詳細
報告を行ったのは「USARIEM」(アメリカ陸軍環境医学研究所)と呼ばれる軍付属の研究機関。体の中にこもった熱を十分に発散できず、体調不良に陥ってしまう「熱中症」は、軍用犬にとって敵や地雷と同じくらい危険な存在になり得ます。例えばイラクとアフガニスタンに派遣された際に命を落とした軍用犬のうち、およそ12%は熱中症が原因だったといいます。また5歳未満の若い軍用犬が任務から脱落する理由の中で、2番目に多かったのは「熱中症」だったとも。
調査チームは、テキサス州サンアントニオにある空軍基地で行われている軍用犬の訓練現場を調査し、一体何が熱中症の危険性を高めているのかを検証しました。13人のハンドラと5人の獣医師に協力してもらい、アンケート調査やフォーカスグループメソッド(数人があるテーマに沿って討議する方式)を用いつつ調査を進めたところ、以下のような項目がリスクファクターとして浮上してきたと言います。数字は全体の中における回答者の割合です(複数回答あり)。
調査チームは、医療設備が十分では無い戦場においては、熱中症に陥る危険性が訓練時の比ではないため、ハンドラは犬の体調を守りつつ、最大限のパフォーマンスを引き出せるよう努力する必要があるとしています。 Perceived Factors Leading to Overheating in Military Working Dogs During Initial Training
熱中症の危険因子
- 過剰な活動性=75%
- 長い被毛=75%
- 黒っぽい被毛=70%
- 捜索犬=70%
- 引っ張り癖=65%
- 気質=63%
- 不適切な体調=55%
- 不慣れ=55%
調査チームは、医療設備が十分では無い戦場においては、熱中症に陥る危険性が訓練時の比ではないため、ハンドラは犬の体調を守りつつ、最大限のパフォーマンスを引き出せるよう努力する必要があるとしています。 Perceived Factors Leading to Overheating in Military Working Dogs During Initial Training
解説
熱中症の危険因子として挙げられた項目は、私たちの日常生活にも役立ってくれそうです。特に日差しが強くなる夏場においては重要となるでしょう。
熱中症の原因と予防
2016年4月、エクアドルで発生した大地震の被災者を見つけるため、災害救助犬の「デイコー」が派遣されました。しかし暑い中で働きすぎたため、熱中症に起因する心臓発作で命を落とすという悲しい結末を迎えています(→出典)。デイコーの尊い命から得られる教訓は、歩いてる最中に犬が「舌を出して苦しそうに息をしている」とか「立ち止まったまま動こうとしない」といった徴候を見せた場合は、無理に散歩を続行しないということです。