トップ2016年・犬ニュース一覧1月の犬ニュース1月27日

母犬の養育行動が子犬の性格形成に影響

 生まれてから3週間、母犬と子犬との交流を観察したところ、母犬による養育行動が子犬の後の性格に影響を及ぼすという可能性が確認されました(2016.1.27/スウェーデン)。

詳細

 調査を行ったのは、スウェーデン・リンシェーピング大学と防衛大学の共同チーム。母犬による養育行動が子犬の性格にどのような影響を及ぼすかを調査するため、2011~2013年の間、22頭のジャーマンシェパードから生まれた子犬合計94頭(メス=52/オス=42)を、生まれてから3週間に渡って撮影しました。「接触しながら座る」、「授乳する」、「舐める」といった母犬の典型的な養育行動を観察したところ、子犬の数が少なければ(1~5)養育行動が増え、子犬の数が多ければ(6~10)養育行動が減るという傾向が認められたと言います。子犬たちは8週齢になるまで母犬と共に暮らした後、それぞれの預かり家庭に振り分けられました。
 その後子犬たちは、生後15~20ヶ月齢になったタイミングで再び集められ、「SAF」と呼ばれる軍用犬を選別するためのテスト受けました。すると、母犬からの養育行動をたくさん受けた子犬では「身体的交流」、「社会的交流」、「攻撃性」のポイントが高くなるという傾向が見出されたと言います。
 こうした結果から研究チームは、ラットなどでも確認されている通り、生後間もない時期における母親の養育行動が子供の性格に長期的な影響を及ぼすようだとの結論に至りました。また母犬の影響以外では、「生まれた季節」が性格形成に関係している可能性があるとも。 Levels of maternal care in dogs affect adult offspring temperament 生後3週間における母犬の養育行動が子犬の性格形成に影響を及ぼすことが分かった

解説

 これまで犬の性格形成に決定的に重要なのは、生後4~13週に相当する「社会化期」であるとされてきました。今回の調査では、この社会化期が始まる以前の「授乳期」もまた、犬の性格に何らかの影響を及ぼしている可能性が示されたことになります。子犬が生まれてからの生育環境が、いかに重要であるかを再確認できるデータと言えるでしょう。
 一方、生まれた季節と性格の関連性に関しては、人間においても何らかの因果関係があるようだという報告がされています。2001年、Chotaiらは生まれた時期と人格との間に何らかの関連性があるかどうかを調査するため、2,130人の被験者に「TCI」という性格テストを受けてもらいました。その結果、年齢、性別と人格との間には非常に大きな関連性があることが明らかになったといいます。2月から4月の間に生まれた女性は新奇探索傾向が著しく高く、また男性では「我慢強さ/固執傾向」が高い値を示したとのこと。人格は先天的、後天的要因によってさまざまな影響を受けるが、生まれた季節もその一つであろうとしています。
 性格形成に「養育行動」と「生まれた季節」の両方が関わっているという点においては、人間と犬は非常によく似た動物と言えるかもしれません。 子犬の社会化期