レボリューション®とは?
「レボリューション®」とはセラメクチン(selamectin)を有効成分とする犬向けのフィラリア・ノミ・耳ダニ駆除予防製品。日本国内ではスポットオン(ピペット滴下式)が動物医薬品として認可されています。
セラメクチンの効果
レボリューション®の有効成分であるセラメクチンはノミに対して高い駆除効果をもつマクロライド系としてファイザー社が開発した殺虫剤。昆虫や内部寄生虫(線虫)の神経シナプスにあるグルタミン酸開閉型塩化物チャネル受容体に作用し、チャネルを開きっぱなしにすることで塩素イオンの持続的な流入を引き起こし、神経信号の伝達を妨害して麻痺を生じます。
ノミの成虫は吸血による摂取や毛包・皮脂腺に分布するセラメクチンとの接触で死に至ります。一方、フィラリア幼虫(L3~L4)は組織や血管内で、ミミヒゼンダニは耳道の組織内に溢れ出た滲出液でセラメクチンと接触し、最終的に死に至ります。
セラメクチンの危険性・副作用
セラメクチンは哺乳動物の神経細胞とも結合しますが、血液脳関門を通過することができないため中枢神経と接触して中毒症状を引き起こすことがなく、比較的安全な成分と考えられています。以下は犬を対象として行われた毒性試験の結果です(:Pfizer, 2000)。
ラットを対象とした調査では、母体内の胎子や生まれたばかりの新生子におけるNOAELが体重1kg当たり1日10mg、妊娠中の母体におけるNOAELが40mgと報告されています。一方、遺伝毒性や発がん性は確認されていません(:Zoetis)。 日本国内における副作用は、死亡例を含めたものが動物医薬品データベース内でいくつか報告されています。しかしどのケースも製品との因果関係があやふやだったり、使用法を遵守しないいわゆる「オフラベル」の使い方が原因になった可能性もあるため、本当に引き金になったのかどうかも不明です。オフラベルの一例を挙げると「用量を守らなかった」「産まれて間もない若齢の犬に使った」「使用期限の過ぎた古い商品を使った」「滴下部をなめてしまった」などです。
ちなみに先述したように、コリーを対象とした経皮的な安全性調査で副作用は確認されていないものの、公式の添付文書にはアベルメクチン系薬剤に感受性のある犬種においては、経口投与した場合に神経毒性を示す恐れがあるという記載があります。具体的にはコリー(ラフ+スムース)、オーストラリアンシェパード、シェットランドシープドッグ(シェルティ)などです。薬剤の誤飲誤食には注意しましょう。
セラメクチンの毒性
- 子犬への毒性生後6週齢の子犬たち(体重1.5kg程度)を8頭ずつからなる5つのグループに分け、1つにはプラセボ、残りの4つには推奨の1、3、5、10倍量(体重1kg当たり6~60mg)を28日おきに合計7回滴下投与して経過観察を行ったが、どのグループにおいてもテスト期間中に副作用や有害反応は見られなかった。
- 経口毒性12頭の成犬(オスとメス6頭ずつ)をランダムで2つのグループに分け、一方にはプラセボ(偽薬)、他方には推奨量(体重1kg当たり6mg)のセラメクチンを経口投与して30日間の経過観察を行ったが、副作用や有害反応は見られなかった。
- メス犬への毒性生殖可能なメス犬40頭を2つのグループに分け、一方にだけ推奨の3倍量(18mg/kg)を月に1回のペースで2回滴下投与しながら妊娠・出産させたが、試験中の副作用は見られず、妊娠率、出産胎子の体重、死産率、離乳までの生存率にも異常は見られなかった。出産数に違いは見られたが、セラメクチン投与グループの方が逆にやや多いという結果だった。
- オス犬への毒性生殖可能なオス犬20頭をランダムで2つのグループに分け、一方にだけ推奨の3倍量(18mg/kg)を2週に1回のペースで最低7回滴下投与したが、試験中の副作用や異常行動は見られず、メス犬との生殖能力や生まれてきた胎子の数および健康状態にも異常は見られなかった。
