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犬は他の犬が苦境に立たされている時に同情心を見せる

 困っている仲間に同情して救いの手を差し伸べてあげる「いたわりの精神」が、犬にも備わっているという可能性が示されました(2016.6.8/オーストリア)。

詳細

 過去に行われた調査により、ゾウ、チンパンジー、ラットといった動物では、仲間の苦境を察して助けてあげるという同情心に根ざした行動が確認されてきました。犬においても、人間に対する同情心に関する実験がいくつか行われてきましたが、不思議なことに犬同士の間で同情心が存在するかどうかに関する調査はあまり行われていませんでした。 泥にはまった子象を助けてあげる親象  今回の調査を行ったのは、オーストリア・ウィーン大学を中心としたチーム。犬に対して「見知らぬ犬のクンクン鳴き」、「親しい犬のクンクン鳴き」、「機械で合成したクンクン鳴き」という、犬の不安を掻き立てるような3種類の音声刺激を聞かせた後、リアクションにどのような変化が生じるかを観察しました。調査の対象となったのは、最低1年間生活を共にしている16組の犬たち。コンビの内の一方を被験犬とし、以下に述べるような手順で、唾液中のコルチゾールレベルおよび音刺激を受けた後のリアクションがモニタリングされました。
実験手順
  • 飼い主と共に実験室に入る
  • 30分かけて環境に慣れる
  • 1回目の唾液採取
  • 45秒間音声刺激を聞かせる
  • 実験室に相棒犬が入室する
  • 自発的な行動を30秒間観察する
  • 2回目の唾液採取
統一された実験環境内で、様々な種類の「クンクン鳴き」を犬に聴かせる  一度の実験で犬に聴かせる音声刺激は3種類の内の1つだけで、実験と実験の間隔は最低2週間空けられました。例えば「見知らぬ犬のクンクン鳴き→2週間→親しい犬のクンクン鳴き→2週間→機械で合成したクンクン鳴き」といった感じです。刺激を提示する順番はランダム化されたため、犬によっては「機械で合成したクンクン鳴き→2週間→親しい犬のクンクン鳴き→2週間→見知らぬ犬のクンクン鳴き」といった全く逆の順番で刺激を受け取るということもありえます。
 統一された実験環境下で、被験犬が相棒犬に再会した時の反応を観察したところ、以下のような事実が判明したといいます。なお「警戒行動」とは、「スピーカーを長いこと見つめる・フェンスの近くに長くとどまる」といった行動を指し、「いたわり行動」とは「相棒の近くに長くとどまる・舐めたり触ったりする」といった行動を指します。
音声刺激と犬の反応
  • 合成音よりも犬のクンクン鳴きを聞いた時の方が強い警戒行動といたわり行動を示した
  • 合成音よりも親しい犬のクンクン鳴きを聞いた時の方が強いいたわり行動を示した
  • 見知らぬ犬のクンクン鳴きよりも親しい犬のクンクン鳴きを聞いた時の方が強いいたわり行動を示した。ただしこの傾向は「1番最初のテストで親しい犬のクンクン鳴きを聞く」という条件においてのみ観察された
  • 見知らぬ犬のクンクン鳴きよりも親しい犬のクンクン鳴きを聞いた時の方が唾液中のコルチゾールレベルが高かった
 こうした結果から研究チームは、犬は同種の動物が苦境に立たされている時、その状況を理解して共感してあげる能力を有しており、さらにその能力は相手の犬とどの程度親しいかによって影響を受けるとの可能性を示しました。 犬には同情心がある? Investigating Empathy-Like Responding to Conspecifics' Distress in Pet Dogs 貯水槽に落ちた相棒のため1週間見張りを続けた犬は、ワシントン州知事から表彰された