トップ2016年・犬ニュース一覧3月の犬ニュース3月11日

断尾の失敗による痛々しい症例が報告される

 美容目的で犬のしっぽ切り落とす「断尾」の失敗により、子犬に対して多大な苦痛を与えた症例が報告されました(2016.3.11/ナイジェリア)。

詳細

 報告を行ったのは、ナイジェリア・イバダン大学獣医学科のチーム。アフリカのナイジェリアでは近年、西洋から様々な種類の犬が持ち込まれるに伴い、規定の犬種標準に合わせる形での断尾が多く行われるようになりました。しっぽを切り落とす方法にはメスを用いる外科的な方法のほか、子羊に対して行うのと同じように、しっぽに結紮バンドを巻きつけて先端を壊死させるという方法がありますが、今回の報告で取り上げられたのは、この結紮法が失敗してしっぽの先が大きく膨らんでしまった子犬の症例です。オーナーは7頭の子犬に生後9日になったタイミングで結紮バンドを巻き付けましたが、なぜかこの子犬だけは上手くしっぽが落ちず、徐々に腫脹を始めたと言います。病院に連れて来られたときにはすでに先端がパンパンで、子犬は絶え間なく泣き叫ぶなど明らかな苦痛の徴候を示すようになっていました。その後、子犬は緊急の外科手術によって一命は取り留めたものの、しっぽを根元から失う結果となりました。 結束法の失敗により、しっぽの先端が大きく膨らんでしまった子犬  報告を行った研究チームは今回のケースを受け、不必要な苦痛を招く美容目的の断尾という行為自体を、アフリカ全体で法的に禁止するべきだと警鐘を鳴らしています。出費を抑えようとする拝金主義のブリーダーは、医師に頼る代わりに自分で断尾を行おうとするため、今回のような失敗例が増えて子犬たちの福祉が著しく損なわれる危険性があるとも。 Cosmetic tail docking: an overview of abuse and report of an interesting case

解説

 日本においても断尾が横行していますが、驚くほど多くの人がこの行為の存在自体を知らないというのが現状です。犬の理想的な姿を定めた犬種標準で「断尾する」とか「一般的に断尾される」と規定されている犬種の数は50近くに及びます。2015年度のJKCの人気犬種TOP30に入っている犬のうち、一般的に断尾される「プードル」、「ミニチュアシュナウザー」、「ヨークシャーテリア」、「ウェルシュコーギーペンブローク」、「ジャックラッセルテリア」、「ミニチュアピンシャー」の登録頭数を合計すると約11万2千に達します(→出典)。全頭が断尾の対象となるわけではないものの、30位以下の犬種も含めると、単純計算で年間10万本近くのしっぽが何らかの方法で切り落とされていると推計されます。さて、こうした犬たちのブリーダーは一体どのようにしっぽを切り落としているのでしょうか?犬の福祉をかえりみず、劣悪な環境下で犬の繁殖を繰り返すようなパピーミル業者が、わざわざお金を払って獣医師に断尾を頼むでしょうか?出費を削るためにブリーダーが自らの手で行った断尾の失敗によって、苦痛を感じている子犬たちを全て表沙汰にしたとき、その総数は一体どのくらいに達するのでしょうか?
しっぽは犬にとって重要なコミュニケーションツールの一つ  これまでブリーダーや一部の獣医師が主張してきた「子犬は痛みを感じない」とか「断尾はしっぽの怪我を予防する」といった言い分は、科学的な検証によりほとんど論破されています。断尾という不要で残酷な虐待行為が、1日でも早く日本国内から駆逐されることを望むばかりです。またこの行為の存在を知らなかった方は、以下のページを読んでその是非をじっくりと考え、なるべく多くのお友達にも知らせて頂ければと思います。 犬の断尾