詳細
2歳になるジャーマンシェパードミックス(メス・避妊手術済)に関する報告を行ったのはアメリカ・ノースカロライナ州立大学の獣医科学チーム。飼い主によると、倦怠感や食欲不振といった全身症状が入浴後24時間以内に現れ始め、それに続発する形で背中、胸部側面、臀部に広がる有痛の皮膚病変が出現したといいます。
入浴は、薬用では無い市販のシャンプーを用いた自宅入浴で、7ヶ月前に購入した古いシャンプーの残りと、最近買った同じブランドの新しいシャンプーを合わせて使用したとのこと。洗浄は手で軽く皮膚をこする程度で、シャンプー前後におけるブラッシングは行わなかったそうです。
検査のため、挫創膿疱と新旧2つのシャンプーボトルをラボに送ったところ、皮膚の病変部と古いボトルから同じ系統の緑膿菌が検出され、薬剤に対する感受性も一致していたという結果が返ってきました。様々な所見から考慮し、下された診断名は「グルーミング後せつ症」。治療としてはシプロフロキサシン(29mg/kg)の1日1回経口投与と、クロルヘキシジン3%シャンプーを用いた週一の薬浴が採用され、8週間で完全に治癒したそうです。
研究チームは、他の感染源としてブラシ、浴槽、水道の蛇口、汚染水、土壌といった可能性がある点は否定できないものの、恐らく古いシャンプーボトルの中で繁殖した緑膿菌が犬の皮膚上で繁殖し、広範囲に渡って炎症を引き起こしたものと推定しました。シャンプーの衛生管理法としては、「あまりにも古いものは捨てる」、「常に密閉されていることを確認する」、「希釈したシャンプーを長時間放置しない」などを挙げています。 Molecular confirmation of shampoo as the putative source of Pseudomonas aeruginosa-induced postgrooming furunculosis in a dog
検査のため、挫創膿疱と新旧2つのシャンプーボトルをラボに送ったところ、皮膚の病変部と古いボトルから同じ系統の緑膿菌が検出され、薬剤に対する感受性も一致していたという結果が返ってきました。様々な所見から考慮し、下された診断名は「グルーミング後せつ症」。治療としてはシプロフロキサシン(29mg/kg)の1日1回経口投与と、クロルヘキシジン3%シャンプーを用いた週一の薬浴が採用され、8週間で完全に治癒したそうです。
研究チームは、他の感染源としてブラシ、浴槽、水道の蛇口、汚染水、土壌といった可能性がある点は否定できないものの、恐らく古いシャンプーボトルの中で繁殖した緑膿菌が犬の皮膚上で繁殖し、広範囲に渡って炎症を引き起こしたものと推定しました。シャンプーの衛生管理法としては、「あまりにも古いものは捨てる」、「常に密閉されていることを確認する」、「希釈したシャンプーを長時間放置しない」などを挙げています。 Molecular confirmation of shampoo as the putative source of Pseudomonas aeruginosa-induced postgrooming furunculosis in a dog
解説
緑膿菌とは、環境中に広く分布しているシュードモナス属の一種です。病原性は弱く、仮に感染したとしても、宿主の免疫力が正常であれば何ら問題はありません。しかし宿主の免疫力が低下し、菌の増殖力に打ち勝てなくなってしまうと、様々な症状を招いて「日和見(ひよりみ)感染症」を引き起こしてしまいます。今回報告されたジャーマンシェパードミックスの症例も、犬の免疫力が通常よりも低下していたのでしょう。免疫力低下の一般的な原因としては、若齢や老齢、基礎疾患、糖質コルチコイドや免疫抑制剤の投与、ストレスなどが挙げられます。
緑膿菌が引き起こす問題としては、上記「日和見感染症」のほか「多剤耐性獲得」があります。これは、ある特定の抗菌剤に対して抵抗力を獲得してしまう現象のことで、中には消毒液の中で生息し続ける系統もありますので厄介です。今回報告された症例では、長期間放置されたシャンプーの中で緑膿菌がじわじわと増え続けていたのだと推測されます。 長時間水が停滞しやすいプールや温泉といった施設でよく発生する「温泉毛嚢炎」患者を対象とした調査では、感染リスクを高める要因が「バクテリアの濃度」、「暴露されていた時間」、「皮膚の水分過剰」、「外傷」などであるとしています。このデータを参考にすると、入浴に伴って発生する犬の「グルーミング後せつ症」を予防するためには、以下のような点に注意する必要があると思われます。
緑膿菌が引き起こす問題としては、上記「日和見感染症」のほか「多剤耐性獲得」があります。これは、ある特定の抗菌剤に対して抵抗力を獲得してしまう現象のことで、中には消毒液の中で生息し続ける系統もありますので厄介です。今回報告された症例では、長期間放置されたシャンプーの中で緑膿菌がじわじわと増え続けていたのだと推測されます。 長時間水が停滞しやすいプールや温泉といった施設でよく発生する「温泉毛嚢炎」患者を対象とした調査では、感染リスクを高める要因が「バクテリアの濃度」、「暴露されていた時間」、「皮膚の水分過剰」、「外傷」などであるとしています。このデータを参考にすると、入浴に伴って発生する犬の「グルーミング後せつ症」を予防するためには、以下のような点に注意する必要があると思われます。
せつ症予防法
- あまりにも古いシャンプーは捨てる
- シャンプー容器が密閉されていることを確認する
- 希釈したシャンプーを長時間放置しない
- 被毛はすぐに乾かす
- 入浴前に擦り傷の有無をよく確認する
- 犬の免疫力を落とさない