詳細
調査を行ったのは、アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)のチーム。闘犬場から保護された犬たちを対象とし、体についた傷の数と攻撃性との間に何らかの関連性があるかどうかを統計的に検証しました。
対象となったのは、2012年から2015年の期間、アメリカ南東部~中西部の6つの州に暮らす13人から保護した合計252頭(オス116頭+メス136頭)のピットブルタイプの犬たち。「傷跡チャート」と呼ばれる特殊な調査票を用いて体中にある傷の場所と数をカウントすると同時に、事前に決められた行動テストによって犬の攻撃性を評価しました。具体的な手順は以下です。
Katherine A. Miller, Rachel Touroo et al. Animals 2016, 6(11), 72; doi:10.3390/ani6110072
攻撃性テストの手順
- 実寸大に近いぬいぐるみと接触させる
- 本物の犬とフェンス越しに対面させる
- リードとマズルを付けた状態で接近させる
- 攻撃性が見られなかったらリードを付けた状態で1~3分交流させる
攻撃性の評価基準
- 攻撃的でない怖がっている、服従的、友好的、中立的
- いきり立っている犬をじっと見つめて興奮した態度を示す、しっぽを挙げたり耳を前方に傾けるなど自信に満ちた行動をとる、飛びかかったり顎や前足を背中に乗せたりマウンティングする
- 攻撃的である怖がっていない状況で唸る、つっかかる、噛み付こうとする
- その他の攻撃性怖がっている状況や、テスト犬の挑発的な態度に対して攻撃的になる
Katherine A. Miller, Rachel Touroo et al. Animals 2016, 6(11), 72; doi:10.3390/ani6110072
解説
アメリカ国内では非合法の闘犬が横行しており、ASPCAの反動物虐待チームと法医科学チームが現場に乗り込んで犬たちを保護するという状況が頻繁に起こります。保護された犬たちは通常里子に出されますが、闘犬場出身という来歴がネックとなり、すべての犬に里親が見つかるわけではありません。シェルターに収容スペースがない様な場合は、やむなく安楽死処分が決行されることもしばしばです。
こうした状況において難しいのは、どの犬を安楽死の対象とするかを判断することです。行動特性を評価するためのスタンダードが存在していないため、犬の体についた傷の数や大きさを判断基準にすることがありましたが、この方法は「傷がたくさんついている犬は攻撃的に違いない」という漠然とした思い込みに根ざしたものであり、検証の余地を多く含んでいました。
今回の調査では「10ヶ所以上の傷があるとオス犬では82%、メス犬では60%の確率で他の犬に攻撃的」という結果になりましたので、単なる思い込みから一歩前進した形になります。しかし全く傷がない犬のうち28%が攻撃的で、40ヶ所以上の傷を持つ犬のうち22%が攻撃的ではなかったと言いますので、傷の数だけで犬の内面を評価してしまうのはアンフェアでしょう。
今回の調査では「10ヶ所以上の傷があるとオス犬では82%、メス犬では60%の確率で他の犬に攻撃的」という結果になりましたので、単なる思い込みから一歩前進した形になります。しかし全く傷がない犬のうち28%が攻撃的で、40ヶ所以上の傷を持つ犬のうち22%が攻撃的ではなかったと言いますので、傷の数だけで犬の内面を評価してしまうのはアンフェアでしょう。