詳細
司会進行を含めた4名の識者から、高齢者とペット動物が今後どのように関わっていくべきかというテーマについて様々な意見が出されましたが、全参加者に共通する論旨を一文でまとめると「とにかく高齢者にペットを飼(買)わせたい」となります。その他の詳細は以下です。
ペットが高齢者にもたらすメリット
- 医療費の削減 オーストラリアやドイツで行われた試算により、ペットを飼育することで医療費がおよそ10%削減されるという可能性が示されている。これを日本に置き換えると、およそ4兆円に相当する。70歳以上の人々にかかる医療費が20兆円を超えているため、高齢者にペットを飼(買)わせて病院にかかる機会を減らす事は急務である。
- 健康増進作用 調査によると、犬を散歩させている男性は0.44歳、女性は2.7歳ほど健康寿命が延びる可能性が示されている。健康を維持したまま長生きする「健康寿命」を伸ばすという国策の実現には、ペットの存在が大きな役割を担ってくれるだろう。
- 精神の安定化 誰とも話す機会がないまま1日を過ごしてしまうことが多い老人にとって、たとえ一方的でも話しかける相手がいるという状況は重要である。また「自分の存在が必要とされている」という実感を抱く事は、精神衛生上も良いはず。
問題と解決策
- 体力の衰え 高齢者の体力が落ちてペットの世話ができなくなった場合は、動物看護士が家を訪問してペットの世話や里親探しを受け持つという安全ネットを、「NPO法人高齢者のペット飼育支援獣医師ネットワーク」(VESENA)が中心となって構築していきたい(談:VESENA代表→公式)。
- 施設への入居 健康上の理由で施設への入居を余儀なくされた場合に備え、動物とともに入居でき、さらに入居者の死後もペットの面倒を保障してくれるような施設を増加させていきたい(談:医療法人社団慶成会会長→公式)。
- 世話の仕方がわからない 適切な世話の仕方がわからない高齢者に備え、ドラッグストアにハブステーションとしての機能をもたせ、「病気の相談」、「預かり施設との仲介」、「保険の相談」、「ペット用品の提供」といった多面的窓口にしていきたい(談:日本ヘルスケア協会事務総長→公式)。
犬の飼育頭数は年々右肩下がりになっており、「癒し」を目的としてペット飼おうとする人の数は頭打ちに近づいている。これからは癒やしのためでなく「健康のためにペットを飼う」という新しいスタイルを高齢者に提示し、需要を掘り起こしていく必要があるだろう。そうすれば国策である「健康寿命延伸」に寄与できると同時に、新たなビジネスチャンスとなって雇用の創出や経済の活性化にも繋がるはず。
解説
「インターペッツ」の今年のテーマが「人とペットの豊かな暮らし」であり、フォーラムのテーマが「ペットとの共生」となっているにもかかわらず、「いかに人間が幸せになるか?」が一方的に語られるだけで、「いかにペットを幸せにするか?」という側面が全くといっていいほど言及されなかったのは気になるところです。例えば以下の様な論点は、ほとんど~全く触れられませんでした。これが90分という限られた時間によるものなのか、それとも別の理由によるものなのかはわかりません。
スルーされた課題
- 飼い主が突然病気になったり死亡したら?
- 人獣共通感染症の危険性は?
- ペットの介護が必要になったら?
- ペットを迎える経路は?
- 悪徳繁殖業者を間接的に支えないようにするには?
- 高齢者による飼育放棄問題は?