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闘犬場出身の犬は傷の数が多いほど犬への攻撃性が強い

 闘犬場から保護された犬たちを対象とした調査により、特定の場所に10個以上の傷がある犬は、他の犬への攻撃性が高いことが明らかになりました(2016.12.5/アメリカ)。

詳細

 調査を行ったのは、アメリカ動物虐待防止協会(ASPCA)のチーム。闘犬場から保護された犬たちを対象とし、体についた傷の数と攻撃性との間に何らかの関連性があるかどうかを統計的に検証しました。 闘犬の傷はマズル、頭部の側後方、前足に集中する  対象となったのは、2012年から2015年の期間、アメリカ南東部~中西部の6つの州に暮らす13人から保護した合計252頭(オス116頭+メス136頭)のピットブルタイプの犬たち。「傷跡チャート」と呼ばれる特殊な調査票を用いて体中にある傷の場所と数をカウントすると同時に、事前に決められた行動テストによって犬の攻撃性を評価しました。具体的な手順は以下です。
攻撃性テストの手順
  • 実寸大に近いぬいぐるみと接触させる
  • 本物の犬とフェンス越しに対面させる
  • リードとマズルを付けた状態で接近させる
  • 攻撃性が見られなかったらリードを付けた状態で1~3分交流させる
攻撃性の評価基準
  • 攻撃的でない怖がっている、服従的、友好的、中立的
  • いきり立っている犬をじっと見つめて興奮した態度を示す、しっぽを挙げたり耳を前方に傾けるなど自信に満ちた行動をとる、飛びかかったり顎や前足を背中に乗せたりマウンティングする
  • 攻撃的である怖がっていない状況で唸る、つっかかる、噛み付こうとする
  • その他の攻撃性怖がっている状況や、テスト犬の挑発的な態度に対して攻撃的になる
 調査の結果、71%(180頭)の犬は最低1つの傷を抱えており、数の中央値は36.5個(1~256個)だったといいます。また傷の数と攻撃性の割合を調べた所、以下のような傾向が浮かび上がってきました。 犬全体で見ると、傷の数が多ければ多いほど攻撃的な犬の割合が増える オス犬とメス犬を比較すると、傷の数と攻撃的な犬の割合はオス犬の方で顕著に連動する  こうしたデータから調査チームは、闘犬場から保護された犬が、体にある3つのゾーン(前足・頭・マズル)に10ヶ所以上の傷を抱えている場合、他の犬に対して高い攻撃性を示す確率が高いとの結論に至りました。そしてこの確率は、メス犬(60%)よりもオス犬(82%)において高まるとも。ただし全く傷がない犬のうち28%が攻撃的で、40ヶ所以上の傷を持つ犬のうち22%が攻撃的ではなかったことから、傷の数だけから単純に犬の行動特性を即断してはいけないとも警告しています。
Relationship Between Scarring and Dog Aggression in Pit Bull-Type Dogs Involved in Organized Dogfighting
Katherine A. Miller, Rachel Touroo et al. Animals 2016, 6(11), 72; doi:10.3390/ani6110072

解説

 アメリカ国内では非合法の闘犬が横行しており、ASPCAの反動物虐待チームと法医科学チームが現場に乗り込んで犬たちを保護するという状況が頻繁に起こります。保護された犬たちは通常里子に出されますが、闘犬場出身という来歴がネックとなり、すべての犬に里親が見つかるわけではありません。シェルターに収容スペースがない様な場合は、やむなく安楽死処分が決行されることもしばしばです。 2016年4月、イリノイ州で60頭の闘犬がASPCAによって保護された  こうした状況において難しいのは、どの犬を安楽死の対象とするかを判断することです。行動特性を評価するためのスタンダードが存在していないため、犬の体についた傷の数や大きさを判断基準にすることがありましたが、この方法は「傷がたくさんついている犬は攻撃的に違いない」という漠然とした思い込みに根ざしたものであり、検証の余地を多く含んでいました。
 今回の調査では「10ヶ所以上の傷があるとオス犬では82%、メス犬では60%の確率で他の犬に攻撃的」という結果になりましたので、単なる思い込みから一歩前進した形になります。しかし全く傷がない犬のうち28%が攻撃的で、40ヶ所以上の傷を持つ犬のうち22%が攻撃的ではなかったと言いますので、傷の数だけで犬の内面を評価してしまうのはアンフェアでしょう。