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テレパシーの実験~犬と飼い主は離れた場所でも交流できるか?

 テレパシー (Telepathy) とは、五感以外の何かを通じて物事を認識する「超感覚的知覚」 (ESP) の一種で、特別な道具を使うことなく遠くにいる人や動物と通信する能力のことをいいます。このセクションでは、テレパシーを科学的に実験した過去の事例と、自宅でできる簡単なテレパシー実験方法をご紹介します。

自宅でできるテレパシー実験

 テレパシーを科学的に理解しようとすると、「量子もつれ」や「形態形成場」、「シェルドレイクの仮説」など小難しい用語が出てきてにわかには抜け出せない迷路にはまってしまいます。そこで単純に「うちのワンちゃんと私は、テレパシーで通じ合えるのかなぁ?」と考えている方がいるなら、以下のような簡単な実験方法がありますので、個人的なテレパシー体験ができるかどうか、遊び半分でトライしてみてください。

一人で行うテレパシー実験

 ペットの様子を観察してくれる協力者がいなくても、近年では留守番カメラなるものが登場していますのでこれを利用してみましょう。
テレパシー実験に必要なもの
  • 留守番カメラ(Webカメラ)
  • 定期アップロードソフト
  • 画像アップ用のディレクトリ
  • 外出先からディレクトリにアクセスする携帯端末など
 まずペットの姿が撮影できる位置にWebカメラをセッティングします。次に、カメラが捕らえた画像を定期的に撮影して特定ディレクトリにアップロードしてくれるソフトをインストールし(フリーソフトなどを利用⇒Vector)、10秒ごと、30秒ごと、1分ごとなど撮影間隔をセッティングします。次にプロバイダーから無料でもらえるHP用のディレクトリやレンタルサーバーなどに画像をアップロードするよう設定します。これで部屋の様子が定期的に指定ディレクトリに送られるという仕組みです。後はスマホやApple製品など、外出先でその指定ディレクトリ内の画像を閲覧できるような携帯端末を用意します。なお、セッティング等が面倒な方のために、同様のサービスを有料で提供しているところや、ペットの様子を遠隔モニターできる専用機器も販売されています。 リモカ  さて、世界中から集まったペットのテレパシー事例の検証からわかったのはペットは飼い主が”帰ろう”と強く意識した瞬間に反応を見せるということでした(⇒飼い主の帰宅を予知する犬参照)。この定説にのっとり、部屋の様子を外出先で見ながら「さあ帰ろう!」と強く念じ、実際に帰り支度を開始します。さて、おうちにいるワンちゃんは反応してくれるでしょうか?試してみてください。

複数人で行うテレパシー実験

 同居人がいて実験に協力してくれるようなら、留守番カメラなどの専用機器は必要なくなります。
複数人で行うテレパシー実験
  • 犬を観察する協力者協力者は、犬がそわそわしたり興奮したり、通常とは違う状態になった瞬間を時間で記録してもらいます。このとき、おやつの時間や散歩の時間、おもちゃで遊ぶ時間など、犬の精神状態を興奮させてしまうイベントがある場合は、それも合わせて記録したほうが、余計な”紛れ”がなくなるでしょう。
  • テレパシーの被験者テレパシーの被験者は、外出先から「帰ろう!」と思った瞬間の時刻を記録します。このとき上っ面(うわっつら)な「さあ帰ろうかな・・」という迷いを含んだ弱い思いではなく、本格的に帰宅する直前の「さあ!帰るぞ!」という決然たる強い思いが生じた瞬間を記録するようにします。念のため、帰宅を開始してから自宅に着くまでの交通手段なども覚えておきます。
  • 記録の照合外出先にいたテレパシー被験者の帰宅意識時間と、家で協力者と共にいた犬の反応時間を照合してみましょう。どうせやるなら1~2回ではなく、最低100回程度はデータを取りたいものです。パメラ・スマートさんと飼い犬ジェイティー(⇒飼い主の帰宅を予知する犬参照)のように、100回中85回という割合で反応することはないかもしれませんが、ひょっとしたら5回に1回くらいは反応を見せてくれるかもしれません。

テレパシー実験を成功させるコツ

 犬と飼い主のテレパシーの度合いは、その親密度に依存するというデータもあります。飼い犬との間にテレパシー体験を増やしたいなら、たくさんブラッシングしてたくさんなでて、たくさん散歩に連れて行き、犬と人間との間の不可分の絆ヒューマン・ケナイン・ボンド(Human Canine Bond)を強めることがもっとも大事です。