- フィラリア陽性犬への毒性フィラリアの成虫20匹(オスメス10匹ずつ)を人為的に寄生させた フィラリア陽性犬20頭(オスメス10頭ずつ)をランダムで2つのグループに分け、一方にだけ推奨の3倍量(18mg/kg)のセラメクチンを28日おきに合計3回滴下投与したが、副作用や有害反応は見られなかった。血中のミクロフィラリア数はセラメクチン投与群で漸減が確認されたが、成虫の数に関してはプラセボ群と差はなかった。
- コリーへの毒性MDR1遺伝子に変異を抱え、アベルメクチン系薬剤への感受性(200μg)が確認されている8頭のコリー犬(オス3頭)をランダムで2つのグループに分け、一方にだけ体重1kg当たり40mgのセラメクチンを滴下投与し、60日が経過したタイミングで今後は他方にだけ滴下するという入れ替え試験を行ったが、副作用や有害反応は見られなかった。また24頭のラフコリー(オス15頭)をランダムで6頭ずつからなる4つのグループに分け、1つにはプラセボ、残りには推奨1、3、5倍量のセラメクチンを28日おきに合計3回滴下投与したが、やはり副作用や有害反応は見られなかった。
ラットを対象とした調査では、母体内の胎子や生まれたばかりの新生子におけるNOAELが体重1kg当たり1日10mg、妊娠中の母体におけるNOAELが40mgと報告されています。一方、遺伝毒性や発がん性は確認されていません(:Zoetis)。 日本国内における副作用は、死亡例を含めたものが動物医薬品データベース内でいくつか報告されています。しかしどのケースも製品との因果関係があやふやだったり、使用法を遵守しないいわゆる「オフラベル」の使い方が原因になった可能性もあるため、本当に引き金になったのかどうかも不明です。オフラベルの一例を挙げると「用量を守らなかった」「産まれて間もない若齢の犬に使った」「使用期限の過ぎた古い商品を使った」「滴下部をなめてしまった」などです。
ちなみに先述したように、コリーを対象とした経皮的な安全性調査で副作用は確認されていないものの、公式の添付文書にはアベルメクチン系薬剤に感受性のある犬種においては、経口投与した場合に神経毒性を示す恐れがあるという記載があります。具体的にはコリー(ラフ+スムース)、オーストラリアンシェパード、シェットランドシープドッグ(シェルティ)などです。薬剤の誤飲誤食には注意しましょう。
レボリューション®12%
「レボリューション®12%」はセラメクチンを有効成分とする犬向けのノミ・フィラリア・耳ダニ駆除製品。1mL中の濃度が120mgであることから「12%」と称されています。犬の体が小さく体重が2.5kgに満たない場合は姉妹商品の「6%」が用いられます。濃度が高く過剰投与の危険性があるため、「12%」は犬専用になっており猫には使えませんのでご注意ください。スポットオン(滴下式)で、滴下後は皮脂を通じてすみやかに体表上に広がるほか、皮下に浸透して血流に入り全身に作用します。効果の持続期間は1ヶ月程度です。
【公式】レボリューション®12%
レボリューション®12%の使い方
- いつから使える?使用条件は6週齢以降とされています。体重制限は設けられていません。
- 使用頻度は?効果が1ヶ月であることから毎月の使用が望ましいとされています。
- 使用期間は?ノミは通年性で生息していますので1年中使用することが望ましいとされています。
- 料金は?動物病院、犬の体の大きさ(体重)、体重に連動したピペットのサイズ、使用頻度によって合計費用は変動しますが、病院で処方される1本の料金はSサイズなら1,500~1,900円程度、XLサイズなら3,000~3,500円程度です。なお通信販売自体は違法ではないものの、当製品は要指示薬ですので、獣医師による診察と処方箋がないと使用できません。
- 付け方は? 犬の肩甲骨間の被毛をかき分け、使い切りのピペットを皮膚に直接滴下して使います。
- 使用量は?
