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犬に対する抗てんかん薬の総括的なレビュー

 抗てんかん薬の効き目と副作用に関する総括的なレビューが行われ、犬に対して最も安全と思われる薬剤の種類が明らかになりました(2016.7.11/イギリスなど)。

詳細

 報告を行ったのは、ロンドン大学やアイオワ州立大学が中心となった共同研究チーム。人医学で用いられている抗てんかん薬を獣医学領域に持ち込む際、ヨーロッパではEMA、北米ではFDAといった権威機関の承認を受ける必要があります。しかし承認を得るための投薬試験は、時として犬のサンプル数が少なく、市場に出回ってから思わぬ副作用が明らかとなることが少なくありません。そこで調査チームは、市販された後に報告された抗てんかん薬に関する副作用事例を集め、犬に対して最も安全で、なおかつ効果が高いと考えられる薬剤が何であるかを検証しました。
 対象となったのは、医学的文献に関する巨大データベース「Pub Med」、「CAB」、「Google Scholar」から集められた合計90の調査報告。12種類の薬の効き目や副作用に関するデータを検証したところ、ほとんどの報告書は以下に述べるような何らかの欠陥を抱えていたと言います。
抗てんかん薬調査の欠陥
  • サンプル数が少ない
  • 長期追跡していない
  • 対照群を適切に設けていない
  • 盲検ではない
  • ランダム化が不十分
  • 参加と除外基準が曖昧
 そんな中でも最も安全性が高いと考えられたのは「レベチラセタム」で、それに「イメピトイン」、「フェノバルビタール」、「臭化カリウム」が続いたと言います。上記4つ以外の薬剤に関してはエビデンス(医学的根拠)が弱く、安全とも危険とも言えない状態とのこと。一方、最も効き目が高いと考えられるのは「フェノバルビタール」だったそうです。 Antiepileptic drugs' tolerability and safety - a systematic review and meta-analysis of adverse effects in dogs

解説

 今回行われた包括レビューでは、副作用が2種類に分類されました。「タイプ1」の副作用はすべて軽いもので、投薬の中止とともに症状も消えたと言います。一方「タイプ2」の副作用は、頻度は低いものの症状は比較的重く、最悪のケースでは死亡例もあったと言います。
抗てんかん薬の副作用
  • タイプ1薬理学的副作用。薬剤の投与量に依存しており、予測が可能。
  • タイプ2特異的副作用。恐らく薬の代謝に関わる肝臓の個体差が原因で発生する。投与量に依存せず予測不可能。
 てんかん持ちの犬に投薬治療を施す際は、以下のような図式に則って「発作フリー」の状態を目指します。 てんかんに対する投薬治療計画の概要  ある特定の薬が効かなかったときは、他の薬剤に切り替えていく必要がありますが、その際は安全性と有効性を慎重に天秤にかけなければなりません。特に、市場に出回ってから日が浅い薬剤に関しては、「タイプ2」の副作用がすべて出尽くしているとは言い切れません。医薬品メーカーすら予期していなかった症状を引き起こすことがありますので、事前の十分な吟味が必要となります。なお、今回の調査で挙がってきた抗てんかん薬12種は以下です。最初の4つ以外は、エビデンス不足で十分な安全性が確認できませんでした。
代表的な抗てんかん薬
  • フェノバルビタール(phenobarbital)
  • レベチラセタム(levetiracetam)
  • イメピトイン(imepitoin)
  • 臭化カリウム(potassium bromide)
  • ゾニサミド(zonisamide)
  • プリミドン(primidone)
  • フェルバメート(felbamate)
  • ガバペンチン(gabapentin)
  • プレガバリン(pregabalin)
  • バルプロ酸(valproate)
  • トピラマート(topiramate)
  • フェニトイン(phenytoin)
犬のてんかん