20世紀初頭のテレパシー実験

アメリカの小説家、アプトン・シンクレア(Upton Sinclair)  アメリカの小説家、アプトン・シンクレア(Upton Sinclair)が1930年に出版した著書「Mental Radio」の中で、二番目の妻メアリー・クレイグ・キンブル(Mary Craig Kimbrough)とともに行ったテレパシー実験の様子が記録されています。科学的に正当な方法で行ったものではないながらも、シンクレア夫人は夫が描いた290枚の絵のうち、何も見ない状態で65枚を正確に複写し、155枚を部分的に正確に複写、そして70枚が失敗という結果を残しています。
 また小説家、ハロルド・シャーマン(Harold Sherman)と冒険家であるヒューバート・ウィルキンス(Hubert Wilkins)の二人は、1937年10月から約5ヶ月半に渡って独自のテレパシー実験を行っています。 冒険家であるヒューバート・ウィルキンス(Hubert Wilkins) 実験内容は、ニューヨークにいるシャーマンと北極にいるウィルキンスが一日の終わりにその日起こった出来事を日記に書きとどめ、そのイメージや考えを相手に念じるというものです。いんちきの可能性を排除するため、シャーマンは自分の書いた日記をコロンビア大学心理学科教授のガードナー・マーフィー氏(Gardner Murphy)に送り、証人になってもらいました。1942年にまとめられたこれらの実験記録「Thoughts Through Space」(空間を越えた想念)によると、75%の確率で両者の日記内容が一致したといいます。シャーマンとウィルキンスは「人から人へ考えやイメージを送受信することが可能である」とし、また立会人を務めたコロンビア大学のマーフィー教授も、「いくつかの事例は単なる偶然で片付くが、偶然にしてはできすぎている例も見られる」とし、テレパシーの存在を暗に示唆しました。

ガンツフェルト実験

 1970年代初頭、夢とPSI(超能力)に関する研究を行っていたチャールズ・ホノートン(Charles Honorton)は、1930年代にゲシュタルト理論(人間の精神は部分や要素の集合ではなく、全体性や構造こそ重要視されるべきという理論)の研究に用いられていた実験方法に着想を得て、効果的に感覚を遮断する方法としてガンツフェルト法(Ganzfeld experiment)を編み出しました。

ガンツフェルト実験の内容

ガンツフェルト法  ガンツフェルト法とは、ピンポン玉を半分にカットしたような半球状のアイマスクをした上で赤い光を当て、ノイズの流れるイヤホンを用い、被験者の感覚を遮断した状態で行う実験方法です。
 この状態の被験者(受信者)は、隣の部屋で椅子に座ってリラックスしながら任意の絵を眺めている実験者(送信者)からの情報を受け取ろうと試み、頭に浮かんだものを大声で話します(イヤホンをしているため)。そしてその内容を第三者が記録した後、受信者は正解とダミーからなる4つの選択肢のうち、自分の見たものに一番近いものを選びます。

ガンツフェルト実験の結果

 上記方法で、数十回こうした実験を繰り返すと、なぜか確率論的に正常とされる値(この場合は25%)よりもほんのすこしだけよい成績が出るといわれています。1974年から1982年にかけて行われた42回の実験をまとめたホノートンのレポート(Parapsychological Association, 1982)によると、彼は「超能力(テレパシー)の存在を証明する十分な証拠となる」と結論付けています。

ワッカーマン氏の実験

 神経科学の専門誌「Neuroscience Letters」に、ジリ・ワッカーマン氏が行ったテレパシー研究に関する論文が掲載されました(Wackermann et al., 2003)。結論は脳波測定とfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を駆使して実験を行ったところ、二人の隔離された人間の間で脳活動が同期発生する可能性があるというものでした。

ワッカーマン氏の実験内容

 ワッカーマンの実験では、23歳から57歳までの一般市民男女38人(17組のペアと4人の個人)が採用されました。さらに17組のペアのうち10組は、夫婦・友人・親類など、互いに感情的に「関係がある」と感じる人たちが選ばれ、7組は「関係がない」と感じる他人同士が選ばれています。
実験時の状況
  • 音、光、電磁波など、人間が感覚で捕らえることのできる外部からの刺激を一切遮断した隣り合う2つの部屋に、ペアが1人ずつ別れて入る
  • ペアの1人は頭部に脳波計を取り付けた状態で、ビデオスクリーンに映される映像を、計72回見せられる
  • ペアのもう1人は隣接する部屋の中で同様に脳波計を取り付け、じっと待機する

ワッカーマン氏の実験結果

 ワッカーマン氏らは、脳波の測定記録を小さな時間単位(137ミリ秒)ごとに分割し、映像刺激を受けなかった被験者の脳波に起こる「揺らぎ」の発生頻度を分析したところ、映像を見ていた被験者の脳波に連動する形で、見ていなかった方の被験者の脳波も揺らぐという事実を確認しました。この実験結果から二人の隔離された人間の間で脳活動が同期発生する可能性があるという結論を導き出したと同時に、この現象は方法上の欠陥で生じたとは考えにくいものであり、この現象を説明できる生物物理学的メカニズムは現在のところ知られていないという新たな謎を生み出す形で終わっています。

ラディン氏の実験

 アメリカ・カリフォルニアのノエティックサイエンス研究所に所属するディーン・ラディン氏は、2004年にテレパシーに関する論文を「Journal of Alternative and Complementary Medicine」誌に発表ました。要点は何らかの、未知の情報的あるいはエネルギー的交換が、隔離された人々の間で存在するというものです。

