  • 含有食品ガム、キャンディ、クッキー、歯磨き粉など
  • 危険量0.03g/kg~
  • 症状摂取後30分くらいで低血糖、肝不全、昏睡
  • 備考肝不全は0.5g/kg以上の摂取で発生すると推測されているが、詳細なメカニズムは不明。
犬にとって危険な毒物 Household Food Items Toxic to Dogs and Cats

解説

 2016年5月6日、長野県伊那市の小学校で、校庭に生えていたノビルを採取して食べたところ、一部にスイセンが交ざっており、児童10人と40代の女性教員の計11人が食中毒に陥るという出来事がありました。ここから得られる教訓は2つあります。1つは「スイセンを食べてはいけない」ということ。もう1つは「ノビルが自生している」ということです。
 日本国内に自生しているネギ属には「ギョウジャニンニク」、「ニラ」、「ノビル」、「ヤマラッキョウ」、「アサツキ」といったものがあります。居住地域によっては、散歩中の道端に生えていても不思議ではありませんので、各植物の外見くらいは覚えておいたほうが無難だと思われます。
ギョウジャニンニク
ギョウジャニンニク(花弁なし) 画像出典:Allium victorialis, Hokkaido Japan ギョウジャニンニク(花弁あり) 画像出典:Allium victorialis
ニラ
ニラ(花弁なし) 画像出典:Chinese Chives ニラ(花弁あり) 画像出典:Allium tuberosum
ノビル
ノビル(花弁なし) 画像出典:Allium macrostemon ノビル(花弁あり) 画像出典:Allium macrostemon
ヤマラッキョウ
ヤマラッキョウ(花弁あり) 画像出典:Allium thunbergii
アサツキ
アサツキ(花弁なし) 画像出典:Asatuki アサツキ(花弁あり) 画像出典:Allium schoenoprasum