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犬のアトピー性皮膚炎の発症メカニズムがかなり解明される

 原因遺伝子が特定されたことで話題のアトピー性皮膚炎ですが、人間と犬とでは発症メカニズムがかなり似通っているようです(2016.4.29/日本・アメリカ)。

詳細

 2016年4月25日、日本の理化学研究所が医学専門誌「The Journal of Clinical Investigation」に発表した論文により、アトピー性皮膚炎の原因遺伝子、および発症メカニズムがかなり明らかになりました。概略は以下です。
アトピー性皮膚炎の発症メカニズム(時系列)
  • JAK1遺伝子の変異
  • JAK1(※下記ボックス)の異常
  • サイトカインの異常
  • 角質をはがす酵素「プロテアーゼ」の変化
  • 角質による保湿効果の低下
  • アトピー性皮膚炎!
JAK1とは?
 「JAK」とは「ヤーヌスキナーゼ」(Janus kinase)の略称。タンパク質のチロシン残基を特異的にリン酸化する酵素「チロシンキナーゼ」の一種で、役割は細胞の分化、増殖、接着のほか、免疫反応のシグナル伝達など。
 つまり諸悪の根源は「JAK1遺伝子」だと言うことです。研究チームが、アトピー性皮膚炎を自然発症するマウスに対して「JAK1」の働きを阻害する薬剤を投与したり、皮膚に保湿効果を高めるワセリンを塗布したところ、皮膚炎の発症を遅延・予防できたとのこと。また人間のアトピー患者6人を調べたところ、4人が上記した遺伝子異常を起こしていたといいます。 Hyperactivation of JAK1 tyrosine kinase induces stepwise, progressive pruritic dermatitis
 上記した調査では、発症メカニズムのうち「JAK1」に働きかける投薬や、「角質による保湿効果の低下」に働きかけるワセリン塗布が、有効な治療法として挙げられました。一方、2016年2月に「Journal of Investigative Dermatology」内で報告された論文では、特定の皮膚常在菌をターゲットとした治療が有効であるとの可能性が示されています。
 調査を行ったのは、ペンシルベニア大学などを中心としたチーム。アトピー性皮膚炎を発症した犬15頭と健常な皮膚を持った犬17頭を対象として比較調査を行ったところ、皮膚炎を発症中の患犬では皮膚の細菌叢内で「ブドウ球菌」(Staphyloccocus)の異常増殖が見られたと言います。その後、4~6週間の抗生物質投与期間を終えて再び細菌叢を調べたところ、健常な犬のそれとほぼ同じ状態に回復していたとも。こうしたデータから研究チームは、皮膚のバリア機能が損なわれることで細菌叢のバランスが崩れ(dyabiosisという)、特にブドウ球菌が優勢になることで皮膚炎が発症しているという可能性を突き止めました。また皮膚炎を改善するには、ブドウ球菌をターゲットととした治療法が有効であろうとも予測しています。
 日本の理研が行った調査と、ペンシルバニア大学が行った調査を統合すると、アトピー性皮膚炎の発症メカニズムは以下のようになると考えられます。
アトピー性皮膚炎の発症メカニズム
  • JAK1遺伝子の変異
  • JAK1の異常
  • サイトカインの異常
  • 角質をはがす酵素「プロテアーゼ」の変化
  • 角質による保湿効果が低下
  • 皮膚細菌叢の変化(←追加)
  • ブドウ球菌の異常増殖(←追加)
  • アトピー性皮膚炎!
 人間と犬とでは共有している病気の数が非常に多く、人医学の知識が獣医学に、獣医学の知識が人医学に応用されるということがよくあります。双方の分野から知識を集約すれば、相乗効果によって最も効果的な予防法や治療法が少しずつ明らかになっていくことでしょう。 犬のアトピー性皮膚炎 Longitudinal Evaluation of the Skin Microbiome and Association with Microenvironment and Treatment in Canine Atopic Dermatitis