ラディン氏の実験内容

 被験者として11組の成人カップルと、2組の母娘のカップルを採用し、指輪や時計などの個人的な所持品をカップル内で交換させ、「お互いがつながりを持っている」という感覚が強まるようにしました。その後カップルは外部からの感覚刺激を遮断された部屋に1人ずつ入り、頭部に脳波計を取り付けます。あらかじめ決めておいた「念じる側」の1人は、部屋にあるモニターに映し出される「受ける側」の映像をランダムな間隔で見せられるごとに、受け手の所持品を握り締めてその人のことを強く念じるように指示を出されます。

ラディン氏の実験結果

 上記手順で実験を行った結果、モニターの映像に合わせて現れる「念じる側」の脳波の揺れに呼応するかのように、「受ける側」の脳波にも揺れが観察されたといいます。また、「念じる側」の脳波の揺れが大きいときは、やはり「受ける側」の脳波の揺れも大きくなるという傾向も見いだされました。
 この実験結果を受けラディン氏は何らかの、未知の情報的あるいはエネルギー的交換が、隔離された人々の間で存在するという仮説に行き着いています。

シェルドレイク氏の実験

 1983年8月31日、イギリスのテレビ局テームズ・テレビによって、ルパート・シェルドレイク氏が公開実験を行いました。結果は直接的な接触が無くても、ある人や物に起きたことが他の人や物に伝播する可能性があるというものでした。

シェルドレイク氏の実験内容

 テレビを視聴できないような遠隔地に住む住人1000人を対象とし、だまし絵AとBに対する正解率をあらかじめ調べておきます(結果:A=3.9%とB=9.2%)。その後、これと同じだまし絵を、Aの方はテレビを通じて視聴者200万人に解答公開し、もう一方のBは解答は公開しないままにしました。テレビ放映後、テレビを見ていなかった遠隔地住人800人(全て前回とは別の人物)を対象にして、再びだまし絵2つに対する正解率を調べてみます。

シェルドレイク氏の実験結果

 上記方法で公開実験を行った結果、テレビ公開されなかっただまし絵Bの正解率は放映前9.2%に対し放映後10.0%と微増であったのに対し、テレビで解答を公開されただまし絵Aの方は放映前3.9%に対し放映後6.8%に急増したといいます。
 この結果を受けシェルドレイク氏は「公開されなかった問題では正解率は余り変化しなかったが、公開された問題は大幅に正解率が上昇した」という結論に至り、直接的な接触が無くても、ある人や物に起きたことが他の人や物に伝播するという自身の仮説の正しさを多くの人々に見せ付けました。

テレパシーは存在するか?

 過去に行われた様々な実験をご紹介してきましたが、いずれもテレパシーの存在を裏付けるような結果で終わっています。私たちがよく経験談として耳にするのは虫の知らせ(親戚のおばさんが死んだことを予感した)やシンクロニシティ(電話をかけようと思っていた相手から逆にかかってくるなど)といったものですが、「そこには何らかのテレパシーが関わっている」といわれるとそんな気もしてしまいます。
 さて、「テレパシーは非科学的で胡散臭い」という印象から、多くの科学者から忌避される傾向にあるようですが、以下では、テレパシーに対して科学的にアプローチしているいくつかの例をご紹介します。テレパシーに対して科学的なアプローチをすることで、新しい利器が生み出されたり、生物の新たな謎が解明される可能性もありますので、「非科学・・笑止!」とむやみに切り捨ててしまうのは少しもったいないかもしれません。

アメリカ・国防高等研究計画庁

 米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)では、「脳内における神経信号を分析する」という形でテレパシーにアプローチしているようです。『Silent Talk』(無言の会話)と呼ばれるこのプログラムには多額の予算が組まれており、目指すところは「発声による会話を使わずに、神経信号を分析することによって、戦場での人から人へのコミュニケーションを可能にすること」です。 米軍、「テレパシー」研究を本格化

ACSジャーナル・PHYSICAL CHEMISTRY B

 ミクロなレベルでは、「DNAの二重らせんが遠方から自分自身にマッチする分子を、何か化学的なシグナルやそういったものの助けなしに集めてきている」、という不思議な現象がACSジャーナルで発表されています。 DNA Double Helices Recognize Mutual Sequence Homology in a Protein Free Environment

Neurosky社の試み

 Neurosky社は、人間の脳波を読み取る特殊なヘッドギアを用いてゲームに応用している会社です。すでに様々な商品を開発していますが、脳波を読み取れるヘッドセットを取り付け、集中の度合いによって小型扇風機が回りボールが浮き上がる「MindFlex」は、タイム誌の歴代ヒットおもちゃトップ100にランキングしています。
脳波を利用する機器
 以下でご紹介するのは、人間の脳波を読み取ってボールを動かす「Mindflex」の動画です。 元動画は→こちら
 以下でご紹介するのは、アメリカのNeurosky社が開発を進めている脳波と連動したテレビゲームの動画です。 元動画は→こちら