詳細
報告を行ったのは埼玉県上尾市にあるフジタ動物病院。2007年2月~2012年6月の間に来院した犬379頭から得られた合計609の破折歯を元に、2013年の「動物臨床医学」内で統計データを公開しました。簡潔にまとめると以下のようになります。
初期症状
歯の破折は、犬が痛みの兆候をはっきり示してくれないため見過ごされているケースも多々あるといいます。定期的な健康診断は、こうした潜在的な破折をいち早く発見するためにも重要であるとのこと。飼い主が報告する犬の変化としては、以下のようなものがあります。
- 歯磨きを嫌がるようになった
- 片方の歯でしかものを噛まなくなった
- 口を触られるのを嫌がるようになった
- 目の下が腫れてきた(外歯瘻)
露髄
露髄(ろずい)とは歯の内部に含まれている「歯髄」と呼ばれる部分が露出してしまった状態のことで、76.2%(463歯/609歯)の確率で見られたといいます。ここには血管のほか、神経も含まれているため、刺激がダイレクトで伝わり、大変な不快感を引き起こします。また歯周病菌に直接さらされていることから、根尖周囲病巣、内歯瘻、外歯瘻、歯髄炎や歯髄壊死を招きやすいとのこと。
破折場所
犬の破折症例のうち、上顎第4前臼歯が66.2%という圧倒的シェアを占めています。物をかじる時にここの歯が最も用いられることと関係しているのでしょう。なお、ケージをガジガジ噛んでしまう「ケージバイター」では16歯中14歯が、そして永久歯が生えていない子犬の乳歯破折では6歯中6歯が犬歯だったと言います。
- 上顎第4前臼歯=66.2%(露髄率85%)
- 上顎犬歯=7.5%(露髄率53%)
- 下顎第1後臼歯=5.1%(露髄率32%)
- 下顎犬歯=4.9%(露髄率53%)
好発年齢
来院時の年齢は3ヶ月齢から14歳2ヶ月齢と幅があり、平均5歳7ヶ月齢だったといいます。平均年齢が比較的若いのは、若い犬の方がよく物を噛むことと関連していると考えられます。
好発犬種
犬種別の来院数を分母とし、特定犬種の破折症例数を分子としたとき、破折を起こしやすい犬種の傾向が見えてきました。トップにきているボーダーコリーに関しては、フライングディスクとの関連が示唆されています。
- ボーダーコリー=32.8%
- ウェルシュコーギー=22.1%
- ボストンテリア=17.6%
- ラブラドールレトリバー=15.6%
- ジャックラッセルテリア=15.6%
- ジャーマンシェパード=15.4%
- 柴犬=14.5%
- イタリアングレーハウンド=12.5%
破折の原因
破折の原因は、9割以上が硬いものを咬んだことによるものだったと言います。具体的にはひづめ、ガム(デンタルガムを含む)、おもちゃ、骨、ケージ、石などです。「デンタルケア」を謳っている商品が、逆に破折を招いていると言う逆説的な現実が浮き彫りとなりました。
動物臨床医学22(3)84-87, 2013