詳細
過去に行われた調査により、ゾウ、チンパンジー、ラットといった動物では、仲間の苦境を察して助けてあげるという同情心に根ざした行動が確認されてきました。犬においても、人間に対する同情心に関する実験がいくつか行われてきましたが、不思議なことに犬同士の間で同情心が存在するかどうかに関する調査はあまり行われていませんでした。
今回の調査を行ったのは、オーストリア・ウィーン大学を中心としたチーム。犬に対して「見知らぬ犬のクンクン鳴き」、「親しい犬のクンクン鳴き」、「機械で合成したクンクン鳴き」という、犬の不安を掻き立てるような3種類の音声刺激を聞かせた後、リアクションにどのような変化が生じるかを観察しました。調査の対象となったのは、最低1年間生活を共にしている16組の犬たち。コンビの内の一方を被験犬とし、以下に述べるような手順で、唾液中のコルチゾールレベルおよび音刺激を受けた後のリアクションがモニタリングされました。
実験手順
- 飼い主と共に実験室に入る
- 30分かけて環境に慣れる
- 1回目の唾液採取
- 45秒間音声刺激を聞かせる
- 実験室に相棒犬が入室する
- 自発的な行動を30秒間観察する
- 2回目の唾液採取
音声刺激と犬の反応
- 合成音よりも犬のクンクン鳴きを聞いた時の方が強い警戒行動といたわり行動を示した
- 合成音よりも親しい犬のクンクン鳴きを聞いた時の方が強いいたわり行動を示した
- 見知らぬ犬のクンクン鳴きよりも親しい犬のクンクン鳴きを聞いた時の方が強いいたわり行動を示した。ただしこの傾向は「1番最初のテストで親しい犬のクンクン鳴きを聞く」という条件においてのみ観察された
- 見知らぬ犬のクンクン鳴きよりも親しい犬のクンクン鳴きを聞いた時の方が唾液中のコルチゾールレベルが高かった