製品1mL中に含まれるセラメクチンの量は120mgです。有効最低量は、体重1kg当たり6mgとされており、犬の体重に合わせて以下のような使用基準が設けられています。なお体重が2.5kg未満の場合は犬猫兼用の「レボリューション®6%」を、40kg以上ある場合は一番大きい2mLピペット(XL)ともう1つ別の1サイズを体重に合わせて与えます。
✓2.5kg~5.0未満→0.25mL(S)
✓5.0kg~10kg未満→0.5mL(M)
✓10kg~20kg未満→1.0mL(L)
✓20kg~40kg未満→2.0mL(XL) - 使用上の注意は?使用する際の注意点は「用法(6週齢以降)や用量(体重1kg当たり6mg)を厳守すること」「獣医師の処方箋とともに与えること」「犬以外には使用しないこと」「使用期限が過ぎたものを使わない」などです。滴下前は皮膚と被毛がよく乾いていることを確認すること、滴下後は乾くまで触らないこと、およびお風呂やシャンプーは滴下から2時間以降にすることが指示されています。
レボリューション®12%の効果
以下は各種の寄生虫に対する「レボリューション®12%」(セラメクチン)の駆虫効果を検証した調査結果です。
ネコノミへの効果
オハイオ州立大学の調査チームは皮膚科を専門とする動物病院7つを受診した合計75頭の犬を対象とし、セラメクチンの殺ノミ効果を検証しました。初日を含め1ヶ月に1回のペースで合計3回投与(6mg/kg)し、介入前と後における生息ノミの幾何平均数を比較したところ、30日後における駆除率が90.8%、60日後が97.9%、90日後が99.1%だったといいます(:Kwochka, 2000)。
ファイザーの調査チームはイギリス、フランス、ドイツ、イタリアにある動物病院を受診した合計418頭の犬をランダムでグループ分けし、3分の2にだけセラメクチンを月に1回のペースで合計3回して殺ノミ効果を検証しました。投与から14→30→60→90日後のタイミングで体表から生きたノミを回収したところ、幾何平均で見た時の駆除率がそれぞれ92.5%→90.7%→98.1%→99.1%だったといいます(:Benchaoui, 2000)。
ネコノミへの即効性
ファイザーの調査チームはオスとメス54頭ずつ(5~41ヶ月齢 | 4.2~1.9kg)の犬たちをランダムで2つのグループに分け、未吸血のネコノミ100匹に暴露した上で一方にだけセラメクチン(6mg/kg)を滴下投与して殺ノミ効果を検証しました。その結果、投与から12時間後における駆除率が23.2%、24時間後におけるそれが83.7%、そして42時間以降は100%に達したといいます。
また600匹のネコノミに暴露した後、3→7→14→21→30日後のタイミングで体表から虫卵を回収したところ、30日間における幼虫の発育防止率は95%以上、そして成虫の再発生予防率は97.8~100%だったとのこと。さらに滴下投与を受けた犬の体からフケ、ノミの糞、被毛、皮膚片を1→7→14→21→30日目のタイミングで採取し、さまざまな発育ステージにあるネコノミと接触させたところ、卵の孵化防止率が96%超、幼虫駆除率が98%超、そして成虫の再発生予防率が99%超だったそうです(:Mctier, 2000)。
また600匹のネコノミに暴露した後、3→7→14→21→30日後のタイミングで体表から虫卵を回収したところ、30日間における幼虫の発育防止率は95%以上、そして成虫の再発生予防率は97.8~100%だったとのこと。さらに滴下投与を受けた犬の体からフケ、ノミの糞、被毛、皮膚片を1→7→14→21→30日目のタイミングで採取し、さまざまな発育ステージにあるネコノミと接触させたところ、卵の孵化防止率が96%超、幼虫駆除率が98%超、そして成虫の再発生予防率が99%超だったそうです(:Mctier, 2000)。
ノミ皮膚炎への効果
ファイザーの調査チームはノミアレルギー性皮膚炎と診断された22頭の犬を対象とし、セラメクチンが症状の軽減につながるかどうかを検証しました。犬たちをランダムで2つのグループに分け、100匹のネコノミに暴露した上で半分の11頭にだけセラメクチンを月に1回のペースで合計2回滴下投与し、2ヶ月に及ぶ経過観察を行ったところ、治療前に比べて28日目と61日目における症状が軽減していたといいます(:Dickin, 2003)。
フィラリアへの効果
ファイザーの調査チームはアメリカ国内のフィラリア症流行地域に暮らす合計397頭の犬をランダムでグループ分けし、298頭にはセラメクチン、99頭にはイベルメクチンを投与してフィラリアに対する予防効果を検証しました。月に1回のペースで投与を繰り返して半年に渡る観察を行ったところ、血中ミクロフィラリアと成虫抗原ベースで診断した時の陰性率に関し、180日目と300日目の両ポイントにおいて100%だったといいます(:Boy, 2000)。
ファイザーの調査チームは24頭の犬たちをランダムで3つのグループに分け、1つはプラセボ(偽薬)、1つはセラメクチン(6mg/kg)滴下、1つはセラメクチン滴下24時間後にお風呂という違いをもたせ、駆虫効果を検証しました。フィラリアのL3幼体50匹に人為的に暴露してから30日後に1回だけ滴下を行い、142日後のタイミングで生息数を確認したところ、未治療(プラセボ)犬の100%で平均7.2匹の寄生が確認されたのに対し、セラメクチン治療犬における寄生率は0だったといいます。またお風呂の有無によって効果が減じることはなかったとも。
さらに別の40頭をランダムで8頭ずつからなる5つのグループに分け、50匹のL3幼体に人為的に暴露した後1回だけ滴下投与し、水浴やシャンプーを2~6回行って140日後に感染数を確認したところ、未治療犬の100%で平均29匹の寄生が確認されたのに対し、セラメクチン治療犬においては入浴の種類や回数に関わらず0だったとのこと(:McTier, 2000)。
さらに別の40頭をランダムで8頭ずつからなる5つのグループに分け、50匹のL3幼体に人為的に暴露した後1回だけ滴下投与し、水浴やシャンプーを2~6回行って140日後に感染数を確認したところ、未治療犬の100%で平均29匹の寄生が確認されたのに対し、セラメクチン治療犬においては入浴の種類や回数に関わらず0だったとのこと(:McTier, 2000)。
耳ダニへの効果
ファイザーの調査チームはアメリカとヨーロッパにある40の動物病院を受診した犬を対象とし、セラメクチンの耳ダニ(ミミヒゼンダニ)に対する殺ダニ効果を検証しました。耳疥癬を自然発症した合計83頭の犬たちにセラメクチンを滴下投与して経過観察を行ったところ、投与から60日後における駆除率が90%だったといいます(:Six, 2000)。
ファイザーの調査チームはアメリカとイタリアに暮らす耳ダニの自然感染が確認された合計48頭の犬を対象とし、セラメクチンの殺ダニ効果を検証しました。犬たちをランダムで4つのグループに分け、1つにはセラメクチンを1回、1つにはセラメクチンを月1回ペースで2回、1つにはプラセボを1回、1つにはプラセボを月1回ペースで2回投与し、投与から30日後と60日後のタイミングで耳鏡検査を行って耳ダニの生息数をカウントしたところ、セラメクチンを投与されたグループにおいては回数に関わらずすべてのチェックポイントにおいて駆除率が100%だったといいます(:Shanks, 2000)。
回虫への効果
セラメクチンは回虫に対してもある程度の効果を有しています。ただ駆虫率が90%を切ってしまうため、添付文書には確実な効能として記載されていません。回虫駆除を目的として用いる場合はいわゆる「オフラベル」となります。
ファイザーの調査チームは92頭の犬たちに300個の感染幼虫を内包した虫卵を人為的に感染させ、ランダムで4つのグループに分けて1つはプラセボ(偽薬)を1回投与、1つはセラメクチン1回投与、1つはプラセボを月1回で2回投与、1つはセラメクチンを月1回で2回投与という違いをもたせ、滴下投与から14日後のタイミングで犬回虫(T.canis)もしくはイヌ小回虫(T.leonina)の成虫寄生数をカウントしました。その結果、1回投与グループにおける駆虫率が93.9~98.1%、2回投与グループにおけるそれが88.3~98.6%であることが判明したといいます。また16頭の犬を2つに分け、一方にだけセラメクチンを月1回で合計3回投与した別の調査では、駆虫率が100%だったとも。
さらに回虫に自然感染した合計101頭の犬を対象とした調査では、セラメクチンの1回滴下投与から30日後における虫卵減少率が94.6~99.9%、2回投与から30日後における成虫駆虫率が84.6~97.9%だったそうです。
フィールド調査ではドイツ国内にある15の動物病院で回虫への感染が確認されたペット犬98頭(オス53頭)を2:1の割合で2つのグループに分け、多い方(62頭)にだけセラメクチンを月1回のペースで滴下投与して2ヶ月間に渡る経過観察が行われました。その結果、滴下から2週間おきに行った便中虫卵数の減少率に関し89.5%~95.5%だったといいます(:McTier, 2000)。
ファイザーの調査チームは92頭の犬たちに300個の感染幼虫を内包した虫卵を人為的に感染させ、ランダムで4つのグループに分けて1つはプラセボ(偽薬)を1回投与、1つはセラメクチン1回投与、1つはプラセボを月1回で2回投与、1つはセラメクチンを月1回で2回投与という違いをもたせ、滴下投与から14日後のタイミングで犬回虫(T.canis)もしくはイヌ小回虫(T.leonina)の成虫寄生数をカウントしました。その結果、1回投与グループにおける駆虫率が93.9~98.1%、2回投与グループにおけるそれが88.3~98.6%であることが判明したといいます。また16頭の犬を2つに分け、一方にだけセラメクチンを月1回で合計3回投与した別の調査では、駆虫率が100%だったとも。
さらに回虫に自然感染した合計101頭の犬を対象とした調査では、セラメクチンの1回滴下投与から30日後における虫卵減少率が94.6~99.9%、2回投与から30日後における成虫駆虫率が84.6~97.9%だったそうです。
フィールド調査ではドイツ国内にある15の動物病院で回虫への感染が確認されたペット犬98頭(オス53頭)を2:1の割合で2つのグループに分け、多い方(62頭)にだけセラメクチンを月1回のペースで滴下投与して2ヶ月間に渡る経過観察が行われました。その結果、滴下から2週間おきに行った便中虫卵数の減少率に関し89.5%~95.5%だったといいます(:McTier, 2000)。